コラム

かつては“打てる捕手”がめじろ押し! 捕手“冬の時代”が続く昨今

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第3回大会のWBCで正捕手を務めた巨人の阿部慎之助

古田、矢野、阿部……バットで魅せたセ・リーグの捕手


 今年3月に開催される「2017 WORLD BASEBALL CLASSIC」(WBC)。2大会ぶりに王者奪還を狙う侍ジャパンだが、多くの野球関係者が指摘するのが「正捕手不在」問題だ。日本球界では“捕手不足”が叫ばれて久しい。

 過去3回のWBCでは、里崎智也(当時ロッテ)、城島健司(当時米マリナーズ)、阿部慎之助(巨人)という絶対的な正捕手が扇の要を務めた。リードやキャッチング、スローイングといった捕手としての能力は当然ながら、やはり欲しいのは打力だ。いわゆる“打てる捕手”がいるかどうかでチームの総合力は大きく変わってくる。彼ら3人はいずれも“打てる捕手”の代名詞であった。

 昨年11月に行われたメキシコ代表、オランダ代表との強化試合では、嶋基宏(楽天)、大野奨太(日本ハム)、小林誠司(巨人)の3人が出場を果たしたが、過去の3人と比較すると打撃面はやはり迫力不足である。

 近年、梅野隆太郎(阪神)、中村悠平(ヤクルト)、会沢翼(広島)ら、打力にも期待できる捕手が一気に台頭したこともあるが、彼らも“伸び悩み”感は否めない。昨季は、森友哉(西武)が2年ぶりに捕手として試合に出場し、ある程度の成長を見せたほか、田村龍弘(ロッテ)は6月の月間MVPに選出されるなど、大きな飛躍を果たした。とはいえ、やはりまだまだ絶対的存在には程遠い。

 かつてのプロ野球には、それぞれの球団の顔となるような“打てる捕手”が多く存在した。現状と比較するため、2000年以降、規定打席に到達した捕手の平均打撃成績を見てみよう。

【セ・リーグ】規定打席到達捕手の平均打撃成績
2000年 打率.266(1318打数351安打)9.3本塁打 44.7打点
2001年 打率.284(1300打数369安打)12.3本塁打 54.3打点
2002年 打率.271(1312打数355安打)17本塁打 70.3打点
2003年 打率.306(942打数288安打) 18.5本塁打 77打点
2004年 打率.288(2168打数625安打)18.4本塁打 65打点
2005年 打率.266(1922打数512安打)16.8本塁打 67打点
2006年 打率.268(1333打数357安打)12本塁打 57.3打点
2007年 打率.271(1272打数345安打)13.7本塁打 59.3打点
2008年 打率.270(1221打数330安打)12.3本塁打 51打点
2009年 打率.270(822打数222安打)18.5本塁打 59.5打点
2010年 打率.293(1479打数433安打)27.7本塁打 82.7打点
2011年 打率.244(409打数100安打) 1本塁打 33打点
2012年 打率.290(853打数247安打)16本塁打 68打点
2013年 打率.296(422打数125安打)32本塁打 91打点
2014年 打率.248(459打数114安打)19本塁打 57打点
2015年 打率.231(442打数102安打) 2本塁打 33打点
2016年 打率.204(398打数81安打) 4本塁打 35打点

 一見して分かるのが、近年の打数の減少。というのも、そもそも規定打席に到達する捕手が減っているからだ。セ・リーグでは、2010年ころまでは平均的に3人ほどの捕手が規定打席に到達していた。2004年には、古田敦也(ヤクルト)、阿部、石原慶幸(広島)、矢野輝弘(阪神)、谷繁元信(中日)と、5人もの捕手が規定打席に到達している。

 ところが、2013年以降はいずれもひとりのみ。2013年の平均打撃成績が高いのは、該当者が阿部のみだったからである。それを除けば、2010年が平均成績のピーク。この年は城島(阪神)、相川亮二(当時ヤクルト)、阿部の3人が規定打席に達し、平均27.7本塁打、82.7打点をたたき出している。

 打率が3割を超えている2003年は矢野と古田の平均だ。この年の矢野は打率.328をマークし、捕手でありながら打率3位にランクイン。また、2001年には古田が打率.324で打率2位、阿部は2012年に打率.340で首位打者となったほか、何度となく30本以上の本塁打を記録しており、かつてのセ・リーグにはとにかく“打てる捕手”が多かった。直近の2年はそれぞれ中村と小林ひとりの成績。かつては本塁打が2桁を割ることもほとんどなく、50打点以上マークするのが常だったが、なんとも寂しい打撃成績となっている。

かつてのパ・リーグ、球界を代表する“打てる捕手”城島


 続いて、パ・リーグはどうだろうか。

【パ・リーグ】規定打席到達捕手の平均打撃成績
2000年 打率.298(459打数137安打) 9本塁打 76打点
2001年 打率.258(534打数138安打)31本塁打 95打点
2002年 打率.293(416打数122安打)25本塁打 74打点
2003年 打率.330(551打数182安打)34本塁打 119打点
2004年 打率.312(830打数259安打)31本塁打 87.5打点
2005年 打率.309(411打数127安打)24本塁打 57打点
2006年 打率.264(382打数101安打)17本塁打 56打点
2007年 打率.256(870打数223安打)12本塁打 59打点
2008年 打率.253(821打数208安打)14.5本塁打 52.5打点
2009年 打率.243(877打数213安打)18本塁打 64.5打点
2010年 打率.315(422打数133安打)3本塁打 43打点
2011年 該当者なし
2012年 該当者なし
2013年 打率.253(1270打数321安打)4本塁打 43.7打点
2014年 該当者なし
2015年 打率.211(399打数84安打)4本塁打 35打点
2016年 該当者なし
※捕手登録も捕手としての出場が少ない選手は含まない

 パ・リーグの場合、規定打席に到達した捕手はセ・リーグの延べ41人に対して19人と少なめである。最も多かったのは、伊藤光(オリックス)、嶋、炭谷銀仁朗(西武)が規定打席に到達した2013年の3人。2000年は野口寿浩(日本ハム)、2001年~2003年、2005年は城島(ダイエー、ソフトバンク)、2006年は里崎、2010年は嶋、2015年は炭谷が唯一の規定打席到達者であったほか、2011年、2012年、2014年、2016年は該当者がいなかった。

 とはいえ、捕手の打力が徐々に低下しているのは明らか。この間、城島は3度の打率3割を達成するなど、まさにパ・リーグ、そして球界を代表する“打てる捕手”であった。2000年代前半に、30本塁打、100打点前後という圧倒的な数字が目立つのは城島の功績によるものだ。2009年には田上秀則(ソフトバンク)、里崎のふたりで平均18本塁打、64.5打点という好成績をマーク。しかし、以降は規定打席に到達する捕手がひとりもいないシーズンも目立ち、打撃成績も下降の一途をたどっている。

 守備面で大きな負担がかかるポジションであるだけに、近年では複数の捕手を使い分ける起用法を取るチームも多い。とはいえ、やはりチームのなかで抜きん出て打てる捕手がいれば、首脳陣も正捕手として固定したくなるはずだ。そして、なによりも“打てる捕手”はそれだけでファンの心をつかみ、チームの顔となっていく。季節は冬の真っただ中だが、球春到来を待ち望むファンのためにも、捕手にとっての“冬の時代”も早く去ってくれることを望む。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)

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