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無観客のキャンプ地とファンをつなぐオリックスのファンサービス

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ブルペンで投手の後方からレンズを向ける仁藤さん<撮影=北野正樹>

選手の笑顔の裏には?1


 コロナ禍を受け、プロ野球史上初めて無観客で行われている今年の春季キャンプ。各球団は、キャンプの様子をテレビや新聞などのメディアを通じて発信する一方、公式Twitter(ツイッター)やInstagram(インスタグラム)、YouTube(ユーチューブ)などのツールを活用して現地の様子をファンに伝えようと、これまで以上に力を入れている。

 今回とりあげたいのは、オリックスのキャンプ地とファンをつなぐファンサービスだ。ファンにとって春季キャンプは、チームの新たなスタートを見ることが出来るほか、握手やサインなどで選手と最も近い距離で触れ合うことができる場所。昨年の春季キャンプもコロナ禍で握手やサインは制限されたが、見学は可能で現地限定のグッズなども買い求めることができた。

 無観客が決まり、オリックスが目指したのは「ファンの方とキャンプ地にいる選手の〝接点〟を少しでも増やそう」(後藤俊一・事業企画部長)ということだった。

 手段は、球団公式のツイッターやインスタグラム、ユーチューブの活用。しかし、コロナ禍ということもありキャンプ地・宮崎へ多くの人員を投入するわけにもいかないため、常にチームに帯同している事業企画部宣伝グループの仁藤拓馬さんが一手に担っている。

 まず練習日の午前10時頃、ツイッターにアップされるのが「Bsジャンケン」だ。選手がカメラに向かって「勝って素敵な1日を」と語りかけ、画面を通してファンとじゃんけんをして、「今日も頑張っていきましょう」で締める。約15秒の動画だが、一日を占うコーナーとして親しまれている。


 ファンの関心が高いのは、インスタグラムの「今日の由伸」と「泰ちゃんの今日の一言」。毎日、山本由伸、山岡泰輔の両エースが登場する。真面目にカメラに向かって語りかけ、最後に2人が見せる素顔に「いい表情」「今日も癒されます」とファンからも好評。これには、仁藤さんの秘策がある。

 マスク着用で撮影を続け、収録終了直前にマスクをずらす。そこには、ひげを描いたり、今季のチームのキャッチフレーズである「ガッチリMAX」と書かれたシールを鼻の下に張っていたりする、イケメンの仁藤さんの「変顔」が現れる仕組み。ファンにはその顔は配信していないが、収録直後の2人の笑顔を引き出す工夫がある。


 練習風景の撮影にも、こだわりがある。例えば、吉田正尚選手のロングティー。後方からギリギリまで近づいてカメラを置き、下から見上げたアングルを狙う。「ファンの方がテレビなどを通して見るのは、前や横から。普段、見ることが出来ない映像をお見せするように意識している」という。

 さらに「高校球児らに、吉田正選手のバットの軌道なども参考にしてほしい」とも。仁藤さんは広報部を経て宣伝グループに所属して3年目だが、2007年に静岡・島田商から投手として高校生ドラフト4位でオリックス入りした元プロ選手。ファン獲得だけでなく、映像を通して球界の発展も願っている。

 ファンサービスはSNSだけにはとどまらない。オンラインショップなどで1回、3000円以上の購入者には、球団オフィシャルカメラマンが撮影したキャンプの練習風景や、練習の合間に見せる選手のオフショットの写真をプリントアウトしてプレゼント。「商品の割引やポイント増などのファンサービスも考えたが、キャンプで選手の写真を撮っているファンが多いことから、今年はナマの写真をプリントアウトすることで、キャンプ地の雰囲気を味わってもらおうと思った」と、グッズ関連を扱う森川匡・MDグループ長は語る。

 「無観客」だからこそ、これまで以上にファンと選手や球団を結びつけるための創意工夫が随所にあり、決して表に出ることのないスタッフたちの試行錯誤は今後も続いていく。


文・写真=北野正樹(きたの・まさき)
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