いつでもみんなのプロ野球!実況アナルーム9月のテーマは“優勝実況”
「あの時はね、本当に誰が投げたか覚えていないくらい体調が悪かったんですよ。その前が広島出張でその時に風邪をひいてしまって…。広島で決まらずにドームに戻ったんですよね。広島で体調を壊して、嫌だなこんな感じで優勝中継やるのはと思いながら喋っていました」。
ニッポン放送の胡口和雄アナウンサーは、二岡智宏の逆転サヨナラ本塁打で巨人がリーグ優勝を決めた2000年9月24日の巨人-中日の優勝実況を担当した。
「当時体調のことばかり気になって、誰が投げていたか覚えていないんですよね。後から聞いたら前田が投げていたという状況で、覚えていたのは9回裏を迎えたところで4点を巨人がリードされていた。それで今日は優勝はないなと勝手に僕は思い込んでいました」。
広島遠征で優勝を決められず、東京ドームに戻ってきた23日の中日戦に2-7で敗れた。胡口アナが優勝実況を担当した中日戦も、中日先発・前田幸長の前に8回まで無得点に抑え込まれ、9回表終了時点で0-4と4点ビハインドの展開。
9回裏の攻撃、先頭の元木大介、高橋由伸の連打でチャンスを作り、4番・松井秀喜を迎えたところで中日ベンチは守護神のギャラードを投入。胡口アナは「ギャラードから1点取れるか取れないかというピッチャーだったので、その投手から4点取るのは厳しいなと。体調の悪い時に優勝実況するのは失礼だと思って、今日はせっかくのチャンスだけどパスでお願いしますと頼んだら…」。松井がギャラードからライト前に運び無死満塁。一発が出れば同点というチャンスでマルティネスが三振に倒れたが、江藤智がレフトスタンドに値千金の同点本塁打を放った。
「今までテンションが上がらなかったのが、ここからテンションを上げないといけないと思って、そこからギアを上げないといけない、でも体調がついてこない。最後の力を振り絞ってやったら、同点になって場内がわっと沸いたの。さあ今日は優勝だと、余韻を残そうと思って、色々説明しているうちにポーンと打っちゃった」
続く二岡がライトスタンドへ本塁打を放ち、サヨナラ勝ち。この瞬間、巨人のリーグ優勝が決まった。
「実況が遅れちゃったんですよ。それがすごく悔やまれて。野球の難しさ、自分で決め込んじゃいけないなという戒めみたいなもので。4点差でギャラードはないなと、まさかその次にサヨナラになると思わなかったので、そういう意味では非常に自分としては思い出に残る優勝シーンでしたよね」。
また、万全な状態で実況で挑めなかったことも、今に繋がっている。「そのあとは絶対に体調を壊さないように。今でもそうだけど、とにかく風邪をひかないこと。冷房でもなんでもちょっとひやっとしたら、すぐに暖かいところに行くとか、扇風機に直接かからないようにするとか、1週間前から優勝実況関係なくですね」と、実況1週間前からの体調管理を徹底するようになった。
長嶋茂雄監督時だの00年の巨人優勝実況を担当した胡口アナだが、意外にも原辰徳監督の優勝実況を担当したことがない。「やり残したことは原監督の優勝実況ができていないこと。あれだけ監督をやっていて、胴上げを見たことがあっても1回も自分で実況したことがないからね」とポツリ。
最後にリスナーに向けて「実況、野球は生きているもので、何が起こるか分からないから、最後の最後まで自分たちの応援しているチームを応援できるような気持ちで聴いていてほしいと思います。僕らもそのつもりでやっています。本当に今の近代野球は4点差でも9回裏に入ってもそういうことがあるから、1イニング7点、8点入ってひっくり返すゲームもある。野球の応援の仕方、楽しみ方はいろいろな方法がある。それを思いながら中継を聴いてほしいな。それに沿うようなテンション、気持ちでやっています」と意気込んだ。
(ニッポン放送ショウアップナイター)