フリーアナウンサーの節丸裕一が、スポーツ現場で取材したコラムを紹介。今回は、“自身最高の状態”で3年連続沢村賞を目指す巨人・菅野智之を分析する。
【プロ野球巨人那覇キャンプ】打球よけのネットを前に置かずにフリーバッティングの打撃投手を務めた巨人・菅野智之=奥武山公園 提供:産経新聞社
きょう(2月19日)の午後、巨人の菅野智之から社会福祉法人「日本介助犬協会」(本部・横浜市)へ支援金が贈られる贈呈式が行われた。菅野は2015年から同協会に支援活動を行っており、今年で4年目の支援金贈呈となった。「介助犬は本当に賢くて、必要としている人はたくさんいる。でも育てるのは本当に大変で、お金もかかる。頑張って育てても介助犬になれない犬もいる」と熱く語る菅野は、後輩にも社会貢献活動の大切さを説くほど、慈善活動に熱心だ。
ほかの選手同様、菅野も自身の活躍に応じて支援金が増える形をとってモチベーションに変えているわけだが、支援金は誰でも贈ることができるので、菅野の活動に賛同するファンの介助犬への理解と支援の輪が広がるのが理想。来年にせまる東京オリンピック・パラリンピックは、獲得するメダルの色や数だけに注目するより、こうした視点から、障害者など多様性への理解が広がる大きなきっかけとなってほしいと私は切に願っており、菅野には大きな期待を寄せている。
さて、その菅野智之だが、今年は凄いことになりそうだ。昨季はセ・リーグ最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手三冠王。さらには、前年の沢村賞受賞時に宣言した通り、選考基準の「全7項目クリア」を達成し、文句なしで、史上5人目の2年連続沢村賞を受賞した。
もはや誰もが認める球界最高の投手だが、「さらなる高みを目指して」菅野は昨季以上の目標を掲げた。それは、セ・リーグでは2003年の井川慶氏以来となる「20勝」と、1958年の金田正一氏以来、史上2人目となる「3年連続沢村賞」。その目標がいかに困難かはプロ野球史が証明しているが、それでも菅野ならやってくれる。そう思わせるだけの状態の良さを見せている。
昨年11月初めに扁桃腺の手術を受け、侍ジャパンのエースとして期待されていた日米野球の参加を見送った。楽しみにしていた菅野自身も残念がっていたが、それも、持病の悩みを解決することで、シーズンを通してより良い状態を保ち、いままで以上の高みを目指したいからこその決断だった。術後は「全然喋れなかったし、どう治っていくのか分からなかった」というほどの喉の痛みが待っていた。食べることはもちろん、満足に声を出すことさえできない。そしてアスリートとしては辛いことに、約2週間トレーニングもできなかった。しかし、シーズン中のみならず、プレミア12、WBCなどオフも休まずにフル回転を続けて来た菅野にとっては、これが幸いしたのか。「体を動かさなかったことで、本当に疲れが取れたのかもしれない」と振り返る。
年末年始のハワイ自主トレから状態は良かった。間違いなく自身最高の状態と断言する仕上がりでハワイから帰国すると、そのままの状態でキャンプイン後もハイペースでブルペンに入って来た。一部からは「投げ過ぎではないか」「飛ばし過ぎではないか」と心配する声もあるが、本人は「力を入れて飛ばして投げているわけじゃないし、投げ過ぎなんてことは1ミリもないですよ」と笑う。菅野はプロでの6年間で、9勝だった4年目の2016年をのぞく5シーズン、2桁勝利を挙げて来た。デビューから6年連続で規定投球回もクリア。その間には、前半戦で圧巻の投球を見せながら後半戦苦しんだこともあれば、昨季のように出足が万全ではなかったこともある。
「何年もやってきて、いろいろ経験を積んできたので、いまは良い状態を続けていけるだけの自信がある」と話す笑顔には穏やかな自信があふれていた。「この時期としてはプロに入ってからいちばんいい状態です。だからこそ、いい感覚を体に覚えこませるために、ある程度ブルペンに入って投げているという段階ですね」。
扁桃腺の不安もなくなった菅野は、1年を通じて良い状態を保つイメージを持ちながら、23日にオープン戦開幕投手として今季初めての実戦となる楽天戦(那覇)に臨む。その後も開幕に向けて、徐々にピッチングの強度を上げて行くことになる。
「無双」———誰も並ぶものがいない、圧倒的な存在として恐れられる菅野だが、それでも「さらなる高みをめざして」と歩みを止めるつもりは毛頭ない。現役最強右腕から史上最強右腕へと階段を上がって行く菅野が今年の秋に目にする景色はいかなるものなのか、楽しみでしかない。
