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生まれ月が早い子どもが得られる「有能感」と陥りやすいその後の「挫折感」

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スポーツ科学の分野で運動能力の発達やトレーニング、コーチングについて研究を行っている東京農業大学の勝亦陽一准教授。育成年代の普及活動にも積極的にかかわっており、昨年取材した早稲田大学野球部のOB会(稲門倶楽部)が運営する野球あそびイベント(Hello! WASEDA presents 安部球場「あそび場」開放)の発起人の一人でもある。
今回はそんな勝亦准教授に、生まれ月がどれだけ子ども達のプレー、成長に与える影響が大きいかということについてお話を聞いた。




――前回は「子どものうちは特に他人と比較するのではなく自分の成長に目を向けるべき」というお話でしたが、具体的にはどのようなことになるでしょうか?
「例えばこの春の時期だと体力測定がありますけど、その年の結果だけを見るのではなくて必ず去年の結果も見てもらいたいですね。去年と比べて上がっていたらまず素晴らしいことです。そうやって過去の自分と比較して、この後の未来をどうしたいか、そういうことを考える習慣をつけることが大事だと思います。これは小さい子どもでもできることですね」

――個人的な話で申し訳ないのですが、私の5歳の息子が今体操教室に行っていて、ノートに前週と比べて何がどうできたかみたいなことを書いているのですが、すごく楽しそうにやっています。他人と比べなくても、できなかったことができるようになるだけで十分楽しさは味わえると思いました。
「体操や水泳は他の陸上や球技と違って、その競技をやらないと体験しない動きが多いですよね。体育の授業でも必ずやりますから、その時にできるという有能感にも繋がりやすいです。あと水泳や陸上だと距離やタイムがあります。練習すればタイムが上がっていく。体操もできる技が増えていく。これは子どもにとって非常に分かりやすいです。そのような要素を野球にも入れていけばいいと思いますね」

――確かに野球では投げるのも打つのも相手がいるので、練習して上手くなっているかもしれないのに、相手がもっと上手くて打てなかったら有能感は得られないですね。
「特に子どもの頃は対戦相手の体が大きく体力的に勝っていたら敵いませんからね。ですから実戦のプレーだけじゃなくて、ボールが投げられる距離、置いてあるボールをどこまで遠くへ飛ばせるか、狙ったところに打てるか、塁間を何秒で走れるか、そういうことを定期的に測定して、子ども達の成長を記録として残していくといいと思います。野球は個人競技の要素も強いですから、そうすることで子ども達も成長の実感が得られるようになると思います。高校生くらいだとやっているところも多いですけど、難しいことではないので子どものうちからやるべきですね」

――ここまではどちらかというと後期生まれの子にスポットを当ててきましたが、逆に前期生まれの早熟と言われる子どもにも気をつけるべき点がありそうですね。
「中学生で全国大会に出場した投手をTOP球児として、それ以外の一般的な選手と比較すると、身長が伸びるピークの年齢が平均して1歳早いことが分かりました。中学生年代の1歳はものすごく大きいです。言ってみれば高校1年生と中学3年生が試合をしているようなものですよね。それくらいTOP球児は成長が進んでいるわけです」

――中学時代はトップだった子が、高校や大学ではそんなに伸びないというケースもよくありますね。
「大体この年代のトップの選手は小さい頃から体が大きい子がほとんどです。子どもの頃から負けなしの状態です。でも体格、体力はいずれ追いつかれます。それが大体高校生の時期です。そして最終的に逆転されることもあります。逆転される理由は色々あると思いますが、一つは同年代の中では体が大きいから技術的なことを考えなくても速いボールを投げられた、遠くへ飛ばすことができた、そうやって技術が疎かになっていたために逆転されることもあります。
もう一つは周りからの過度なプレッシャーもあります。期待されて入学してきたのに体の成長が止まってパフォーマンスの向上も停滞する。かたやその時期にグイグイ伸びてくる同級生もいるわけです。そうすると自分が努力しているのに伸びないという錯覚を覚えてしまいます。そういうギャップに苦しむケースもありますね」
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