金子千尋も絶賛する球威
オリックスの2年目右腕・山本由伸が「すごい」。平凡な表現で申し訳ないが、「すごい」としか言いようがないのである。
5月6日、ソフトバンク戦の8回に登板した山本は、まずは先頭のデスパイネを外角高めのカットボールでどん詰まりの遊ゴロに打ち取った。続く中村晃を、力のある153キロ直球で遊飛に仕留めると、松田宣浩にはこれ以上ないという外角低めいっぱいのコースを直球で突き二ゴロ。デスパイネと松田は打率1割台と苦しんでいるとはいえ、実績十分の強打者たちをあっという間に片付けてみせた。
これで、山本は自身5試合連続での三者凡退斬りだ。最速154キロのストレートに、140キロ台後半の高速カットボールとフォークを交えるスタイル。最大の武器は球威である。チームの先輩・金子千尋は、昨年末のテレビ番組に出演した際に、今後の日本代表を支えるであろう若手として山本の名を挙げ、「球が速くて強い」と絶賛していた。
プロ初セーブも記録
しかも、コントロールも抜群だ。ここまで7試合7回を投げて与四死球はゼロである。被安打自体が2と少ないため、1投球回当たりに許した走者の数であるWHIPは0.29というとんでもない数字になっている。
昨季もウエスタン・リーグでは8試合33回2/3を投げて与四死球はわずか3という記録を残している。それは、制球力そのものに加え、マウンドでの冷静さによってもたらされているのだろう。一見すると負けん気の強そうないかにも生きのいい若手らしい面構えだが、マウンドさばきはとても高卒2年目とは思えぬ冷静沈着なものだ。
山本の課題とされるのはスタミナ。昨季は登板した5試合全てが先発だったが、最長投球回は5。最終的に防御率も5.32と振るわなかった。とはいえ、まだ19歳である。今季はここまで中継ぎ起用だが、徐々に重要な場面での登板を任されはじめ、5月1日の西武戦ではプロ初セーブも記録した。
前日まで3連投だった増井浩俊を休養させるための登板だったが、西武の強力打線を相手に9回のマウンドに送り出されるということは、すでにそれだけの信頼を勝ち取っているということ。この活躍を続けていれば、起用法も変わってくるだろう。
オリックスに現れたホープがどんな成長を見せていくか。他球団ファンも必見の右腕である。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)