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早生まれの野球少年は不利? 子どもの生まれ月が競技能力に及ぼす影響

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スポーツ科学の分野で運動能力の発達やトレーニング、コーチングについて研究を行っている東京農業大学の勝亦陽一准教授。育成年代の普及活動にも積極的にかかわっており、昨年取材した早稲田大学野球部のOB会(稲門倶楽部)が運営する野球あそびイベント(Hello! WASEDA presents 安部球場「あそび場」開放)の発起人の一人でもある。今回はそんな勝亦准教授に、生まれ月がどれだけ子ども達のプレー、成長に与える影響が大きいかということについてお話を聞いた。




早生まれで選抜チームに選ばれた子どもは5%未満


――以前からスポーツ選手や子どもの生まれ月に関して色々と調査を行っているとうかがっております。今日はそれをテーマにお話をお聞かせください。
「生まれ月が子どもの競技能力にどれほど影響するかということはちょっとずつ世の中にも認知されてきたと思います。その学年で一番生年月日が早い、4月2日生まれに近い子ほど体力が高い傾向にあります。幼少期ほど生まれ月の影響は大きいのですが、それが大人になるまで長期的に影響することが一番大きな問題だと考えています」

――子どもの間だけでなく、大人になっても影響するということですか?
「そうです。これが一番大事なことです。体力は後から追いつくことは可能かもしれませんが、子どもの頃に受けた心への影響は残り続けます。まずはそのことを知ってもらいたいですね」

――小さい頃に劣等感を持ってしまうということですね。
「その劣等感に繋がる代表的なデータをいくつか紹介したいと思います。下記は、一般の小学生の野球選手と、ある大きな大会で選抜された小学生の野球選手で、投手と野手に分けて生まれ月を調査した結果です」

■一般小学生野球選手
【投手】(調査対象数:155人)
4~9月生まれ 59.4%
10~3月生まれ 40.6%

【野手】(調査対象数:351人)
4~9月生まれ 49.9%
10~3月生まれ 50.1%

■選抜小学生野球選手
【投手】(調査対象数:129人)
4~9月生まれ 86.0%
10~3月生まれ 14.0%

【野手】(対象数:60人)
4~9月生まれ 70.0%
10~3月生まれ 30.0%

「まず選抜されるかされないか、という点での生まれ月の影響、ポジションによる生まれ月の影響の二つを見たデータです。一般の小学生の場合は投手の方が前期(4~9月)生まれが20%くらい多いです。これが選抜された選手になると投手、野手とも前期生まれが目に見えて多くなる。特に投手は圧倒的ですよね。これを見るだけで、小学校の時点で後期生まれの子が選抜されることの難さが分かると思います。いわゆる『早生まれ』と言われる1~3月生まれは、選抜された選手のうち5%未満です。」

――非常に明らかで分かりやすいデータですね。
「これは全国的な大会の選抜チームを調査したものですが、市など地域単位の選抜でも恐らく同様の傾向は出ていると思います。これは選抜された子ども、されていない子どもについてですが、そういう分け方はせずに、単純に『試合によく出場する』『試合にあまり出場しない』かについて小学生の主観で行った調査もあります。それによると4~12月生まれの子どもはよく出場すると回答した子の方が多いのですが、1~3月生まれの子になるとあまり出場しないと回答する子が圧倒的に多くなります。選抜チームだけじゃなく、普通の小学生でも明らかにそういう差は出ていると思います。ちなみに中学生でも同じ傾向が見られます」

――このようなデータを見ると、小学校、中学校の年代では4月2日生まれに近い子どもを集めた方が圧倒的に勝ちやすいということになりますね。
「おっしゃる通り、その傾向は強いと思います。それも一つのやり方ですから否定はしませんが、そういう方針であるならばきちんと言ってほしいと思います。勝ちに行くから早く生まれた体の大きい子で戦います、そういう子を選びますと。賛同が得られるのであれば、それもやり方の一つですから。ただそのような方法は、選抜された選手とそうでない選手の野球競技力の格差を生む可能性があることも知っておいてもらいたいですね」

――中学校の段階でも入団テストを行っているような、いわゆる強豪チームもあると聞きます。
「全国大会があるわけですから、目の前の試合に勝ちたいと思う指導者、親子が集まるチームがあるのは仕方がないと思います。ただ、一方で、選抜されなかった子ども達を伸ばすようなチームも増えてもらいたいです。そうなることで野球をする選択肢や価値観の多様性が生まれてくると思います。柔道や格闘技は体重別に試合をします。身長が小さい子や成長が遅い子が多いなど、いろいろなチームや大会があってもいいはずです」

――最初のお話で子どもの心に影響が残るということでしたが、小学校の時に上手くいかなかった劣等感が悪い方向に働くことも多そうですね。
「その一番の原因は声のかけ方だと思います。例えば『早生まれだから仕方ないよ』と言うことで納得する子もいると思います。でも『仕方ない』と言われて、『どうしたらいいの?』と思う子もいるはずです。
最近イチロー選手が『他人とは比較できない』と言っていましたけど、子どもにとっては凄く刺さる言葉だと思います。他人と比べてどうか、ではなく、まず自分がどう成長したかに目を向けるよう促していく。それが大事ではないでしょうか」

(取材:西尾典文)

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