第91回都市対抗野球決勝
○ Honda 4 - 1 NTT東日本 ●
HondaがNTT東日本を4-1で下し、11年ぶり3度目の黒獅子旗をつかみ取った。
決勝はともに3度目の優勝を目指す、関東同士の対決となった。Hondaが作新学院~法大を経て入社した1年目右腕の朝山、NTT東日本は天理高~立正大を経て入社6年目となる左の沼田が先発マウンドにあがった。
1回表、NTT東日本は先頭・向山の四球から送りバントと内野ゴロで2死三塁とチャンスを作ったものの、4番・火ノ浦が朝山のスプリットに手を出し、空振り三振。一方、1回裏、Hondaも1番・吉田が四球で出ると、マークされながらも二盗を決め、二死二塁から4番・佐藤竜彦が、沼田の高めに浮いた球を捉えて中前適時打。
準決勝・セガサミー戦では、延長10回タイブレークの末、決勝の満塁弾を放った佐藤。父は現役時代ダイエー・ヤクルトで活躍し、来季からヤクルトの2軍外野守備走塁コーチを務める佐藤真一氏。この決勝も父譲りの勝負強さを見せ、1-0とHondaが先制点を奪う。
しかし、NTT東日本もすぐさま反撃。2回表、先頭の5番・笹川が中前打で出ると、果敢に二盗を決め、一死二塁で7番・喜納が追い込まれながらも朝山の低めの球にうまく合わせて右前適時打を放ち、同点に追いつく。ニッポン放送ショウアップナイター解説の井端弘和氏が臨時コーチを務めるNTT東日本は今大会、打力中心の構成ながら、この回、機動力も発揮した攻撃を見せた。
その後は互いに譲らず、140キロ台前半のストレートとスプリットの落差で勝負する朝山と、左対左でも大胆にチェンジアップを使うなど、変化球を巧みに操る沼田。決勝の舞台は中盤にかけて鬼気迫る投手戦となった。
試合が再び動いたのは、5回裏。Hondaは、一死から1番・吉田が四球を選ぶと、2番・津田が外のボールに喰らいついて右打ちで繋ぎ、一死一・二塁。左打席には3番・井上。その初球だった。沼田が真ん中低めへ投じた113キロのチェンジアップを力強く振り抜くと、打球は高々と舞い上がり右翼席へ。井上は一塁を回って、ジャンプしながら雄叫びを上げる勝ち越しの3ランとなった。
3点のリードをもらったHondaの先発・朝山は、6回表に一死二・三塁のピンチを招くも、下川を外のスプリットで左飛、火ノ浦も右飛と、3、4番を打ち取って無失点に抑えると、7回表は先制打を許した喜納の内へ142キロのストレートを決めて見逃し三振を奪うなど三者凡退に。
勢いづいたHondaは、7回裏、NTT東日本の2番手・熊谷を攻め、一死二塁から3番・井上が粘って四球を選び、4番・佐藤が左安打で繋いで1死満塁のチャンス。しかし、代わった3番手右腕・堀の前に5番・辻野が投ゴロ、代打の北岡も遊ゴロと、追加点は奪えず。
それでも、この日の朝山にとってみれば、3点のリードは十分な援護だった。8回を投げて111球、NTT東日本打線をわずか3安打1点に抑え、7三振を奪う力投。9回表はキャプテン・福島がマウンドに上がり、ラストは空振り三振を奪って振り切り、両手を挙げてガッツポーズを決めた。
▼ Honda・開田成幸監督
「新人監督ということで至らないところは多々あったかと思うが、そんな中、選手がしっかりついてきてくれたことが、きょうに繋がった。(特別な年の今大会)こういう環境でも野球ができる喜びに日々感謝しながら、ということは選手に話してきた。(中2日で投げた先発・朝山は)あそこまで投げてくれるとは、正直思わなかった。(決勝本塁打の井上については)特に私の方から指示はしていないが、井上本人が自分で考えて行動できる選手。きのう、普段通りやっていこう、という話はしていた。(ことしのチームは)打つだけでなく、『打線』という点と点を線で『繋ぐ野球』を実践してきた」。
▼ 橋戸賞(最優秀選手賞) Honda・井上彰吾外野手
「(優勝の瞬間)8年間ぜんぜん勝てなくて、自分がいるから弱いんじゃないかと…。社会人生活の8年間の思いが走馬灯のように流れて、泣いちゃいました。(現広島・長野久義と同じチームで社会人頂点に立った)僕が大学1年のときに長野さんを中心に優勝したのを見て、Hondaに憧れていた。同じ経験ができて嬉しい。(決勝本塁打は初球のチェンジアップを狙って打ったが)変化球で入ってくるだろうな、というのは自分の中で思っていた。そこまで2つの打席はスライダー、カーブで入ってきていたのと、左打者がチェンジアップでやられていたので、1球取りにくるんじゃないかというところで狙っていた」。
