話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、球団史上初めて、高卒3年目以内で4試合連続本塁打を放った巨人・秋広優人選手にまつわるエピソードを紹介する。
プロ野球は7月22日から後半戦に突入。巻き返しを図る巨人にとって楽しみな存在が、高卒3年目にしてレギュラーに定着した「メガゴジラ」こと、秋広優人です。秋広は前半戦ラスト2試合(7月16・17日 vsヤクルト)で7号・8号アーチを連発。しかし奮闘むなしく、チームは連敗しました。
20歳の若さで、4番・岡本和真につなぐ3番打者としてしっかり仕事をしていることは評価されてしかるべきですが、7号ソロを放った16日のヤクルト戦終了後、秋広は4試合ぶりのアーチについて聞かれ、こうコメントしました。
『負け試合なので、意味がない。個人としてはうれしいことですけど、チームとしては意味がない。勝ちきれるように、勝ちを、勝利打点をもっともっと増やしていけるようにしたい』
~『スポーツ報知』2023年7月17日配信記事 より
いくらホームランを打っても、チームが勝たなければそれは「空砲」に過ぎない。それよりも、勝利を決定付ける一打を打ちたい……クリーンアップを打つ自覚が見てとれる一言です。
その翌日・17日に8号アーチを打った際のコメントも、個人的な喜びより、まずは「チーム」でした。
『チームに迷惑をかけていたので、何とか取り返したいと必死でした。結果ホームランになって良かったです』
~『日刊スポーツ』2023年7月17日配信記事 より
この試合、巨人はエース・菅野が先発しましたが、初回、いきなり6失点で1死しかとれずにKO。無死一・二塁のピンチで、サンタナがライト後方に放ったフライを、秋広が捕球できなかったことも響きました。
何とか挽回しようと、3回、秋広が放った滞空時間の長い8号2ランで巨人は反撃ムードに乗り、一時は7-6と6点差をひっくり返したのですが、試合はシーソーゲームの末に延長戦となり、10-11で巨人がサヨナラ負け。2試合連続アーチはプロ入り初でしたが、秋広にとってはまたしても「意味がない」一発となってしまいました。
5連敗、借金2の4位で前半戦を終えた巨人。とは言え、この時点で首位・阪神とは6.5ゲーム差。決して追いつけない差ではありません。そのためには3番を打つ自分のバットがカギと、後半戦開幕から秋広はフルスロットルで打ちまくります。
22日のDeNA戦、同点で迎えた8回、1死二塁のチャンスで打席に立った秋広。DeNA・伊勢がカウント3-1から投じたインハイの148キロを、長い腕をたたみ強く振り抜くと、打球は低い弾道を描いて、そのままライトスタンドへ。打たれた伊勢も唖然とした3試合連続の9号2ランは決勝弾となり、チームの連敗を止め、反撃のノロシを上げる貴重な一発となりました。
『連敗中でもあったし、監督の誕生日でもあり、(先発の)伊織さんが頑張っていた。打てて良かった』
~『日刊スポーツ』2023年7月23日配信記事 より
コメントにもあるように、この日は原辰徳監督の65歳の誕生日でした。指揮官にとっては、何より嬉しい一発だったに違いありません。
ただし、この試合で秋広はミスも犯しました。3回、無死一・二塁から犠打のサインを出されましたが、捕手の前に転がしてしまい失敗。何とか取り返そうと必死でバットを振り抜いたことが、好結果につながりました。
翌23日のDeNA戦でも、3点リードの7回、2死無走者から山﨑康晃の151キロを右中間スタンドに叩き込み、試合を決定づける4試合連続の10号ソロ。これで巨人は勝率を5割に戻し、3位・DeNAとの差を1.5ゲームに縮めました。
高卒3年目以内で4試合連発アーチを放ったバッターは、2リーグ制後、たった5人しかいません。藤本勝巳(1958年、阪神3年目)、掛布雅之(1975年、阪神2年目)、清原和博(1988年、西武3年目)、中田翔(2010年、日本ハム3年目)、そして秋広です。巨人では史上初めての快挙で、王貞治・松井秀喜も3年目以内にできなかった偉業を、秋広はアッサリとやってのけました。
