コラム 2015.04.06. 11:10

中日ドラゴンズ 小笠原道大「41歳の代打の神様」

小笠原道大,

代打成功率10割。


 今季出場はすべて代打で4打席に立ち、3打数3安打1四球の2打点。5日、中日・小笠原道大が延長12回1死満塁から放ったサヨナラ安打でチームは5年ぶりの6連勝。谷繁兼任監督が就任して以来初の単独首位に浮上した。41歳5カ月でのサヨナラ打はセリーグでは史上4番目の年長記録。昨季はチームトップとなる76回の代打起用、7月には球団タイ記録となる代打6打数連続安打もマーク。中日移籍2年目にして「切り札ガッツ」が板に付いてきた。

 73年10月25日生まれのプロ19年目。もうすぐマイアミ・マーリンズの一員として開幕を迎えるイチローとは誕生日が3日違いの同い年だ。94年から00年までのパリーグ首位打者がイチロー、02年と03年の首位打者が日本ハム時代の小笠原。00年代を代表する2人のバットマンも今年10月でともに42歳になる。

 数年前、ジャイアンツ球場で年下の若手選手に混じり試合出場する、巨人時代の小笠原の姿を今でもよく覚えている。1軍では出番を失い、イースタンでも打率2割3分台と低迷する厳しすぎる現実。ピーク時は4億円超えの年俸は数千万円まで減額。通算2000本以上の安打を放った男が、観客のほとんどいない2軍戦でがむしゃらにバットを振っていた。それも東京ドームで行われる1軍の試合と変わらない表情で。

 凄い男だなと思った。だって引退してしまった方が楽に決まっている。もう十分、地位も名声も得たはずだ。社会人出身の無名のキャッチャーとしてプロ入りした選手が数々の打撃タイトルを獲得、セ・パ両リーグでMVPを受賞した野手は過去に小笠原ただひとりである。プロ野球選手としてこれ以上ないサクセスストーリー。「よくやった。もういいじゃないか」そんな雰囲気も当然あっただろう。事実、客席からは「ベテランがファームで若手選手の出場機会を奪うな」という趣旨の心ない野次も飛んでいた。それでも、諦めず愚直なまでに貫き通したフルスイング。

 中日移籍後、躍動する背番号36の姿を見る度に、あの頃のジャイアンツ球場であがいていたガッツの姿を思い出す。小綺麗な選手が増えた今の球界では珍しい野武士のような雰囲気。41歳の代打の神様。野球日本代表チームが侍ジャパンと名付けられようとも、恐らく野球ファンの間で「サムライ」と呼ばれる選手は小笠原道大が最後になるだろう。

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)
【中溝康隆・プロフィール】 1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。デザイナーとして活動する傍ら、2010年よりブログ『プロ野球死亡遊戯』(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/nakami/)を開始。累計5600万PVを記録し話題となる。現在、各媒体に野球コラム連載中のほか、スポーツ報知トークショー等のイベントにも出演。精力的にライター活動を続けている。2月13日より雑誌「ヤングアニマル」にて巨人2軍リポート「未来は僕等の手の中」連載開始。

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