▼ 若獅子賞(新人賞) Honda・朝山広憲投手
「正直、自分でもびっくりしている。結果、8回をなげることができたが、後ろにいい投手がたくさんいたので、先発投手として試合をつくる、繋ぐ、ということを意識でいった結果、いいピッチングができて良かった。1回戦で不甲斐ないピッチングをしてしまって、その後、練習の時にキャプテンの福島さんに『大きく変えるとかではなく、今まで都市対抗へ向けてやってきたことがある、それを東京ドームのマウンドでやるということだから、それを思い出してやれ』という言葉をいただいて、見つめ直してやった結果、良くなった。今までやってきたことは無駄じゃないという自信があったので、見直して堂々と投げることができた。(これから目指すのは)Hondaのエースといったら朝山、と言ってもらえるような活躍と結果を出していかないと。来年、また自分はドラフトが解禁になるので、NPBに行けるように来年も結果を出し続けていきたい」。
▼ 首位打者賞 Honda・佐藤竜彦外野手(5試合 20打数10安打/打率.500)
「まさか自分が首位打者賞をいただけるとは思っていなかったので嬉しく思う。(優勝できたチームの強さについて)ことしはチームとして隙のない野球、というのをずっと言ってきて、練習の時から隙がなく、隙がなく、とやってきた。熱くなりすぎず、冷静に、という感じ。(現在26歳、父・真一氏は27歳でプロへ)チャンスがあれば行きたい、と思っている」。
▼ NTT東日本・飯塚智広監督
「悔しいのはもちろんだが、選手に勝たせてあげられなかったなぁ、と。私たちはやることはしてきたし、調子も悪くなかったが、バッテリーを含めたチームにやられた。自分たちの攻撃よりも相手バッテリーの方に上回られた。(Hondaの朝山は)びっくりするようなボールは正直なかったが、四球を出さないし、カウントが不利になることもなかった。決勝の舞台で新人選手がこれだけ投げられる。ハートの強さを感じた」。
(取材・ニッポン放送アナウンサー洗川雄司)
○ Honda 4 - 1 NTT東日本 ●
HondaがNTT東日本を4-1で下し、11年ぶり3度目の黒獅子旗をつかみ取った。
決勝はともに3度目の優勝を目指す、関東同士の対決となった。Hondaが作新学院~法大を経て入社した1年目右腕の朝山、NTT東日本は天理高~立正大を経て入社6年目となる左の沼田が先発マウンドにあがった。
1回表、NTT東日本は先頭・向山の四球から送りバントと内野ゴロで2死三塁とチャンスを作ったものの、4番・火ノ浦が朝山のスプリットに手を出し、空振り三振。一方、1回裏、Hondaも1番・吉田が四球で出ると、マークされながらも二盗を決め、二死二塁から4番・佐藤竜彦が、沼田の高めに浮いた球を捉えて中前適時打。
準決勝・セガサミー戦では、延長10回タイブレークの末、決勝の満塁弾を放った佐藤。父は現役時代ダイエー・ヤクルトで活躍し、来季からヤクルトの2軍外野守備走塁コーチを務める佐藤真一氏。この決勝も父譲りの勝負強さを見せ、1-0とHondaが先制点を奪う。
しかし、NTT東日本もすぐさま反撃。2回表、先頭の5番・笹川が中前打で出ると、果敢に二盗を決め、一死二塁で7番・喜納が追い込まれながらも朝山の低めの球にうまく合わせて右前適時打を放ち、同点に追いつく。ニッポン放送ショウアップナイター解説の井端弘和氏が臨時コーチを務めるNTT東日本は今大会、打力中心の構成ながら、この回、機動力も発揮した攻撃を見せた。
その後は互いに譲らず、140キロ台前半のストレートとスプリットの落差で勝負する朝山と、左対左でも大胆にチェンジアップを使うなど、変化球を巧みに操る沼田。決勝の舞台は中盤にかけて鬼気迫る投手戦となった。
試合が再び動いたのは、5回裏。Hondaは、一死から1番・吉田が四球を選ぶと、2番・津田が外のボールに喰らいついて右打ちで繋ぎ、一死一・二塁。左打席には3番・井上。その初球だった。沼田が真ん中低めへ投じた113キロのチェンジアップを力強く振り抜くと、打球は高々と舞い上がり右翼席へ。井上は一塁を回って、ジャンプしながら雄叫びを上げる勝ち越しの3ランとなった。
