話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、6月29日に24歳の誕生日を迎えた、読売ジャイアンツ・大勢投手にまつわるエピソードを紹介する。
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原監督から「疲労困憊」と指摘され、誕生日を前に一時ベンチ入りメンバーからの離脱を経験した大勢。今季はここまでリーグ3位タイの14セーブ。6月13日には球団史上最速で節目の通算50セーブに到達するなどキャリアをしっかり重ねている一方で、さまざまな面でもがいているのも現状だ。
WBC出場の疲れや出遅れも影響してか、今季は黒星こそまだないものの、救援失敗は既に3度。交流戦では危険球退場もあった。だからこそ、原監督も1度リセットするよう指示をしたのかも知れない。
そんな状況を打破しようと、大勢自身も積極的に「変化」を目指している。
入団以来こだわりとしていた、左足を上げたときに軸足のかかとも上げる「ヒールアップ」投法を6月10日のソフトバンク戦から封印したのだ。大勢の持ち味と言える「シュート回転のストレート」の質が落ちていると判断したためだという。
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実際、ヒールアップを封印してからフォークボールの落ち方が安定。また、動きがシンプルになった分、上半身と下半身の連動を見直すことで、結果としてストレートの伸びを感じることができているという。
現状を把握し、いまできることを愚直に遂行する。その姿勢はルーキー時代から変わらないこだわり。シーズン中、リリーフとしてブルペン待機した日でも、トレーニングと体のケアを欠かさないのも大勢スタイルだ。ときには、信頼するトレーナーのもとを尋ねるため、帰宅が深夜になることもあると言う。
実際、その「深夜メンテナンス」について報道されたのは、5月12日と13日の広島戦(東京ドーム)でプロ入り後初めて2試合連続でセーブに失敗したあとのこと。
甲子園でのナイター終了後、関西国際大時代から親交のあるパーソナルトレーナーにコンディショニングと治療をしてもらうため、球団に深夜の個別行動の許可をもらい、移動やスケジュール調整の負担はあっても独自のコンディショニングに努めていた。
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こだわりのフォームを変えることも、トレーニング方法を愚直に変えないことも、すべては「チームのため」「勝利のため」。そんな大勢には、入団前からずっと変わらない、抑えとしてのこだわりがある。
目標と公言するロッテの守護神で、関西国際大の大先輩、益田直也への憧れだ。去年(2022年)の交流戦で対面を果たすと、「益田さんのようになりたい」と憧れを口にする大勢に対して、益田は「俺は1年目で70試合近く投げたからお前ももっと投げろよ」と応酬して話題を集めた。
そして先日、その益田がプロ野球史上10人目となる通算200セーブを達成。そんな偉大な先輩に負けないように、大勢はこんな言葉を残している。
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今月50セーブに到達した大勢にとって、200セーブはまだまだ遠い頂。しかも、球団の歴史において、200セーブはもちろんのこと、巨人在籍時だけで100セーブに達した抑え投手は存在しない。球団歴代最多は、横浜から移籍してきた160キロ剛腕のマーク・クルーンと、往年の左腕・角盈男の93セーブだ。
ちなみに、100セーブ投手を輩出していないのは12球団で唯一、巨人だけ。人気球団ゆえに、抑えの場面でかかるプレッシャーたるや、常識では考えられないものがあるのだろう。
そんな球団の歴史を塗り替えることができるのか。24歳の若き守護神が挑む「先輩越え」を目指す歩みをしっかり追いかけていきたい。
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『みんな試合をしているので、そこ(1軍)にいれないことは申し訳ないなと気持ちもありますけど、しっかり無駄のないように時間を過ごしたい』
~『サンスポ』2023年6月28日配信記事 より
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原監督から「疲労困憊」と指摘され、誕生日を前に一時ベンチ入りメンバーからの離脱を経験した大勢。今季はここまでリーグ3位タイの14セーブ。6月13日には球団史上最速で節目の通算50セーブに到達するなどキャリアをしっかり重ねている一方で、さまざまな面でもがいているのも現状だ。