ところが試合後、秋広のコメントがまた興味深いものでした。
『ホームランにこだわりはないです。10本出ましたけど、全部狙ったわけではないので。たまたまタイミングとバットの角度が一致した結果。これからも変えるつもりはないですし、狙うつもりもない』
~『スポーツ報知』2023年7月24日配信記事 より
秋広が狙うのはホームランではなく、あくまで「勝利につながる一打」。そこは一貫しています。
後半戦に入っても好調が持続している理由は、普段からの調整法にもあります。今季、自主トレを共にした“師匠”中田から疲労回復に役立つからと、熱めの風呂と水風呂に交互に入る「交代浴」を勧められた秋広。水風呂は苦手ですが、チームの勝利につながるならと日々実践しているそうです。
『できれば入りたくないですけど、体のために。次の日に(体の)軽さがある。睡眠の深さとかも変わる』
~『日刊スポーツ』2023年7月23日配信記事 より
まだシーズンを通して1軍でプレーしたことのない秋広にとっては、秋までフルで戦う体力を整えておくのも必要なことです。10号アーチを打った直後、秋広は貴重なアドバイスを送ってくれた中田に、こう言ったそうです。
「打って守備に就く時に、翔さんは高卒3年目の時にホームランが9本だったんです。『10本、2ケタいきました』って言ったら笑ってました」
~『スポーツ報知』2023年7月24日配信記事 より
師匠・中田も超えた秋広。23日の時点で、秋広の打率は240打数72安打で、ジャスト3割です。規定打席にはあと少しで到達。打率ランキングの上位にいきなり顔を出すことになります。ちなみに巨人で、高卒3年目にシーズン規定打席をクリアしたのは王貞治・柴田勲・松井秀喜・坂本勇人の4人だけ。ここでも「5人目の男」になれるかどうか? 巨人が混セに参加できるかどうかは、秋広のバットに懸かっています。
プロ野球は7月22日から後半戦に突入。巻き返しを図る巨人にとって楽しみな存在が、高卒3年目にしてレギュラーに定着した「メガゴジラ」こと、秋広優人です。秋広は前半戦ラスト2試合(7月16・17日 vsヤクルト)で7号・8号アーチを連発。しかし奮闘むなしく、チームは連敗しました。
20歳の若さで、4番・岡本和真につなぐ3番打者としてしっかり仕事をしていることは評価されてしかるべきですが、7号ソロを放った16日のヤクルト戦終了後、秋広は4試合ぶりのアーチについて聞かれ、こうコメントしました。
『負け試合なので、意味がない。個人としてはうれしいことですけど、チームとしては意味がない。勝ちきれるように、勝ちを、勝利打点をもっともっと増やしていけるようにしたい』
~『スポーツ報知』2023年7月17日配信記事 より
いくらホームランを打っても、チームが勝たなければそれは「空砲」に過ぎない。それよりも、勝利を決定付ける一打を打ちたい……クリーンアップを打つ自覚が見てとれる一言です。
その翌日・17日に8号アーチを打った際のコメントも、個人的な喜びより、まずは「チーム」でした。
『チームに迷惑をかけていたので、何とか取り返したいと必死でした。結果ホームランになって良かったです』
~『日刊スポーツ』2023年7月17日配信記事 より
この試合、巨人はエース・菅野が先発しましたが、初回、いきなり6失点で1死しかとれずにKO。無死一・二塁のピンチで、サンタナがライト後方に放ったフライを、秋広が捕球できなかったことも響きました。
何とか挽回しようと、3回、秋広が放った滞空時間の長い8号2ランで巨人は反撃ムードに乗り、一時は7-6と6点差をひっくり返したのですが、試合はシーソーゲームの末に延長戦となり、10-11で巨人がサヨナラ負け。2試合連続アーチはプロ入り初でしたが、秋広にとってはまたしても「意味がない」一発となってしまいました。
