ショウアップナイター

王、落合、長嶋…名選手に学ぶプロの姿勢【深澤弘のショウアップナイターヒストリー】

王貞治氏 [写真=Getty images]

◆ スーパースターたちの言葉

 5月も中旬を迎え、世の中へ出た社会人の皆さんの仕事も本格的になってくる。ということで、若い皆さんへ、プロ野球界のスーパースターたちが“どのような姿勢”で仕事に臨んできたかを、彼らの言葉と共にお届けしたいと思います。

 スーパースターたちは折に触れ、色んなことを言っております。

 まずは王貞治さん。何年か前のプロ野球新人研修会の時に王さんがゲストで来て、私と王さんが1対1で話しながら、みんなに伝えた話を私なりにまとめてみたものです。

◆ 野球選手としての心得!?

 まず野球選手として大切なこと。これが何かというと、「負けん気と向上心を持って常にグランドに立つこと」だと。打者は投手と違っていくら練習しても壊れない。限界いっぱいやって、技術の向上を求める。打球が野手を弾き飛ばすくらいの気迫を持って練習しなければ何にもならない。ただ打つだけ、ただ振るだけではいけない。とにかく負けん気と向上心を持って練習しろ。

 それから「いつも焦らず、平常心」で。と言っても難しいけれど、でもそうしないとダメ。上手くいっても有頂天にならず、失敗してもいつまでもクヨクヨすることはない。どんなに頑張ったって3割しか打てない。とにかくメモをしっかりとって、色んなことを忘れないように活用するのも重要なことだと。

 3つ目は、「1年でも長く現役を続けなければいけない」ということ。せっかく、多くの難関を切り抜けて入ったプロ野球の世界。1年でも長く現役をやらないで一体どうするのかと。若い頃は煙草も吸ったし酒も飲んだが、その代わりに練習もしたと。しかし、煙草や酒など、現役生活のマイナス要因になるものは控えた方が良いし、酒などはいくら好きでも節度を保ち、終わったらゆっくり飲めば良いじゃないかと。

 4つ目は、「お金はやればやれる程稼げる」と。それがプロ野球の世界。ただし、無駄使いは絶対するな。自分のためにお金を投資しなくてはいけないと。

◆ 王さんが嫌なピッチャー!?

 もちろん新人研修会にはバッターだけじゃなくピッチャーもたくさんきていました。その若いピッチャーたちも、王さんが何を言うかと首を長くして乗り出すように話を聞いており、そのピッチャーたちに王さんが一言。

「ピッチャーたちに俺からは一言しか言えないけれど、バッターから見ると、バッターはピッチャーに攻められていると感じる。君たちに攻められているように感じるんだ。だから逃げているなと思うピッチャーは、バッターから見ると全然怖くない。相手に当ててはいけないと考えず、近めが必要な時は思い切って近めを攻めるべきだ。バッターは、そういうピッチャーが実は一番イヤなんだ」

 これなんかは、ピッチャーが心に留めておけば、いざという時に役立つ一言ですね。

 れから王さんは、“バッターとして大切なことは何か”ということを言いたいと。

◆ 世界の王が打者に贈った7つの言葉

 バッターとしては第1に、「速い球を打てるようになれ」と。速い球をどう打つかがバッティングの原点で、そのために毎日素振りをして、バットスイングをより速く鋭くすることが大事。素振りは正しいフォームでなければ意味がないし、試合後すぐにやらないと意味がない。身体に緊張感があるうちにバットを振らないと意味がない。ということを王さんは言っていました。

 王さんは「俺が一番振った」と言っていました。だけど長嶋さんも「俺ほどバット振った奴はいないと思う」と言う。張本さんは、「暇さえあれば俺はスイングしていたからね」と言うし、落合さんは「そんなの当たり前だよ」と、誰もが“自分が一番振った!”と思っている。実際、そうことなんでしょう。

 ちなみに2つ目は「失投を絶対逃がしてはいけない」ということ。特に初球には平凡な球がくると。王さんは初球のホームランが非常に多く、意外に少なかったのが、スリーボール・ワンストライクと絶対有利なカウントのときで、力みがあったのかもしれないと。

 3つ目が「投手の球を、ピッチャーの球をよく見ろ」。そのため、キャッチボールの時からボールをよく見る習慣を身に付ける。相手の手からボールが離れた瞬間、いやそれ以前から、相手のグラブの中にボールがある、その時からボールを見る習慣をつけなくては駄目だと。

 さらに、見える球は打てる。ということで、4つ目は「脇を、窮屈すぎると感じるくらい締めて打て」。するとインコースを打てるようになると。脇が甘いというのは、何かにつけて良くないんだと。

 それから5つ目。「ホームランは狙わなくても打てる」。ちゃんとボールを打てばボールは飛んで行く。ボールは打つ、叩くのではなくて、ボールの中にバットを通すイメージで打っていたと。ボールの中にバットを通すイメージで振ってみろと。

