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ショウアップナイター

ニッポン放送・馬野雅行アナが「一番熱かった」と振り返る阪神優勝のターニングポイントとなった2005年9月7日の中日戦。「放送している時は気づけなかったんですけど」と反省も…

ニッポン放送ショウアップナイターで実況を務める馬野雅行アナウンサー

◆ いつでもみんなのプロ野球!実況アナルームのテーマは“今まで一番熱かった試合”

 「ニッポン放送ショウアップナイター」のアナウンサー陣13名が週替わりで登場する『統一テーマ』で語ってもらう“実況アナルーム”。8月に入りプロ野球はリーグ優勝争い、クライマックスシリーズ進出争い、熱い戦いが連日行われていることに加え、ショウアップナイターのシーズンキャッチが“熱ラジ”なので、今回のテーマは“今まで一番熱かった試合”。

 今回、“一番熱かった試合”について語ってくれたのは、今年4月からニッポン放送ショウアップナイターの実況陣に加わった馬野雅行アナウンサーだ。馬野アナは今年3月までMBSでテレビ、ラジオを中心に野球実況を行ってきた。その中で、一番熱かった試合に挙げてくれたのが、2005年9月7日、中日-阪神(ナゴヤドーム)だ。

 「一番熱かったですね。残念ながら優勝決定の実況経験がないので、優勝実況があるとそこが一番熱い試合になったかもわからないですけど、その経験がないので、1位が2005年9月7日の中日-阪神ですね」。

 阪神は、前日の9月6日の中日戦にエース・井川慶を立てるも2-5で敗れ、2位・中日に2ゲーム差に迫られた中で9月7日を迎えた。阪神は3-1の2点リードで9回裏を迎える。この回からマウンドに上がった守護神・久保田智之が、無死二、三塁のピンチを招くと、谷繁元信(現ニッポン放送ショウアップナイター解説者)をセカンドにゴロを打たせる。ホームを狙った三塁走者を刺そうとセカンド・関本賢太郎がホームに送球し、タッチアウトかと思われたがセーフの判定に。この判定に激怒した岡田彰布監督が、グラウンドにいた選手をベンチに引きあげさせる。

 18分間の中断の末、無死一、三塁で試合が再開するも、井上一樹の犠飛で同点に追いつかれると、一死一塁で荒木雅博のセンターフライをセンター・赤星憲広がまさかの落球。井端弘和を敬遠し満塁とピンチが広がったところで、岡田監督がマウンドに向かい、いわゆる“めちゃくちゃにやったれ”と檄を送った。このピンチに久保田が、連続三振でピンチを脱し、延長11回に中村豊の決勝本塁打を放ち、4-3で勝利した。

 「阪神の21世紀入った中で“めちゃくちゃやったれ!”という言葉が出てきたあの試合で、当然同点に追いつかれて満塁の時に岡田監督が出てくること自体が珍しかった。試合再開していろんなことがあって、前半のことは覚えていませんが、8回以降はめちゃくちゃ本当に興奮しながら喋ったのを覚えていますね。阪神戦を中心に実況してきて、甲子園で熱くなるのは当たり前なんですけど、ビジターはなかなかそういう雰囲気にならないところをあの時はすごかったですね。僕も興奮していました」。

 ただ、反省点もある。

 「岡田監督が“俺が責任取るからめちゃくちゃやったれ!”と言っているのを知っていれば、もっと違う実況になったんだろうなと思っています。当時キャッチャーの矢野くんに“どうめちゃくちゃやったの?”と聞いたんですよ。“監督が責任取ってくれるんだったら、本当にめちゃくちゃやったろう”と思って、監督が出てきた後、満塁で二者三振なんですけど、全部インコース投げたんですって。普通ならありえないリード。普通ならそれで打たれたら、色々言われるリードなんだけど、監督が責任取ってくれるんだったら、一緒にめちゃくちゃやったろうと、選手はめちゃくちゃやったというのを後で聞きましたね」。

 「当然、放送している時は気づけなかったんですけど、気づけていて実況できたら面白かっただろうなと。同点で満塁の場面、相手バッターをどう打ち取るか、解説、実況のやりとりだったと思うんですけど、“めちゃくちゃやったれ”がわかっていれば、本当に面白い実況ができたと思います」。

 「全部インコースに投げたことに何も違和感を感じず、たとえば“なんか開き直りましたね”と言えたらすごかったんですけど、それが言えなかった。まだまだ読みが甘いなと後で思ったんです。選手自身は、岡田監督はそういうことを言う人だから、マウンドにきて“めちゃくちゃやったれ”と言われてもビックリもしなかったと。後日談を聞いて、どんなに面白い放送ができたんだろうと言うのは、後になって思いましたね」。

 馬野アナによると、中村豊の決勝弾にも後日談があるという。

 「当時のナゴヤドームの放送席は、2回席が前にせり出してきていて、フライが上がるとボールが見えなくなるんですよ。ボールの行方が分からなかったんです。ポール際でスタンドに入ったボールが跳ね返ってきた。審判が手を回しているから、戻ってきているということはポールに当たっていると思ったんです。ポールに当たっていると、実況しちゃっているんです。その後、再生見たら、スタンドに入っているのが戻ってきているので、あ〜しまったと。あの後って、2005年の優勝のターニングポイントになった試合で、結構番組で再生して使われたんですけど、その度に苦い思い出をしましたね。失敗したなというのもあるんですけど、そんなことも含めて熱い試合でした」。

 この試合をきっかけに阪神は勢いを加速し、9月29日の巨人戦に勝利し、2年ぶりのリーグ優勝を決めた。

 あれから20年が経った――。当時MBSでアナウンサーをしていた馬野アナは、今はニッポン放送ショウアップナイターの実況アナウンサーを務める。熱い戦いが続く8、9月にどんな実況で、リスナーを楽しませたいのかーー。

 「気温の暑いと試合の熱いの両方があると思うので、特に神宮、横浜の屋外球場だったら、スタンドの描写で“こんなに今は熱いんだ!”、その中で選手がプレーしているところ、選手たちのこれから優勝争いになってくると、バットの芯に当たる何ミリの差とか、森下の1ミリじゃないけど、1ミリ、2ミリの際どいところが出てくると思う。球場の緊張感、そこがラジオの醍醐味だと思うので、キリの良い数字で表現するのではなくて、本当にセンチ単位、ミリ単位で話ができたらリスナーもドキドキ、ワクワクしてくれるのかなと。あとは選手の汗とかね、なかなか放送席から直接見ても選手の汗は見えないので、モニターを見ながらの実況になるんですけど、“すごい汗です”、東京ドームなのに緊張感で汗をかく選手がいるかもしれないじゃないですか。汗も見逃さずに終盤戦の熱い戦いを描写できたら良いかなと思います」。

(ニッポン放送ショウアップナイター)

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