コラム 2020.11.10. 07:09

阪神・藤川球児の「剛球伝説」…今こそ振り返りたい、ファンの記憶に刻まれた名場面

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2006年のオールスター戦で実現した“因縁の対決” (C) Kyodo News

11月10日、現役生活に幕…


 “火の玉ストレート”を武器に日米通算245セーブを挙げた炎のストッパー・藤川球児(阪神)が、11月10日の巨人戦を最後に現役を引退する。


 1998年のドラフト1位で阪神に入団し、日本球界を代表するリリーバーとしてメジャーリーグにも挑戦。その後は独立リーグから這い上がって再びタテジマのユニフォームを身にまとい、最後は聖地・甲子園で現役生活にピリオドを打つ…。

 今回は、球史に残る名勝負の数々を生んだ「剛球伝説」のエンディングを惜しみつつ、22年間にわたる偉大な足跡の中から、ファンの記憶に残る名場面と藤川らしさが滲み出る珍場面を振り返ってみよう。


先発でプロ初白星


 まずは「涙のプロ初勝利」を挙げた、2002年9月11日のヤクルト戦から。

 同年、8試合に先発しながらもなかなか勝てなかった藤川は、この日も初回、先頭打者・真中満にカーブのすっぽ抜けを右翼席に運ばれてしまう。

 だが、その後は1本の安打も許さない力投。これまで超えられなかった“7回の壁”も、稲葉篤紀を三ゴロ、ペタジーニを中飛、ラミレスを三振と三者凡退に切って取り、8回を1安打で1失点に抑えた。

 すると直後の9回、味方打線が火を噴く。アリアスの左越え2ランなどで3点を勝ち越すと、その裏は守護神のマーク・バルデスが2ランを浴びる冷や汗ものの展開も、4-3でなんとか逃げ切り。待望のプロ初白星を手にした。

 試合後、お立ち台に上がった藤川は「勝利の瞬間、家族の顔が浮かびました。このボールは嫁さんにあげます。一番苦しいときに支えてくれた」と言って涙ぐんだ。


全パの強打者に挑んだ直球勝負


 リリーフ転向後の2005年、ジェフ・ウイリアムスや久保田智之とともに「JFK」の一角を担った藤川。チームの2年ぶりVに貢献するとともに、優勝決定試合となった9月25日の巨人戦では、稲尾和久(西鉄)が持っていた「78」を更新するシーズン最多の79試合登板を達成した(最終的には「80試合」)。

 その翌年、7月21日のオールスター第1戦。「野球漫画のような世界をつくりたい」と、右腕は全パの強打者2人に全直球勝負を挑む。


 3-1とリードの9回、全セの6番手としてマウンドに上がった藤川は、先頭のアレックス・カブレラ(西武)に直球の握りを見せつけ、1ボールから3球連続でバットに空を切らせる。

 さらに、小笠原道大(日本ハム)も6球で空振り三振。「打たれてもいいと思っていたけど、シーズン中と同じように打たれたくない気持ちになった」と振り返った。


 また、同23日の第2戦では“因縁の相手”との対決も…。

 前年4月21日の巨人戦、藤川は清原和博を変化球で三振に斬るも、直球勝負を望んでいた清原は、試合後に「チン○コついとんのか!」と激怒。これが大々的に報じられた。

 その清原がオリックスに移籍したため、オールスターの夢舞台でこの対決が実現。藤川は「小細工なしでど真ん中に投げたい」と、全球直球勝負を宣言した。

 そして、8回二死。代打で登場した清原に対し、4球続けて150キロ超の速球を投げ込み、空振り三振。「今まで18回球宴に出て、一番すごい火の玉ボールが来た」と脱帽させた。

 試合後、「清原さんに育ててもらったような気がする」という感想を口にした藤川は、「今日はホームランを打たれても良かった。それで成長することもあるし、野球を辞めるまで真剣勝負していきたい」と、誓いを新たにした。


「緊急登板」で見せた後輩への気づかい


 今度は珍場面。「あと1人」コールが3度も繰り返され、味方の拙守に足を引っ張られながらも、1点差で逃げ切った2011年8月14日のヤクルト戦である。

 8-1と大きくリードした阪神だったが、9回裏に福原忍がホワイトセルに2ランを浴び、なおも一死満塁のピンチ。「今日は出番がない」と思っていた藤川が緊急登板する羽目になった。

 とはいえ、リードは5点。宮本慎也が三振で二死、バレンティンも浅い中飛を打ち上げ、試合終了…と思われた。

 ところが、柴田講平のまさかの落球で、走者3人が生還。これであっという間に8-6。さらに次打者・相川亮二のとき、自らの暴投と捕手・藤井彰人がボールを見失うアクシデントにより、二塁走者・バレンティンがホームイン。ついに1点差まで迫られた。

 そして、2度目の「あと一人」コールのなか、相川は三ゴロ。今度こそゲームセット…と思いきや、なんと新井貴浩がお手玉。同点の走者を許してしまう。

 だが、藤川はこんな状況にも「面白いな。ウワッ、初めてや。経験したことがないことが起こってる」と笑みを浮かべながら、最後の打者・武内晋一を三振に打ち取った。

 試合後、藤川は「これを抑えてあげれば、柴田にとってもいい経験になると思った」と、ミスした後輩がウルっとくるようなコメントを残している。


辞任表明の“恩師”と涙で握手


 敗戦ではあるが、藤川の野球人生の中でも思い出深い試合といえば、2008年10月20日のCS第1ステージ第3戦、中日戦ではないか。

 この年、阪神は優勝目前まで行きながら、最大13ゲーム差をつけていた巨人の大逆転Vを許した。CSを前に岡田彰布監督が同年限りでの辞任を表明。藤川は03年オフ、戦力外リスト入りしたときに残してくれた“恩師”と「1試合でも多く(勝利の)ハイタッチをしたい」と特別な思いでCSに臨んでいた。


 1勝1敗で迎えた第3戦、0-0の9回に先発・岩田稔をリリーフした藤川は、二死三塁で、タイロン・ウッズにフルカウントからの6球目、「三振を狙った」150キロの真ん中高め直球を左中間に叩き込まれ、決勝2ランを被弾。これで第2ステージ進出は幻と消えた。

 「迷惑をかけてしまいました…。何で最後、自分なのかな」とうなだれる藤川に、岡田監督は涙ぐみながら言った。

 「最後は、お前で打たれてくれて良かった。お前で終わってくれて良かった…」


 切り札を投入しての敗戦なら、悔いはないという恩師の言葉。藤川は涙で顔をくしゃくしゃにしながら、指揮官と握手を交わした。

 試合終了から20分後、異例の胴上げが行われ、“敗軍の将”は、藤川らの手によって、5度宙を舞った。

 月日は流れ、12年後の11月10日。今度は現役ラスト登板を終えた40歳の藤川が宙を舞うことになる。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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