 6つ目は「デッドボールは仕方がない。でも避ける技術を身に付けろ」。ぶつけられて怒っている選手は、技術がない証拠であると。

 最期に、「ツーストライク後はバットを短めに持つなど、色々と工夫することが必要」だとおっしゃっていました。

◆ 山本浩二の五箇条

続いて山本浩二さん。王さんの2年くらい後の新人研修会にきて、新人の皆さんに話してくれた言葉です。

まず、「挨拶が大事」だと。チーム内の挨拶は当たり前で、訪ねて来たOBたちにも忘れずに挨拶をする。帽子をとってきちんと挨拶をする。OBたちは非常に嬉しく思って君たちを応援するだろうと。挨拶をきちんとすると、自分も前向きになれると。

 2つ目は「ライバルを作れ」。ONという史上最高のライバルを始め、プロ野球史上には多くのライバルが登場すると。

 「私にも現役時代、衣笠祥雄という、願ってもないライバルがいた。初めは特に仲が良かった訳でもなかった。むしろ仲が悪かったが、1975年、広島初優勝のチャンスが近付いてきた時に、自分だけでは駄目だと思った。キヌ、何とかしてくれ。と思い、力を合わせなくては駄目だと思った。だからといって、仲が良くなった訳ではない。ただ優勝へ向かって2人の心が1つになったとは言える

それ以後、2人は腹を割って話せるようになり、チームが勝つ度に共に変なわだかまりを捨てたと。ライバルの存在によって、つくづく人間的に成長したと感じたそうです

 3つ目に言っていたのは、「まず練習しなくてはいけない」ということ。ランニングは強い下半身を作るため、何より重要だと。また、キャッチボールでは正しいフォームで、正しいスローイングを覚える必要があると。キャッチボールは強い下半身を作るのに役立つので、丁寧に根気よくキャッチボールをする習慣を身に付けろと。

 そして4つ目は、山本浩二さんらしく「心が大事」であると。

「プロになった者はみんな優れた技術と力を持っているからプロになれた。さらに向上するためには、技はコーチが教えてくれる。ただ心はその人によって違う。だからそこで差が出る。7割から8割が心、精神的なものに左右される」

 では、どのように強い心を持つのか。それは練習する以外ないと。練習あるのみ。大事なのは1日も休むことなく練習を継続すること。これだけしっかり練習したんだから、という強さ、裏付けが必要なんだと。

 最後に山本浩二さんは、「相手を知ることも重要」だと言います。よく野球というゲームを研究して、野球頭が良くなることが大切で、あらゆる恐怖心を取るために相手を知ることが大切なんだと。なかなか含蓄ありますね。

◆ “三冠王”落合を形成した信条

 それから落合博満さん。落合さんは凄い照れ屋で、偉そうなことを言うのが大嫌いなんですね。ですからあの人の話の中で、所々気が付いたことだけをちょっと拾ってみます。

「ユニフォームを着てやる練習は、単なるセレモニーだ。ユニフォームを脱いだ時に、何をやっているかによって俺たちのすべてが決まる」

 これ思いますね。これは野球選手だけではなくて、我々の世界どこにも当てはまると思いますね。

「なぜ練習をするか?なぜこういうプレーをするか、よく考えなくてはいけない。しっかりした信念を持ってすべてに取り組まなくては、意味もないし進歩もない」

落合さんからもう1つ。「スランプは精神面ではない。スランプは技術不足だから」。落合博満、三冠王の言葉ですね。こんなのは本当にどれもこれも素晴らしい言葉だと思います。

◆ 長嶋茂雄の監督論

 最後に長嶋茂雄さん。監督としての長嶋さんの言葉を拾ってみました。

「戦術より戦略である。戦術というのは、ヒットエンドランとかバントとかそれから盗塁とか、そういうこと。それより戦略。戦略というのは、どういうチームを作って、どういう野球をやって、どういう風に勝っていくか、ということ」

「それから確率を求めろ。だから過去の色んなデータが大事になる。バントしようか、エンドランでいこうか、というのは確率の良い方を、ランナーの足とか、色々考えて求める」

「あとは、感情で選手を起用してはいけない。あの野郎、どうも最近俺に対して態度悪いから、みたいな感情で選手を起用してはいけない。こうなったら監督は終わり」

「どうしたら25人で戦えるかも大事。グランドには立てるのは9人のみ。残りのベンチにいる奴を、どう引き込んで全員でゲームを出来るか。どうしたら25人で戦えるか。これを考えるべきだ。監督の采配で勝てるゲームなんか、年間に2、3試合ぐらいしかない、ということをよーく心に刻んでおく」

「あとは、選手の力。監督の采配通りいかなかった時に、選手がそれをどうカバーするかが、各チームの戦力であり、戦力の差になる。その辺の教育ってのは日頃から大事だと思う。それから絶対に欲しいのは、チームリーダー。チームリーダーを育てる、作ることは大事」

 これは長嶋“監督”の経験からきた言葉だと思います。

 以上、スーパースターたちの言葉から、それぞれの姿勢や考え方というものを紹介しました。何度読んでも、なるほどな、と思うんで、皆さんも、1つでも2つでも覚えてらしてですね、何かの時に使って頂けたらと思います。

(ニッポン放送ショウアップナイター)

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