プロ野球中継のウラ側に迫る
ふだん私たちが何気なく耳にしているラジオのプロ野球中継。球場で起こっている出来事が放送に乗ってリスナーに伝えられるまでには、実は思っているよりも多くの人々の力と支えがあって成り立っている。
なかなか知ることができないラジオ中継の“ウラ側”に迫るべく、ニッポン放送「ショウアップナイター」に関わっている人々を突撃取材。今回は有楽町・ニッポン放送の社内から中継を支えている学生アルバイトたちの仕事を紹介していく。
アルバイトの役割
業務中のアルバイトの大学生たち
ひとくちにアルバイトと言っても、実際には様々な役割が存在する。まずは主な役割の名前と、その仕事内容をご紹介。
▼ モニター
各球場のランニングスコア、途中経過、各試合の情報を記入。
▼ 送り
モニターが調べた情報をもとに、球場で業務を行っている外勤と呼ばれるアルバイトに情報を伝達。
▼ フラッシュ
実況音をニッポン放送のニュースなどで使用するため、得点が入ったときに録音機にマークを入れる。
▼ チーフ
モニター、送り、フラッシュなど全ての業務を取りまとめている。
基本的には、中継カード以外の試合を注視しながら、その試合で起こった出来事や達成された記録をまとめて中継ブースへと送るのが主な仕事。放送中に他球場の経過が迅速かつ細かな情報まで伝えられるのは、彼らの頑張りのおかげだ。
アルバイトのある一日
試合前
台帳と呼ばれるニッポン放送の中継では欠かせないデータ集
近鉄時代の台帳も
・試合開始2時間前に出社し、その日行われる試合のデータ集め。
→“台帳”と呼ばれる選手の個人データが詳細に記載された独自の資料をもとに情報を収集
・各球場でスタメン発表
→久しぶりにスタメン出場した選手が、いつぶりのスタメンなのか、初スタメンなのかなどの情報を集めている。
・ナイトゲームであれば17時30分にショウアップナイタープレイボールが放送開始
試合開始
試合中のアルバイトたち
収集したデータを球場で業務を行っている外勤のアルバイトに伝達
各会場、得点した際に使用する録音機材
・ラジオを聴きながらランニングスコアの記入、“2年ぶりの本塁打”、“連続勝利”、“2打席連続本塁打はいつ以来なのか”といったデータを収集。中継カードだけでなく、全試合のデータを集めている。
・収集したデータを“送り”と呼ばれるアルバイトが、球場で業務を行っている外勤のアルバイトに伝達。伝えた情報がニッポン放送ショウアップナイターのOAで流れる可能性も…。
・各会場、得点した際に録音機材にチェックを入れる。
→ハイライト放送の素材として使用するために録音機材にチェックを入れている。
試合後
試合後の反省会
反省会
・アルバイトのチーフを中心にその日の反省会を行っている。
嬉しかったこと失敗したエピソードは?
また、アルバイトの大学生に業務を行っている中で、嬉しかったことや失敗したエピソード、業務中に重要視していることなどを聞いてみた。
Q 試合前の情報を集める上で重要視していることは?
・「当日の夜のスポーツニュースで、取り上げられそうなデータを予想して探しています」
・「リスナーが“あっ”と驚く情報をみつけることを意識しています。たとえば、雄平選手は併殺打が少なく、いつぶりの併殺打になるといったものなどです」
Q 試合前の業務で一番忙しいと感じる場面は?
・「スタメンが発表されたときは、より速くその選手の情報を集める必要があるので忙しいです」
Q 試合中の業務はどんなことをやっているの?
・「オフィスにいるチーフの社員さんに放送終了時間を聞き、何時に番組が終了するかを中継スタッフに伝えています」
・「誰がタイムリーを打ったのか、何号本塁打、チームの連勝連敗、投手の勝敗や連勝の確認をしています」
・「オフィス内のテレビで全試合を見る事ができるので、全会場の動向をチェックしながら、録音された機材にチェックを入れています」
Q この仕事ならではの嬉しかったことを教えてください。
・「ヤクルトの秋吉が史上2人目となる3年連続60試合という珍しい記録をみつけ、それが他のメディアで取り上げられたことです」
・「調べた情報が本放送でアナウンサーさんに読まれ、SNS上でも大きな反応があったことです」
・「スポーツ中継で出てくる情報に興味があったので、その出所を知ることができて嬉しかったです」
Q この仕事で失敗した経験を教えてください。
・「途中経過の報告を忘れてしまい、放送事故に繋がりかけたことです」
・「地方球場ばかりの試合で、球場名を聞き間違えて、誤った情報を伝えてしまったことです」
・「速報性のある情報をすぐに伝えることができなかったことです」
ニッポン放送ショウアップナイターのプロ野球中継は、アナウンサー、解説者、現場スタッフだけでなく、オフィスの大学生たちの存在があって成り立っている。今日も全国のプロ野球ファンに有益な情報を届けようと、オフィス内で奮闘しているのだ。