話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は大卒初の20年連続勝利を挙げたヤクルトの石川雅規投手と、大卒史上最遅となる通算100号本塁打を放った亀井善行選手、2人のベテランにまつわるエピソードを取り上げる。
若手の活躍が光る今年(2021年)のプロ野球。そんななか、2人の「大卒ベテラン選手」が立て続けに金字塔を打ち立てました。
まずは、ヤクルト一筋20年目、石川雅規投手(41)です。6月4日、本拠地・神宮球場での西武戦に先発すると、130キロ台前半の直球と多彩な変化球を織り交ぜ、5回3安打1失点の好投。5回裏のヤクルト攻撃中に降雨による中断を挟み、そのまま雨天コールドゲームとなって、通算174勝目を手にしました。
この勝利で、石川投手はプロ1年目からの「20年連続勝利」を達成。セ・リーグでは400勝投手である金田正一さんに次いで2人目の快挙であり、大卒投手の20年連続勝利は、巨人や西武で活躍した鹿取義隆さんの19年を抜き、史上初の大偉業でした。それだけに、試合後は価値ある勝利の重みについて、次のように語っています。
そして、もう1人は巨人一筋17年目、亀井善行選手(38)です。6月5日、本拠地・東京ドームでの日本ハム戦に「6番右翼」で4月20日以来となるスタメン出場を果たすと、9回の打席でバット一閃。プロ通算100号本塁打を放ったのです。
亀井選手と言えば、今季開幕戦で史上初の「開幕戦代打サヨナラ弾」を決め、100号へ王手。あの日以来となる一発でのメモリアル100号と、今年は劇的な本塁打続きです。
38歳10ヵ月での100号到達は歴代年長4位タイ。球団の生え抜き選手では末次利光さんの34歳1ヵ月を45年ぶりに更新する年長記録で、プロ17年目での到達は大卒選手では史上最遅と、苦労人・亀井選手らしい金字塔に。コメントにも、その苦労ぶりが滲んでいました。
ともに「大卒歴代1位」を成し遂げた2人。その偉業達成までは、両者ともにベテランと言えども大いに悩み、打開策を模索し続けた日々がありました。その1つは、昨年(2020年)の屈辱を受けて取り組んだ肉体改造です。
石川投手の場合、昨季は史上5人目となる「40代での開幕投手」を務めたものの、終わってみれば自己ワーストの2勝(8敗)。チームも2年連続で最下位に沈みました。
40歳という年齢を考えれば、引退を考えても不思議ではありません。それでも石川投手は、目標とする「200勝」のため、もう一度体をいじめ抜くことを決意します。
一方の亀井選手。2020年は開幕早々に球団最年長となる37歳11ヵ月での通算1000本安打を達成。幸先のいいスタートを切りましたが、9月下旬に足のケガで戦列を離脱。日本シリーズには何とか間に合ったものの、試合勘を取り戻せなかったのか、シリーズ4試合で9打数ノーヒット。第4戦では最後の打者として凡退し、文字通り目の前で、ホークスに4連勝での日本一を許してしまいます。
この屈辱の経験を経て、今年の自主トレでは、これまでやって来なかったウエイトトレーニングを導入。年齢に抗うようにさらなるパワーアップを目指したのです。
こうして2021年シーズンを迎えたものの、石川投手は開幕ローテ入りを逃して2軍スタート。4月16日の阪神戦で昇格し、5回2失点と好投も黒星を喫すると、その後は2軍暮らしが続きました。
41歳の大ベテランが、若手と一緒に汗を流す……そんな状況でも腐ることなく、2軍では7試合で防御率0・32と結果を残し、今回の1軍昇格、今季初勝利につなげたのです。
一方の亀井選手は、開幕戦での劇的サヨナラ弾のあとは快音が聞かれず。打率は1割台にまで低迷してしまいます。
