高橋前監督「本当に申し訳なく思っております」
巨人は23日、読売新聞本社にて高橋由伸前監督の退任会見と原辰徳新監督の就任会見を合わせて開いた。
冒頭、23日付で退任となった高橋由伸前監督について、同席した山口寿一オーナーは「再び監督としてジャイアンツのユニフォームを着てもらいたいというのが私の願い」と話し、「当面は自由な立場で野球を見てもらいたい」と球団特別顧問に就任することを発表した。
また、原辰徳新監督の就任も合わせて発表され、2021年末までの3年契約、背番号は第1次政権時(2002~03年)の「83」に決まったことも明した。原辰徳新監督は、早速25日のドラフト会議に出席し、31日から宮崎で始まる秋季キャンプで指揮を執る。
会見の中で退任する高橋由伸前監督は「3年間たくさんの声援をいただいたファンの皆様の期待に応えることができず、本当に申し訳なく思っております。私自身も非常に悔しい思いでいっぱい」と悔しさを滲ませた。
監督退任に際しては「正直なところ、ちょっと疲れたな、というのが素直な気持ち」と話し、退任を考えた時期について「チームの勝敗の責任は常に背負うものと思って就任の時からやってきた。3年目に入って、なかなかチームが優勝争いに加われない、そういった時期、夏場ぐらいから頭の中には少し出てきたのかな」と退任の決断にいたるまでの経緯を説明。
その一方で「常に新しい力はチームに求められていた。私がやっている間に少しでも多くの新しい力を作らなくてはならない、そういった思いは3年間、ずっとあった。今年、少しそういった選手が出てきてくれたことは私にとっては嬉しいことだった」と若手の台頭を喜んだ。その新戦力としては今季、4番に定着した岡本和真が挙げられるが、高橋由伸前監督は「私一人の力ではない。何より選手本人の力」と称えた。
「勝って辞めるわけではない。勝つことを目標にやってきましたから、なかなか嬉しいことはパッとは浮かばない」と3年間を総括した高橋由伸前監督。現役引退から即監督に就任し、今回、初めてユニフォームを脱ぐが、「これも私にとっては新たなスタート、というか初めての経験。想像がついていない部分の方が大きい」とし、「すべての選手に頑張ってほしい。とにかくまた強いジャイアンツを復活させてほしい」と来季以降のチームへの思いを語った。
原辰徳氏が3度目の指揮
高橋由伸前監督の退任会見に続いて、原辰徳新監督の就任会見が開かれた。「3年前に高橋由伸監督にバトンを渡して、私の中では野球という部分に関して少し静観した形でゆったりと観られるであろうと思っていた。しかし、オーナーから命が下り、監督と言われ、自分の気持ちの中ではしっかりと戦いに臨むエネルギーもひしひしと湧いてきている」と3度目の指揮を執る意気込みについて語った原新監督。
自身については「ある程度、経験というものはある人間ではあると思う」としながらも、「まさに初心に戻った形でまたユニフォームを着られる。大きな目標、希望に向かって戦いは始まるな、と思っている」と話し、第1次政権で背負った「83」の背番号を引き合いに出して、「まさに原点に戻って溌剌と希望に満ち、ユニフォームを着て監督として暴れたい」と原点回帰を強調した。
高橋由伸監督の3年間については「数字という部分では悔しい結果になったが、いいものを残してくれた。彼が3年間で残してくれた素晴らしい足跡をキチッと私自身も踏みながら先に進んでいきたい」と継承についても触れ、これから築く新チームについて「まず戦うチーム、『目標』を定めたチームというのが一番大事。ジャイアンツの歴史…ジャイアンツというチームは『チームが勝つこと』これが最大なる目標、目的。それに値する選手は誰なのか。『巨人軍』でなきゃいけない。『個人軍』であってはいけない。束ねた力、束ねられた一人一人を見きわめて、しっかりと観察し、チームを作っていきたい」とした。
さらに「一つ選手たちに言いたいのは」と前置きした原新監督。「やっぱりスポーツ…野球の原点は『のびのび』と。のびのびと楽しみ、そして、勝っては喜び、負けては悔しがる。この『のびのび野球』という部分を私自身も含めて『原点に戻る』という意味で、そういう野球をするんだ、と。そして、選手たちにはのびのびと野球を、『目標』を持った形で前へ進んでもらいたい」と、「目標」・「原点」・「のびのび」といったキーワードを散りばめながら語った。
今季の4番・岡本和真は第2次政権時の原監督がドラフト指名した選手だ。岡本について原新監督は「今年が4年目になりますか…。あのときのドラフトは、非常によく覚えいる。チーム事情としてはどうしても投手がほしいなぁ、という状況だったが、スカウトと話をしているときに『数年後4番を打てるような選手になるでしょうか』という論議をして『数年のちには必ず4番号打者になります』ということで『わかりました』と。『では彼をドラフト1位で指名しましょう』という風に決断したのがこの前のような感じ。私が監督をやっているときには、まだ時期尚早であったのかなぁ、と思うが、今年の高橋監督の勇気ある決断の中で4番を任せた。少々の波風が立とうが任せ、彼もそれを乗り切った形で4番を守りきった。…守りきったというよりも戦い抜いた。ファンという立場で見ていたが、感無量的なところはあった。しかし、プロの世界というのは今年が良かったから、来年も、という甘い世界ではないんで。さらに日本を代表するような打者になるべく、私自身も彼と向き合って戦いたい」と若き4番打者のさらなる奮起へ共闘する考えを示した。
25日にはドラフト会議が、原新監督の最初の仕事の場となる。「まず一番最初の自分の中での戦い火蓋はドラフトなのかな、と。有望な新人選手を発掘する作業はプロ野球にとって大事な役割。いい形で目標を定めた選手が巨人軍に入ってくれたらな、と思う」と意気込みを語った。
巨人の新体制が3度目の指揮を執る原監督の下でいよいよスタートする。なお、会見にて山口オーナーから「フロントの編成に関しましても原監督の意向を完全に尊重しようと思っております」との発言があり、全権監督として指揮を執ることと、今季二軍監督を務め、18日のニッポン放送ショウアップナイタースペシャル セ・リーグクライマックスシリーズファイナルステージ第2戦中継でゲスト解説をされた川相昌弘氏が読売新聞本社の「スポーツアドバイザー」に就任し、本社のスポーツ全般への取り組みについて助言を行なうことになった。
▼ 長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督の談話
「ジャイアンツは、永遠でなければならない。ジャイアンツは、多くのファンの期待に応えるために、常に勝たなければならない。秋季キャンプから、原監督のもとでチーム一丸となって、ペナント奪回に向けて頑張ってほしい」
(取材文・撮影 ニッポン放送アナウンサー洗川雄司)