【プロ野球巨人那覇キャンプ】打球よけのネットを前に置かずにフリーバッティングの打撃投手を務めた巨人・菅野智之=奥武山公園 提供:産経新聞社
きょう(2月19日)の午後、巨人の菅野智之から社会福祉法人「日本介助犬協会」(本部・横浜市)へ支援金が贈られる贈呈式が行われた。菅野は2015年から同協会に支援活動を行っており、今年で4年目の支援金贈呈となった。「介助犬は本当に賢くて、必要としている人はたくさんいる。でも育てるのは本当に大変で、お金もかかる。頑張って育てても介助犬になれない犬もいる」と熱く語る菅野は、後輩にも社会貢献活動の大切さを説くほど、慈善活動に熱心だ。
ほかの選手同様、菅野も自身の活躍に応じて支援金が増える形をとってモチベーションに変えているわけだが、支援金は誰でも贈ることができるので、菅野の活動に賛同するファンの介助犬への理解と支援の輪が広がるのが理想。来年にせまる東京オリンピック・パラリンピックは、獲得するメダルの色や数だけに注目するより、こうした視点から、障害者など多様性への理解が広がる大きなきっかけとなってほしいと私は切に願っており、菅野には大きな期待を寄せている。
さて、その菅野智之だが、今年は凄いことになりそうだ。昨季はセ・リーグ最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手三冠王。さらには、前年の沢村賞受賞時に宣言した通り、選考基準の「全7項目クリア」を達成し、文句なしで、史上5人目の2年連続沢村賞を受賞した。
もはや誰もが認める球界最高の投手だが、「さらなる高みを目指して」菅野は昨季以上の目標を掲げた。それは、セ・リーグでは2003年の井川慶氏以来となる「20勝」と、1958年の金田正一氏以来、史上2人目となる「3年連続沢村賞」。その目標がいかに困難かはプロ野球史が証明しているが、それでも菅野ならやってくれる。そう思わせるだけの状態の良さを見せている。
昨年11月初めに扁桃腺の手術を受け、侍ジャパンのエースとして期待されていた日米野球の参加を見送った。楽しみにしていた菅野自身も残念がっていたが、それも、持病の悩みを解決することで、シーズンを通してより良い状態を保ち、いままで以上の高みを目指したいからこその決断だった。術後は「全然喋れなかったし、どう治っていくのか分からなかった」というほどの喉の痛みが待っていた。食べることはもちろん、満足に声を出すことさえできない。そしてアスリートとしては辛いことに、約2週間トレーニングもできなかった。しかし、シーズン中のみならず、プレミア12、WBCなどオフも休まずにフル回転を続けて来た菅野にとっては、これが幸いしたのか。「体を動かさなかったことで、本当に疲れが取れたのかもしれない」と振り返る。
年末年始のハワイ自主トレから状態は良かった。間違いなく自身最高の状態と断言する仕上がりでハワイから帰国すると、そのままの状態でキャンプイン後もハイペースでブルペンに入って来た。一部からは「投げ過ぎではないか」「飛ばし過ぎではないか」と心配する声もあるが、本人は「力を入れて飛ばして投げているわけじゃないし、投げ過ぎなんてことは1ミリもないですよ」と笑う。菅野はプロでの6年間で、9勝だった4年目の2016年をのぞく5シーズン、2桁勝利を挙げて来た。デビューから6年連続で規定投球回もクリア。その間には、前半戦で圧巻の投球を見せながら後半戦苦しんだこともあれば、昨季のように出足が万全ではなかったこともある。
「何年もやってきて、いろいろ経験を積んできたので、いまは良い状態を続けていけるだけの自信がある」と話す笑顔には穏やかな自信があふれていた。「この時期としてはプロに入ってからいちばんいい状態です。だからこそ、いい感覚を体に覚えこませるために、ある程度ブルペンに入って投げているという段階ですね」。
扁桃腺の不安もなくなった菅野は、1年を通じて良い状態を保つイメージを持ちながら、23日にオープン戦開幕投手として今季初めての実戦となる楽天戦(那覇)に臨む。その後も開幕に向けて、徐々にピッチングの強度を上げて行くことになる。
「無双」———誰も並ぶものがいない、圧倒的な存在として恐れられる菅野だが、それでも「さらなる高みをめざして」と歩みを止めるつもりは毛頭ない。現役最強右腕から史上最強右腕へと階段を上がって行く菅野が今年の秋に目にする景色はいかなるものなのか、楽しみでしかない。