そんな亀井選手が活路を求めたのは、2軍戦で汗を流すことでした。6月2日、3日には志願して鎌ケ谷で行われた2軍の日本ハム戦に先発出場したあと、東京ドームでの西武戦にも代打出場。こうしたベテランらしからぬ泥臭さを買って、原監督も35試合ぶりにスタメン出場を任せ、ついに飛び出したのが100号だったのです。
原監督の言葉にもあるように、こうしたベテランの奮闘する姿は若手選手にも大きな影響を与えます。セ・リーグの2位3位につけて首位阪神を追撃する立場の両球団にとって、2人のベテランの活躍は何よりのカンフル剤のはずです。
悔やまれるのは、ともに本拠地での偉業達成だったにもかかわらず、ファンの前でのヒーローインタビューがなかったこと。石川投手の場合、雨天コールドゲームだったため、勝利投手にもかかわらずヒーローインタビューは見送りに。一方の亀井選手は負け試合だったため、これまたヒーローインタビューはお預けに。だからこそ、近い将来、またこの両ベテランがファンの前で躍動する姿を期待したくなります。
勢いで攻めて来た若手にも疲れが出始めるころ。ベテランが頼りになる夏がもうすぐやって来ます。
若手の活躍が光る今年(2021年)のプロ野球。そんななか、2人の「大卒ベテラン選手」が立て続けに金字塔を打ち立てました。
まずは、ヤクルト一筋20年目、石川雅規投手(41)です。6月4日、本拠地・神宮球場での西武戦に先発すると、130キロ台前半の直球と多彩な変化球を織り交ぜ、5回3安打1失点の好投。5回裏のヤクルト攻撃中に降雨による中断を挟み、そのまま雨天コールドゲームとなって、通算174勝目を手にしました。
この勝利で、石川投手はプロ1年目からの「20年連続勝利」を達成。セ・リーグでは400勝投手である金田正一さんに次いで2人目の快挙であり、大卒投手の20年連続勝利は、巨人や西武で活躍した鹿取義隆さんの19年を抜き、史上初の大偉業でした。それだけに、試合後は価値ある勝利の重みについて、次のように語っています。
『今日の1勝というのは一番思いがある1勝なのかな』
~『日刊スポーツ』2021年6月4日配信記事 より(石川投手コメント)
そして、もう1人は巨人一筋17年目、亀井善行選手(38)です。6月5日、本拠地・東京ドームでの日本ハム戦に「6番右翼」で4月20日以来となるスタメン出場を果たすと、9回の打席でバット一閃。プロ通算100号本塁打を放ったのです。
亀井選手と言えば、今季開幕戦で史上初の「開幕戦代打サヨナラ弾」を決め、100号へ王手。あの日以来となる一発でのメモリアル100号と、今年は劇的な本塁打続きです。
38歳10ヵ月での100号到達は歴代年長4位タイ。球団の生え抜き選手では末次利光さんの34歳1ヵ月を45年ぶりに更新する年長記録で、プロ17年目での到達は大卒選手では史上最遅と、苦労人・亀井選手らしい金字塔に。コメントにも、その苦労ぶりが滲んでいました。
『節目という点では時間はかかりましたが打つことができて良かった。これをきっかけにチームに貢献できるように、打撃の状態を上げていきたいです』
~『日刊スポーツ』2021年6月5日配信記事 より(亀井選手コメント)
ともに「大卒歴代1位」を成し遂げた2人。その偉業達成までは、両者ともにベテランと言えども大いに悩み、打開策を模索し続けた日々がありました。その1つは、昨年(2020年)の屈辱を受けて取り組んだ肉体改造です。
石川投手の場合、昨季は史上5人目となる「40代での開幕投手」を務めたものの、終わってみれば自己ワーストの2勝(8敗)。チームも2年連続で最下位に沈みました。
40歳という年齢を考えれば、引退を考えても不思議ではありません。それでも石川投手は、目標とする「200勝」のため、もう一度体をいじめ抜くことを決意します。
