ニュース 2021.07.22. 11:04

オリックスの躍進を支えた左腕・富山凌雅が新守護神に名乗り

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オリックス・富山凌雅投手<写真=北野正樹>

貴重な中継ぎ左腕の台頭

 25年ぶりのリーグ優勝を目指すオリックスで、3年目の左腕・富山凌雅(24)が新守護神に名乗りをあげた。打者の内角を突く強気の投球と、「調子が悪くても良いと思い込む」という自己暗示で、5月下旬から13試合で1失点と好投を続けている。

 富山は、和歌山県御坊市出身。地元の中学から九州国際大付属高に進学し、2,3年の夏の甲子園にエースとして連続出場。2015年は準々決勝で、清宮幸太郎のいた早稲田実に敗れたものの、ベスト8に導いた。ドラフト指名からは漏れ、社会人のトヨタ自動車に入社。内角を攻める強気の投球が身上で、17年の日本選手権では2試合に先発し、優勝に貢献。19年にドラフト4位でオリックスに入団した。

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 公式戦登板は1年目に1試合、2年目の昨季は18試合に登板し、18回1/3を被安打14、15奪三振の防御率4.42という成績。好不調の波が激しく、安定感にかける内容だった。そんな自身の投球を「目いっぱい、投げることしか頭になかった。調子の悪い時に、いい方向に持っていこうとして、逆に悪くなってしまっていた」と振り返る。

 3年目の今季は、オープン戦6試合に中継ぎで登板。3月19日の阪神戦(京セラドーム大阪)では二死一、二塁から大山に適時二塁打を許し、初めて失点を喫したが、次打者のドラフト1位ルーキーの佐藤輝明(近大)をストレート中心に攻め、真ん中高め目142キロの直球で空振り三振に仕留めた。

 昨季、左の中継ぎで1年を通して活躍できたのは山田修義だけ。そういった状況の中で、オープン戦での6イニングを被安打4の7奪三振、自責点1、防御率1.50と奮投。今年は阪神から能見篤史投手兼任コーチが加入したが、貴重な左の中継ぎとして、初の開幕一軍入りを果たした。

志願し続けた役回り

 今季は前半戦で31試合に登板。28回2/3で、被安打21の25奪三振、12与四球、防御率3.14という成績だ。

 4月25日の日本ハム戦(札幌ドーム)では、4-3の8回から登板し、1番・郡拓也、2番・渡邉諒、3番・西川遥輝を3者連続三振に仕留めるなど、安定した投球を披露。勝ち投手の権利を持って降板後、守りのミスなどで勝ち星が消える不運もあったが、5月30日の交流戦、ヤクルト戦で初勝利を挙げるなど、ここまで2勝、13ホールドをマークしている。

 また、6月12日の広島戦(京セラドーム大阪)では、3-1の6回無死満塁から登板し、6番・坂倉将吾を二ゴロ併殺、続く堂林翔太には内角を突く強気の投球を見せた後、外角へのフォークボールで二ゴロに仕留めるなど、絶体絶命のピンチを最少失点で切り抜け、交流戦優勝に貢献した。

 前半戦終了間際には抑えに抜擢され、7月8日の楽天戦(楽天生命)、13日の日本ハム戦(釧路)では、9回に登板し、いずれも無失点で試合を締めている。

 憧れの存在が、“火の玉ストレート”の元阪神・藤川球児。プロ入り時の目標が「ストレートで三振がとれる選手」で、元々が抑え志望。「中継ぎをしていると、抑えは特別な存在。プレッシャーがかかる大変な役目だが、抑えがいなければ試合を締めることが出来ない。平野さんがベンチから外れる時には、抑えをやらせてくださいと言ってきた」と、志願し続けた。

 オリックスでは今季、かつての守護神・平野佳寿が4年ぶりにMLBから復帰。しかし、首痛で戦列を離脱後、K-鈴木や漆原太晟、ヒギンスらがストッパーを務めたが、終盤に逆転負けを許すことも多く、中嶋聡監督が「9回に上がるのが嫌になっているのか。誰かが殻を破らなければいけない。いつまでも(抑えが)いないのでは困る」と嘆くほど。平野が復帰後も、連投した後はベンチ入りを外す投手起用のため、暫定的な抑え確保が急務で、富山に白羽の矢が立った。

 高山郁夫投手コーチは「抑えは、技術はもちろんだが、打者に向かっていくというハートが一番大事。現状では、9回は平野に頼っているが、『若い選手が、平野から奪うつもりで臨んでほしい』と監督が言うように、若い選手が出てきてほしい」と、富山の志願を歓迎している。

経験から得た対処法

 富山は、5月23日のソフトバンク戦(PayPayドーム)での2失点後、13試合で自責点1、防御率0.71と好投を続けている。その安定した投球を支えているのが、自己暗示だ。「調子が悪い時でも、頭の中で『調子は良い』と思い込むようにしている」という。

  本人曰く、「ブルペンで肩を作っていて、頭の中で『調子が悪いな』と思ってしまうと、体まで本当に調子が悪くなってしまう。『今日は悪い』と思うのが一番良くない。悪くても『今日は良い』と、頭に思い込ませるようにしている」とのこと。「ダメだと思うと、力みが出て余計にダメになってしまった」という経験から学んだ対処法だ。

 先頭打者を出すことが多い富山だったが、自己暗示をかけることで、走者を背負っても冷静な投球が出来るようになった。「一流の投手は、調子が悪い時にどうするかが上手」と、その階段をひとつずつ昇っている実感がある。

 残り56試合。「登板を指示されると、『よし、任せろ』という気持ちになる」心強い左腕は、自身が優勝へのカギを握る存在になるつもりだ。

取材・文=北野正樹(きたの・まさき)

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