3点のリードをもらったHondaの先発・朝山は、6回表に一死二・三塁のピンチを招くも、下川を外のスプリットで左飛、火ノ浦も右飛と、3、4番を打ち取って無失点に抑えると、7回表は先制打を許した喜納の内へ142キロのストレートを決めて見逃し三振を奪うなど三者凡退に。
勢いづいたHondaは、7回裏、NTT東日本の2番手・熊谷を攻め、一死二塁から3番・井上が粘って四球を選び、4番・佐藤が左安打で繋いで1死満塁のチャンス。しかし、代わった3番手右腕・堀の前に5番・辻野が投ゴロ、代打の北岡も遊ゴロと、追加点は奪えず。
それでも、この日の朝山にとってみれば、3点のリードは十分な援護だった。8回を投げて111球、NTT東日本打線をわずか3安打1点に抑え、7三振を奪う力投。9回表はキャプテン・福島がマウンドに上がり、ラストは空振り三振を奪って振り切り、両手を挙げてガッツポーズを決めた。
▼ Honda・開田成幸監督
「新人監督ということで至らないところは多々あったかと思うが、そんな中、選手がしっかりついてきてくれたことが、きょうに繋がった。(特別な年の今大会)こういう環境でも野球ができる喜びに日々感謝しながら、ということは選手に話してきた。(中2日で投げた先発・朝山は)あそこまで投げてくれるとは、正直思わなかった。(決勝本塁打の井上については)特に私の方から指示はしていないが、井上本人が自分で考えて行動できる選手。きのう、普段通りやっていこう、という話はしていた。(ことしのチームは)打つだけでなく、『打線』という点と点を線で『繋ぐ野球』を実践してきた」。
▼ 橋戸賞(最優秀選手賞) Honda・井上彰吾外野手
「(優勝の瞬間)8年間ぜんぜん勝てなくて、自分がいるから弱いんじゃないかと…。社会人生活の8年間の思いが走馬灯のように流れて、泣いちゃいました。(現広島・長野久義と同じチームで社会人頂点に立った)僕が大学1年のときに長野さんを中心に優勝したのを見て、Hondaに憧れていた。同じ経験ができて嬉しい。(決勝本塁打は初球のチェンジアップを狙って打ったが)変化球で入ってくるだろうな、というのは自分の中で思っていた。そこまで2つの打席はスライダー、カーブで入ってきていたのと、左打者がチェンジアップでやられていたので、1球取りにくるんじゃないかというところで狙っていた」。
▼ 若獅子賞(新人賞) Honda・朝山広憲投手
「正直、自分でもびっくりしている。結果、8回をなげることができたが、後ろにいい投手がたくさんいたので、先発投手として試合をつくる、繋ぐ、ということを意識でいった結果、いいピッチングができて良かった。1回戦で不甲斐ないピッチングをしてしまって、その後、練習の時にキャプテンの福島さんに『大きく変えるとかではなく、今まで都市対抗へ向けてやってきたことがある、それを東京ドームのマウンドでやるということだから、それを思い出してやれ』という言葉をいただいて、見つめ直してやった結果、良くなった。今までやってきたことは無駄じゃないという自信があったので、見直して堂々と投げることができた。(これから目指すのは)Hondaのエースといったら朝山、と言ってもらえるような活躍と結果を出していかないと。来年、また自分はドラフトが解禁になるので、NPBに行けるように来年も結果を出し続けていきたい」。
▼ 首位打者賞 Honda・佐藤竜彦外野手(5試合 20打数10安打/打率.500)
「まさか自分が首位打者賞をいただけるとは思っていなかったので嬉しく思う。(優勝できたチームの強さについて)ことしはチームとして隙のない野球、というのをずっと言ってきて、練習の時から隙がなく、隙がなく、とやってきた。熱くなりすぎず、冷静に、という感じ。(現在26歳、父・真一氏は27歳でプロへ)チャンスがあれば行きたい、と思っている」。
▼ NTT東日本・飯塚智広監督
「悔しいのはもちろんだが、選手に勝たせてあげられなかったなぁ、と。私たちはやることはしてきたし、調子も悪くなかったが、バッテリーを含めたチームにやられた。自分たちの攻撃よりも相手バッテリーの方に上回られた。(Hondaの朝山は)びっくりするようなボールは正直なかったが、四球を出さないし、カウントが不利になることもなかった。決勝の舞台で新人選手がこれだけ投げられる。ハートの強さを感じた」。
(取材・ニッポン放送アナウンサー洗川雄司)