ニュース 2016.04.19. 10:00

“デビュー即降格”を乗り越えて…鯉の救世主候補・岡田明丈の今

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広島のドラ1右腕・岡田明丈

元は無名投手だった右腕


 今年ドラフト1位で広島に入団した岡田明丈が、注目を集めている。

 大商大時代の1年から3年までは控えで、まったく無名の投手だったが、4年時に大変身。春季リーグ戦で6勝0敗、防御率2.17。秋季リーグ戦でも6勝0敗、防御率1.00という好成績。一気にプロ注目の投手になった。

 最速153キロ右腕は、ドジャーズに移籍した前田健太の穴を埋める存在として期待を受け、開幕一軍入りを果たした。

 そもそも、野球を始めたのが中学1年の時で、しかも軟式。当時は三塁手で、打った後に三塁方向に走ったことがあったほど、ルールもよくわかっていなかったというから驚きだ。

 そんな岡田が本格的に野球を始めたのが、大阪の大商大高から。投手に転向し、3年時には球速140キロをマーク。背番号10ながら、先発投手も任された。

 大阪桐蔭高などの強豪校がいたため甲子園出場の夢は叶わなかったが、当時から投手としての素質と技術は高かった。

 大学で大きく飛躍し、ドラフト1位の評価を受けた男に用意された背番号は「17」。巨人へFA移籍した大竹寛が付けていた番号で、2014年からは空き番だった。球団の期待の大きさが、ここからもうかがえる。

 そして、早くもデビュー登板のチャンスが巡ってくる。4月1日の巨人戦(マツダ)だった。


デビュー戦で好投も即降格!?


 いきなり初回、先頭の長野にライト前ヒットを許し、3番・坂本にはセンターオーバーの適時三塁打。先制される苦しい展開になったが、2回以降は落ち着きを取り戻し、6回まで1失点に抑え込んだ。

 3-1のリードで迎えた7回二死で降板。後続の投手が同点とされ、初勝利こそ逃すことになったが、ルーキーとしては合格点のピッチング。初登板は6回と2/3、自責点2で防御率2.70。今後に期待を抱かせる内容だった。

 だが、翌日に岡田は二軍降格を命じられた。何とも不可解だったが、そこには広島の投手事情があった。

 開幕からリリーフ陣の弱さが際立ち、3月31日の中日戦では5点のリードを逆転されて敗戦。翌1日の巨人戦でも延長戦で失点し、敗れている。

 リリーフ陣の立て直しが急務だった。そこで岡田の登録を抹消し、かつて守護神を務めたこともあるベテラン・永川勝浩投手を一軍へ昇格させたのだ。


いつかカープの救世主に


 いろいろな意味で“洗礼”を浴びたが、それでも岡田は与えられた仕事を黙々とこなす。

 4月8日のウエスタン・リーグ、オリックス戦に先発。6回を投げ、6安打で無失点に抑える好投を見せた。

 課題だった立ち上がりも、初回、2回と三者凡退。3回以降は、毎回ランナーを背負ったが、最速147キロのストレートに緩いカーブ、フォークを中心に打者の打ち気をそぐピッチングで打者を斬って行った。ここまでファームでは3試合の登板で0勝1敗も、防御率は2.37。安定した投球が光る。

 一軍で打ち込まれたわけでもないのに、チーム事情で二軍降格となった。しかし、腐ることなく、二軍でも結果を出し続けている。技術だけでなく、メンタル面の強さを持ち合わせた男。視察した緒方監督も、満足そうな表情を見せた。

 広島にとって、前田健太の抜けた穴は大きすぎる。それを埋めることはできないかもしれないが、チームには着実に新たな希望が芽吹いている。

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