

2年前の言葉を振り返る
25年ぶりにリーグ優勝を果たしたオリックス。ヤクルトとの『SMBC日本シリーズ2021』初戦(京セラドーム大阪)でサヨナラ打を放った主砲・吉田正尚が、ヒーローインタビューで「(25年も)待たせ過ぎですもんね。大丈夫、こっからいきます」と笑顔で詫びた場面で、溜飲を下げたファンは多かったことだろう。
2年前、同じグラウンドで「これからオリックスは絶対に強くなります」と、チームの復活を予言した選手がいた。
岸田護。最終戦となった9月29日のソフトバンク戦で引退試合を行った右腕だ。岸田は試合後のセレモニーで、「これからオリックスは強くなります。長い長いトンネルを抜け、オリックスは絶対に強くなります」とファンに誓った。
それから2年後、岸田の言葉通り、チームは長いトンネルを抜け出し、2年連続最下位から優勝を果たして復活を遂げた。
当時の言葉について、岸田は「若い、いい選手が多いので、やってくれるのではと思っていた」と振り返り、山岡泰輔や山本由伸らの台頭で、若返りを図りつつあったチームに大きな変化が起きる予感があったという。
岸田は、履正社高-東北福祉大-NTT西日本を経て、2006年、ドラフト3位でオリックス入り。09年に10勝を挙げた後、救援に転向し、11年には33セーブを挙げ、14年の2位にも貢献した。14年は、優勝を逃したソフトバンク戦にも登板しており、「悔いより、ただ悔しかったという思いだけ」と振り返る。
さらなる後進の育成に期待
引退後は20年から二軍投手コーチを務め、若い投手の指導にあたる。今季は、13勝(4敗)を挙げて優勝に貢献した高卒2年目の宮城大弥や、育成選手から支配下選手になり今季、終盤戦で初勝利を含む2勝(2敗)で先発陣に食い込んだ高卒5年目の山﨑颯一郎らを一軍に送り込んできた。
「立場は変わっても、一緒にやっていた選手たちが活躍する姿を見るのがうれしい」と岸田。現役時代の終盤は、「俺を、優勝させてから辞めさせてくれ」と、選手たちに言い続けてきただけに、後輩たちが自分たちの果たせなかった優勝を成し遂げてくれたことがうれしくてたまらない。さらに、コーチとして携わった若い投手たちがそれをやってのけてくれたのだから、喜びもひとしおだ。
「僕はなにもやっていないです。選手が頑張っただけ。元々、能力のあった選手たちが勉強をして、しっかりと練習をして、少ないチャンスを自分でつかみ取った。それはすごいこと。見ていて、カッコいいなと。チャンスは自分でつかむものですから」と、選手たちの取り組みを評価する。
「それにしても、こんなに早く優勝してくれるとは。うれしい誤算ですね」と岸田。今季、一軍昇格はなかったものの大型右腕と期待される山下舜平大や、1試合に登板した下手投げの中川颯ら、次世代を担う投手も多い。常勝チームを作るため、岸田の仕事からも目が離せない。
文・写真=北野正樹(きたの・まさき)