5連敗、借金2の4位で前半戦を終えた巨人。とは言え、この時点で首位・阪神とは6.5ゲーム差。決して追いつけない差ではありません。そのためには3番を打つ自分のバットがカギと、後半戦開幕から秋広はフルスロットルで打ちまくります。
22日のDeNA戦、同点で迎えた8回、1死二塁のチャンスで打席に立った秋広。DeNA・伊勢がカウント3-1から投じたインハイの148キロを、長い腕をたたみ強く振り抜くと、打球は低い弾道を描いて、そのままライトスタンドへ。打たれた伊勢も唖然とした3試合連続の9号2ランは決勝弾となり、チームの連敗を止め、反撃のノロシを上げる貴重な一発となりました。
『連敗中でもあったし、監督の誕生日でもあり、(先発の)伊織さんが頑張っていた。打てて良かった』
~『日刊スポーツ』2023年7月23日配信記事 より
コメントにもあるように、この日は原辰徳監督の65歳の誕生日でした。指揮官にとっては、何より嬉しい一発だったに違いありません。
ただし、この試合で秋広はミスも犯しました。3回、無死一・二塁から犠打のサインを出されましたが、捕手の前に転がしてしまい失敗。何とか取り返そうと必死でバットを振り抜いたことが、好結果につながりました。
翌23日のDeNA戦でも、3点リードの7回、2死無走者から山﨑康晃の151キロを右中間スタンドに叩き込み、試合を決定づける4試合連続の10号ソロ。これで巨人は勝率を5割に戻し、3位・DeNAとの差を1.5ゲームに縮めました。
高卒3年目以内で4試合連発アーチを放ったバッターは、2リーグ制後、たった5人しかいません。藤本勝巳(1958年、阪神3年目)、掛布雅之(1975年、阪神2年目)、清原和博(1988年、西武3年目)、中田翔(2010年、日本ハム3年目)、そして秋広です。巨人では史上初めての快挙で、王貞治・松井秀喜も3年目以内にできなかった偉業を、秋広はアッサリとやってのけました。
ところが試合後、秋広のコメントがまた興味深いものでした。
『ホームランにこだわりはないです。10本出ましたけど、全部狙ったわけではないので。たまたまタイミングとバットの角度が一致した結果。これからも変えるつもりはないですし、狙うつもりもない』
~『スポーツ報知』2023年7月24日配信記事 より
秋広が狙うのはホームランではなく、あくまで「勝利につながる一打」。そこは一貫しています。
後半戦に入っても好調が持続している理由は、普段からの調整法にもあります。今季、自主トレを共にした“師匠”中田から疲労回復に役立つからと、熱めの風呂と水風呂に交互に入る「交代浴」を勧められた秋広。水風呂は苦手ですが、チームの勝利につながるならと日々実践しているそうです。
『できれば入りたくないですけど、体のために。次の日に(体の)軽さがある。睡眠の深さとかも変わる』
~『日刊スポーツ』2023年7月23日配信記事 より
まだシーズンを通して1軍でプレーしたことのない秋広にとっては、秋までフルで戦う体力を整えておくのも必要なことです。10号アーチを打った直後、秋広は貴重なアドバイスを送ってくれた中田に、こう言ったそうです。
「打って守備に就く時に、翔さんは高卒3年目の時にホームランが9本だったんです。『10本、2ケタいきました』って言ったら笑ってました」
~『スポーツ報知』2023年7月24日配信記事 より
師匠・中田も超えた秋広。23日の時点で、秋広の打率は240打数72安打で、ジャスト3割です。規定打席にはあと少しで到達。打率ランキングの上位にいきなり顔を出すことになります。ちなみに巨人で、高卒3年目にシーズン規定打席をクリアしたのは王貞治・柴田勲・松井秀喜・坂本勇人の4人だけ。ここでも「5人目の男」になれるかどうか? 巨人が混セに参加できるかどうかは、秋広のバットに懸かっています。