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張本勲、原辰徳…名打者から“グリップ”を考える【ショウアップナイターヒストリー】

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日本ハムの清宮

“グリップ”は打者の悩みどころ?!


 今週は“グリップ”をテーマにお話してみたいと思ます。バッターがバットを握る手の事ですね。非常に大事なところで、多くのバッターが苦しんでいます。

 日本ハムの清宮幸太郎はグリップを、グーっと寝かせて、バットのヘッドをバットの太い方をピッチャーの方へグーっと倒します。したがってバットが自分の頭の上を通るような感じになります。バットのヘッドというのはグラウンドに垂直に立っているもので、グラウンドに並行に寝てしまうことは普通ないんです。ですから、バットのヘッドがもっと立たなければいけない。それからグリップも正しい位置に置いておきたい。今までに、グリップが非常に上手な選手というのは、ジャイアンツの原辰徳、それから東映にいた張本勲、この2人です。

 グリップの天才というか、グリップに関しては全然気に止めないで大丈夫だ。というような他のバッターが羨むようなグリップを持っていた人です。逆にグリップが下手なバッターは誰かというと、有名なのが長嶋茂雄さん。それからこれも有名な落合博満さん、このお2人はですね、なんともグリップが決まらない。とうとう長嶋さんなんか引退するまでグリップが決まらない。そういう事で苦労しましたね。

 1992年6月7日の巨人対中日。試合終了後、私は原監督と、当時は原選手ですね。食事をする予定で22時過ぎに東京ドームを出たんですけれども、どうもその当時の原辰徳選手はスランプで、その日も藤田監督がゲームに使わなかったくらい悪かったので、どうも食事をするような雰囲気ではなかった。

 車に乗って東京ドームを出たあと、原辰徳さんが「どこへ飯食い行きます?」と言うんで「飯食いたい?」と聞くと、「いやー、飯なんか食いたくないですよ。今日だってゲーム使ってもらえないからほとんど仕事をしていないし、腹減ってないですよ」と言うので、「じゃあ僕がこれから場所を指示するから、そこへ」と言うことで、原辰徳にも先方にも黙ってですね、ただ、先方がいるっていうのは確認していましたから、ずっと首都高速を通って中原街道に出て中原街道をまっすぐ直進して、丸子橋、多摩川がかかっているのですがその多摩川の橋の手前を右に曲がって田園調布へ入って行ったんです。

 田園調布の駅を越えて駅の反対側へいって、非常に静かな田園調布の高級住宅街ですね。もう夜の10時半を回っていますと誰も人通りのないような、葉っぱが落ちれば音がするような非常に静かな所なんですが、そこへ行って右へ曲がって左へ曲がってと指示していたら、原辰徳が「これ深澤さん、長嶋さんの家の方ですよね?」と言うんで「いやそこへ行こうと思うんだ。」と、長嶋さんの家の近くに行って、当時は携帯電話がありません。ただ、車に自動車電話ってのが付いていましたんでそれで長嶋さんに電話をして「今こういう所にいるんだけど、あと15分位で行っていいだろうか」と、「何でそんなに突然来るんだ」と、「まあとにかくお願いします」と、もう無理矢理、原くんを連れて長嶋さんの家に行ったんです。


長嶋茂雄と原辰徳


 そこではじめてスランプどん底の原辰徳のバッティングを長嶋さんに見てもらったんですね。長嶋さんはまだ監督ではなくて、当時の監督は藤田さん。長嶋さんは当時ゲームをやっていない夜は比較的暇だったのを分かっていたのと、もう1つは最近の原辰徳のスランプを気にしていたので、気にしてるんだったら長嶋さんが見るのが一番良いと思って、私も原くんにも断りなしに、連れて行ってしまって随分おせっかいな事をしたなと今では思っています。

 それから長嶋さんの居間に入って1時間半くらい、バットを持ってですね、夏、暑い、部屋の中クーラーが効いているとはいえ汗が飛ぶような中で一時間半くらいバットスイングをして、原辰徳のバッティングホームを長嶋さんがそこで直して、ただ直したといっても長嶋さんはこんなに一晩ばっかりやったって分からないよと、良くなるかどうか分からないけれども、やらないよりはいいだろうという事で、しかしそれがきっかけでそのバッティングホームで原辰徳が打ち出すんです。

