球界屈指の安定感! QS%は唯一の80%超え!!
野球日本代表とMLB選抜による日米野球が11月12日から始まる。8年ぶりの開催となる今回は、親善試合を含めて計6試合が行われる日程だ。2017年のWBCに向けての強化試合ということもあり、日本代表はフレッシュなメンバー構成となった。
前田健太(広島)、大谷翔平(日本ハム)、則本昂大(楽天)と日本トップクラスの投手が並ぶ中でもエースと言える存在が金子千尋(オリックス)だ。
今季の金子は、26試合に登板し16勝5敗、防御率1.98で最多勝と最優秀防御率の2冠に輝いた。昨季、沢村賞の選考基準を全項目満たしながらも受賞を逃したが、今季は文句なしで自身初の沢村賞に選ばれている。
金子の特徴は、なんといっても安定感だ。先発して6イニング以上を投げ、自責点3点以内に抑えた確率を示すQS%(クオリティースタート率)は、規定投球回に達した両リーグの投手で唯一80%を超える84.6%。今季、先発して5イニング未満で交代した試合は1試合もなく、1試合最多失点は9月3日ソフトバンク戦での6失点が一度あるだけ。
与四球率を見ても、金子の安定感は光っている。金子の与四球率1.98は則本(楽天)と前田健太(広島)に次いで両リーグで3位。今季の1試合最多与四死球は、5月9日の日本ハム戦での5四死球。WBCを想定して行われる今回は、投手の球数制限(注1)があるため、少ない球数で長いイニングを投げられる投手は計算が立てやすい。
ゴロを打たせるのがうまい金子は外国人選手にも滅法強い!
14日の第2戦での先発が決定している金子だが、ゴロを打たせるのがうまい投手でもある。今季、金子が打たせたゴロアウトは194、フライアウトは135。ゴロアウトとフライアウトの比率を表すGO/AO(注2)は1.44で、規定投球回に達した両リーグの投手の平均である1.22を大きく上回っている。投球を低めに集めてゴロを打たせるピッチングは、振り回してくる打者が多いMLB選抜に対し、より力を発揮するはずだ。
そして、金子に期待をかけたくなる理由はもうひとつある。外国人打者に滅法強いのだ。今季、金子の被打率は.228で岸孝之(西武)、大谷翔平(日本ハム)に次いで両リーグで3番目の成績だ。それが、対外国人選手に限ると109打数17安打で被打率は.156まで下がる。李大浩(ソフトバンク)に対し22打数7安打2本塁打、被打率.318と打たれたが、それを除くと被打率は驚異の.115である。
今回来日するMLB選抜の中には、今季37本塁打を放ったカーター(アストロズ)、30本塁打のデューダ(メッツ)、27本塁打のサンタナ(インディアンス)とパワー自慢の選手も多い。今季の金子は被本塁打が7本と少なかったが、李以外の外国人選手には1本も打たれなかったのも強みだ。
このオフ、メジャーに移籍するか、オリックスに残留するかという点でも注目されている金子が、メジャーの強打者相手にどのようなピッチングを見せるか。日本が誇るエースのピッチングに注目したい。
(注1)投手の球数制限:80球を超えて投げることはできない。ただし、ある打者の打席中に投球数制限に達した場合は、その打席完了まで投球できる。50球以上 投げた場合、次の登板まで中4日をあけなければならず、30球以上、または2日連続で投げた場合、次の登板まで中1日をあけなければならない。記念試合および親善試合は制限なし。
(注2)ゴロアウト/フライアウト比率(GO/AO )
セイバーメトリクスの指標のひとつで、ゴロアウト(GO)の総数をフライアウト(AO)の総数で割り、ゴロアウトとフライアウトの比率を調べる指標。同じ数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロアウトの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライアウトの割合が高い投手となる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)