『今オフから新たに自重トレーニングを取り入れる。今季は上半身のコンディション不良のため約1カ月間、1軍を離れ「自分の体を自分で操れないといけない」と決意した。五十嵐、広島石原慶ら今季で引退した同世代の選手もおり「寂しいけど、何とか1年でも長くやりたい。もっともっと粘ってやろうと思います」と力強く話した』
~『日刊スポーツ』2020年11月24日配信記事 より
一方の亀井選手。2020年は開幕早々に球団最年長となる37歳11ヵ月での通算1000本安打を達成。幸先のいいスタートを切りましたが、9月下旬に足のケガで戦列を離脱。日本シリーズには何とか間に合ったものの、試合勘を取り戻せなかったのか、シリーズ4試合で9打数ノーヒット。第4戦では最後の打者として凡退し、文字通り目の前で、ホークスに4連勝での日本一を許してしまいます。
この屈辱の経験を経て、今年の自主トレでは、これまでやって来なかったウエイトトレーニングを導入。年齢に抗うようにさらなるパワーアップを目指したのです。
『7月で39歳になる野手最年長は「困った時に『亀井がいる』と言っていただける方が僕はうれしい」と日本一のピースになるために、“何でも屋”に徹することを決意。「ここで、一発、ホームランが欲しい時に代打でいっても、筋力があればなおさらいい。そういう力も、蓄えておかないと」とパワーアップに励む』
~『スポーツ報知』2021年2月14日配信記事 より
こうして2021年シーズンを迎えたものの、石川投手は開幕ローテ入りを逃して2軍スタート。4月16日の阪神戦で昇格し、5回2失点と好投も黒星を喫すると、その後は2軍暮らしが続きました。
41歳の大ベテランが、若手と一緒に汗を流す……そんな状況でも腐ることなく、2軍では7試合で防御率0・32と結果を残し、今回の1軍昇格、今季初勝利につなげたのです。
『ユニホームを着て野球ができる幸せを年々感じている。コロナ禍でやらせてもらえるのはありがたいこと。やりたいからやれる世界ではない。結果を出さないと。何とかしがみついていきたい』
~『スポーツ報知』2021年6月5日配信記事 より(石川投手のコメント)
一方の亀井選手は、開幕戦での劇的サヨナラ弾のあとは快音が聞かれず。打率は1割台にまで低迷してしまいます。
そんな亀井選手が活路を求めたのは、2軍戦で汗を流すことでした。6月2日、3日には志願して鎌ケ谷で行われた2軍の日本ハム戦に先発出場したあと、東京ドームでの西武戦にも代打出場。こうしたベテランらしからぬ泥臭さを買って、原監督も35試合ぶりにスタメン出場を任せ、ついに飛び出したのが100号だったのです。
『あれくらいの選手になるとね、こっちから『行きなさい』ということは100%なくてね。本人が希望の中で『行かせてくれ』というところからスタートしていることでね。その辺もやっぱり、あらゆるアスリートはお手本になるケースだと思いますね』
~『サンケイスポーツ』2021年6月5日配信記事 より(原監督のコメント)
原監督の言葉にもあるように、こうしたベテランの奮闘する姿は若手選手にも大きな影響を与えます。セ・リーグの2位3位につけて首位阪神を追撃する立場の両球団にとって、2人のベテランの活躍は何よりのカンフル剤のはずです。
悔やまれるのは、ともに本拠地での偉業達成だったにもかかわらず、ファンの前でのヒーローインタビューがなかったこと。石川投手の場合、雨天コールドゲームだったため、勝利投手にもかかわらずヒーローインタビューは見送りに。一方の亀井選手は負け試合だったため、これまたヒーローインタビューはお預けに。だからこそ、近い将来、またこの両ベテランがファンの前で躍動する姿を期待したくなります。
勢いで攻めて来た若手にも疲れが出始めるころ。ベテランが頼りになる夏がもうすぐやって来ます。