 次の日から打ち出して、ジャイアンツは広島に本当に鼻首の差に迫るんですけれど、最後は原辰徳がへばってしまって、バッティングホームを維持できなくなる。その結果、最後は優勝を逃すんですけれど、その時の色んな会話の中で、「俺な、辰、お前が本当に羨ましいと思う事2つあるんだ。」と、原くんも「何ですか?」と、自分が褒められるかもしれないいんで、興味深く聞いている。

 長嶋さんは「1つはグリップの位置が黙っていても決まるということ。バッターボックスへ入ってバットを構えると、非常に正しいグリップの位置に、ここしかないというようなグリップの位置に決まるということ」だと。原くんも「はい。あまり僕はグリップの位置というのは考えた事がありません」と返し、長嶋さんは「だからそれが羨ましくてね、俺はグリップで苦労してグリップを下げたり上げたり身体の方に引いたり前に出したり色々な事をやってなかなかグリップが決まらなくて、とうとう現役中ずっとそれで苦労したんだ」「でも君はバッターボックスに入ってどんなにそのウエイトの置き方が下手でも間違っていてもパッと構えた時にグリップだけは正しいんだよな。これは羨ましい」と長嶋さんは言ったんですね。

 「それからもう1つは、ボールの飛距離は俺の比ではないね。俺よりはるかにボールが飛ぶし、この2つに関しては本当にかねがね君が羨ましいと思っていたんだ。だから土台をしっかりすれば、そこの1番微妙なところが君は持っているんだから。土台だけしっかりすれば打てるようになるから」という事で、土台をしっかりしてその時にも簡単な自然体のホームに戻して、原辰徳が甦るわけです。


張本勲の場合


 もう1つグリップで非常に上手な選手は3085安打を打って、504本のホームランを打った元東映の張本勲さんです。

「何でみんなグリップを難しいと言うんだ?何にも難しい事はないぞ。雨の中を歩く時に傘を持つ、その場所が正しいグリップだ。正しいところに傘を持たなければ濡れてしまうし大体身体に傘が引っかかったりそれから雨が下から舞い込んだりして駄目だろうと絶対雨の中を歩く時にみんな1番濡れない正しい所に傘を持つ。その傘を持つ手の位置これがグリップなんだ」と話していたことを思い出します。

 ですから張本さんは「もっと言うとね、もっと言うとちょっと言い方は下品だけれども雨の中で行儀が悪い、捕まっちゃうけど、男が立小便をする姿、これがバッターボックスに入る場合ベストな格好なんだ。つまり男が立小便をする変な話で悪いけれども、重心を前にもいってない後ろにもいってない横にもいってないど真ん中に重心がきている。それから傘は絶対濡れない疲れない、いい場所に持っている。雨の中で傘をさしながら立小便する姿で、ぱっとピッチャーの方を振り向く。これが1番ベストなバッティングの構えなんだ」と、らしい例えなんですけれど、本当にその通りなんですね。


落合博満の場合


 で、もう一人グリップが下手なバッターというのが、落合博満さん。この人もグリップが下手で、この人はグリップをずっと前に、身体の前にホームプレートの上の方にグリップを突き出していたんですが、昔はそうじゃなくて普通に打ってたんですね。ところが普通に打つとグリップがどうしても身体の方へ、右肩の方へ引き込んでしまう癖があるんですね。右肩へ引っ込むともう1回外へ出さなきゃならないので、なかなか二重手間でなかなかグリップが決まらない。

 落合さんが考えたのが、どうせ身体の方へグリップを引っ張り込むんだったら最初から前へグリップを出しておこうという事で、いわゆる神主打法という、なんとも言えない名前の打ち方になった訳ですけれども、もう皆さん、グリップというのは本当にあまり話題にならないけれども強打者達はみんな苦労している所なんです。

 原さんの現役時代の写真があったら是非見てみてください。どんな場合でもグリップの位置だけは変わってないんですね。ここだけは天才的だったんですが、色んな我々には分からないような細かい事がありますね。

 清宮くんのグリップの位置も、これがもし手首に大きく影響するという事になると、またまた離脱の原因になると思うので、この辺も色々と考えてもらえればと思います。


(ニッポン放送ショウアップナイター)

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