WBC出場の疲れや出遅れも影響してか、今季は黒星こそまだないものの、救援失敗は既に3度。交流戦では危険球退場もあった。だからこそ、原監督も1度リセットするよう指示をしたのかも知れない。
そんな状況を打破しようと、大勢自身も積極的に「変化」を目指している。
入団以来こだわりとしていた、左足を上げたときに軸足のかかとも上げる「ヒールアップ」投法を6月10日のソフトバンク戦から封印したのだ。大勢の持ち味と言える「シュート回転のストレート」の質が落ちていると判断したためだという。
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『登板前のブルペンで、最初はヒールアップしていたんですけど合わなかった。直前に変えようと決めました』
『納得のいく(フォームで)投げて抑えるのが一番かもしれないですけど、同じことをやっていても勝てない。チームに迷惑をかけるというのが一番良くない。チームの勝ちを優先しました』
~『スポーツ報知』2023年6月23日配信記事 より
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実際、ヒールアップを封印してからフォークボールの落ち方が安定。また、動きがシンプルになった分、上半身と下半身の連動を見直すことで、結果としてストレートの伸びを感じることができているという。
現状を把握し、いまできることを愚直に遂行する。その姿勢はルーキー時代から変わらないこだわり。シーズン中、リリーフとしてブルペン待機した日でも、トレーニングと体のケアを欠かさないのも大勢スタイルだ。ときには、信頼するトレーナーのもとを尋ねるため、帰宅が深夜になることもあると言う。
実際、その「深夜メンテナンス」について報道されたのは、5月12日と13日の広島戦(東京ドーム)でプロ入り後初めて2試合連続でセーブに失敗したあとのこと。
甲子園でのナイター終了後、関西国際大時代から親交のあるパーソナルトレーナーにコンディショニングと治療をしてもらうため、球団に深夜の個別行動の許可をもらい、移動やスケジュール調整の負担はあっても独自のコンディショニングに努めていた。
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『打たれるキツさ、負けるキツさに比べたら、このキツさは全然大丈夫です。これでチームが勝てるなら、やれることは何でもやりたい』
~『日刊スポーツ』2023年6月4日配信記事 より
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こだわりのフォームを変えることも、トレーニング方法を愚直に変えないことも、すべては「チームのため」「勝利のため」。そんな大勢には、入団前からずっと変わらない、抑えとしてのこだわりがある。
目標と公言するロッテの守護神で、関西国際大の大先輩、益田直也への憧れだ。去年(2022年)の交流戦で対面を果たすと、「益田さんのようになりたい」と憧れを口にする大勢に対して、益田は「俺は1年目で70試合近く投げたからお前ももっと投げろよ」と応酬して話題を集めた。
そして先日、その益田がプロ野球史上10人目となる通算200セーブを達成。そんな偉大な先輩に負けないように、大勢はこんな言葉を残している。
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『大学の先輩ですし、しっかり意識して200セーブはいきたい』
~『日刊スポーツ』2023年6月14日配信記事 より
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今月50セーブに到達した大勢にとって、200セーブはまだまだ遠い頂。しかも、球団の歴史において、200セーブはもちろんのこと、巨人在籍時だけで100セーブに達した抑え投手は存在しない。球団歴代最多は、横浜から移籍してきた160キロ剛腕のマーク・クルーンと、往年の左腕・角盈男の93セーブだ。
ちなみに、100セーブ投手を輩出していないのは12球団で唯一、巨人だけ。人気球団ゆえに、抑えの場面でかかるプレッシャーたるや、常識では考えられないものがあるのだろう。
そんな球団の歴史を塗り替えることができるのか。24歳の若き守護神が挑む「先輩越え」を目指す歩みをしっかり追いかけていきたい。