国際舞台でも躍動
稲葉ジャパンが劇的なサヨナラ勝利で初陣を飾った。11月16日に開催された「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」の韓国戦は、3回に1点を先制するも直後に4点を奪われて逆転を許す苦しい展開。その空気を一変させたのが、主砲・山川穂高(西武)だ。
6回、左前打で出塁した近藤健介(日本ハム)を一塁に置いて迎えた第3打席。初球を思い切り振り抜いた。代名詞の豪快なスイングから放たれた弾丸ライナーは、あっという間に右中間スタンドに着弾。稲葉ジャパン公式戦第1号となる2ランで反撃の狼煙を上げた。
この試合では2回にチーム初ヒットとなる中前打も放ち、5打数2安打で1本塁打、2打点の活躍。稲葉篤紀監督が期待する長打力をきっちり発揮し、U-24とはいえ日本代表の4番を担うプレッシャーなど感じていないかのような暴れっぷりであった。これからの活躍次第では、同年齢の筒香嘉智(DeNA)らとトップチームの4番を争うことになるだろう。
驚異的な本塁打率
2017年は山川にとって飛躍のシーズンとなった。8月2日の楽天戦では3打席連続アーチを記録。8月は全27試合に先発出場し、9本塁打、28打点、64塁打、20四球、長打率.696、出塁率.451と6部門の月間成績でリーグトップの数字を残し、初の月間MVPを獲得。9月以降は4番として定着した。
開幕直後の不調もあって5月から7月上旬までファーム暮らしが続いたことで、トータルでは78試合・293打席の出場にとどまったが、限られた出場機会のなかでリーグ11位の23本塁打を記録。1本塁打に必要な打数を示す本塁打率「10.52」は、リーグで2ケタ本塁打を記録した27人のなかでトップだ。
本塁打王に輝いたデスパイネ(ソフトバンク)が13.66、3位のマレーロ(オリックス)が14.15ということを考えれば、山川の数字は異次元レベルともいえる。尊敬するチームの先輩・中村剛也の15.37も大きく上回った。
今季の中村は、規定打席に到達したシーズンで初めて本塁王のタイトルを逃すこととなった。その一方で、山川のチーム内での存在感は大きく増した。
もちろん、来季以降は各球団による研究も進み、マークも厳しくなるだろう。その試練を乗り越え、“おかわり2世”と呼ばれた男がついに本家を超えるか。山川というひとりの長距離砲が、大きな転換点を迎えつつある。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)