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激しいスポーツは子どもの免疫を低下させる? 健康に気を付けているアスリートが風邪をひくワケ

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日本における栄養学の権威 丸元康生先生による、食と健康の特別授業。前回までは、まだあまり知られていないアスリートの「副腎の疲れ」について解説していただきました。

そして今回は、これからの季節は気になる「免疫」について話をうかがいました。

アスリートは健康だから病気にならない?


免疫には2つの意味があります。1つが「一度かかった病気には二度かかりにくい。かかかっても軽くて済む」という意味の免疫です。免疫ができているので、麻疹(はしか)にはかからないなど、過去に経験したことで身についた抵抗力を言います。専門用語で獲得免疫、適応免疫などと呼びます。
2つ目は「身体が備えている防御の仕組み」です。これをすべてまとめて免疫と言っています。今回はこちらの免疫について、話をしたいと思います。

アスリートの中に、新型コロナウイルス感染症にかかる人が続出しました。サッカー選手にも多数の感染者が出て、Jリーグの試合が中止になったことは記憶に新しいでしょう。そこで疑問が浮かびませんか?「アスリートは普段から運動をしていて健康なのに、なんで病気になるんだろう?」と。

一般の人よりアスリートは風邪をひくリスクが3倍


アスリートは体力があり、健康的なイメージがあるかと思いますが、実は一流のアスリートほど、風邪を始めとする「免疫が低下することでかかる病気」になりやすいのです。実際に、アスリートは一般の人よりも、風邪をひくリスクが3倍高いという調査結果があります。
これは身体の機能に原因があります。前回お話しましたが、人間は身体にストレスがかかると、生きるために必要な臓器や細胞に、優先的にエネルギーが送られる仕組みになっています。

太古の時代、人間は突発的に動物に襲われることがありました。生きるか死ぬかの局面で、脳を駆使して瞬時に判断し、戦うか、逃げるかを選択しなければいけません。その際、脳や肺、筋肉など、優先的に使う部分への栄養や酸素の供給を増やします。その分、優先順位の低い組織には、減らさないといけません。ここで供給を減らされてしまうのが、消化器と免疫なのです。

そのメカニズムは現代でも変わっていません。そのため、運動などで脳や身体にストレスがかかると、消化器や免疫にはエネルギーが行かず、結果として消化能力や免疫能力が落ちてしまうのです。

激しい運動で低下した免疫は2,3日続くことも


スポーツをしているときは、脳にも身体にも大きなストレスがかかっています。そのためハードな運動中には、ストレスホルモンが分泌されています。それによって免疫が弱くなり、風邪をひきやすくなってしまうのです。
ただし、まったく運動していない人よりは、適度に運動している人の方が、免疫の状態は良いです。しかしながら、スポーツを毎日頑張っている子どもたちのように、激しい運動をたくさんしている場合は、日々受けるストレスによって、免疫を抑制してしまうこともあります。

激しい運動によって低下してしまった免疫は、2、3日、弱い状態で継続してしまうことがあります。抵抗力が落ちて無防備な状態なので、風邪や感染症にかかりやすくなります。いわば、窓をあけっぱなしにして、外からウイルスを受け入れやすくしてしまっているようなものです。

唾液の中には、ウイルスや細菌を退治してくれるIgA抗体が含まれていますが、激しいトレーニングをしているアスリートの唾液中にはこの抗体が少ないことがわかりました。そこから、ウイルスが侵入しやすくなっていると考えられます。



免疫を高める代表的な栄養が「ビタミン」


では、どうすれば免疫を高めることができるのでしょうか? そのカギは休息と栄養です。休息はしっかりとした睡眠をとること。とくにお子さんは成長期なので、睡眠の重要性はみなさん理解されていると思います。
どの栄養素が免疫に良いのかというと、代表的なのがビタミンAです。ビタミンAは鼻や口、消化管などの中にある粘膜を作る栄養素です。粘膜は新しい細胞との入れ替わりが早く、細胞分裂を助けるビタミンAは欠かすことができません。

粘膜は粘着力があるので、ウイルスが入ってきたときに、くっついて捕獲してくれます。その隙に白血球などが集まって、退治してくれるわけです。人体のバリアになっているのが粘膜なので、感染症にかからないためにはとても重要なものなのです。

免疫力を高めるためには、ビタミンAを始めとする、ビタミンを摂取することが大切です。ビタミンCは白血球を元気づける働きを持っていますし、ビタミンD は全身の様々な組織に、幅広く影響を与えていることが明らかになっています。

ビタミンB群は、エネルギーを作るベースになる栄養素です。免疫細胞を新しく生産し、しっかり働かせるためには、十分なエネルギーを確保できているのが前提になります。さらに免疫に限らず、疲労回復にも効果があります。

ビタミンは単体ではなくセットで摂ることが重要


ビタミンはAだけ、Cだけと単体で摂取するよりも、A、C、D、B群を始め、マグネシウムや亜鉛、鉄分なども含まれている、マルチなサプリメントを摂るのが望ましいと思います。
もちろん、栄養バランスのとれた食事を3食摂るのが良いのですが、時間もかかりますし、準備するだけでも大変な手間です。それを補うために、サプリメントをうまく使うことをおすすめします。ちなみに私も、食事以外にサプリメントで栄養を補っています。

よく「1本に○○mgのビタミンが入っています」という飲料がありますが、砂糖が入っていたり、ビタミン含有量が少ない商品もあるので、しっかりデザインされたサプリメントとは別物と考えてください。

激しい運動をするお子さんが、健康状態を保ち、より良いパフォーマンスを引き出すためには、平均的な摂取量では足りない場合もあります。お子さんの体調と相談しながら、ちょうど良い量を探ってみてください。

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丸元康生
1958年生まれ。青山学院大学文学部日本文学科卒業。米国ワシントン州、イースタン・ワシントン大学卒業。栄養学、生化学を専攻。ホリスティックカレッジ・オブ・ジャパン講師。平田ホリスティック教育財団理事。著書に『スンナリ分かる栄養学ベーシック』、『ビタミンがスンナリわかる本』、『スンナリわかる脂肪の本』(主婦と生活社)、『豊かさの栄養学』シリーズ、訳書に『ジョナサン・ライト博士の新・栄養療法』(廣済堂出版)など。栄養学ジャーナリストとして世界最先端の米国栄養学を日本に伝えてきた先駆的存在。
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