コラム 2021.05.14. 07:09

九州地区の“最速150キロ左腕” 西日本工大・隅田知一郎はどんな投手なのか

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西日本工大・隅田知一郎選手 [写真提供=プロアマ野球研究所]

ドラフト候補に急浮上!


 高校野球では各地の春季大会、大学野球は春季リーグ戦。そして社会人野球は日本選手権対象大会と、アマチュア球界は公式戦が本格的に行われる時期となった。

 プロアマ野球研究所では、今年も秋のドラフト会議に向けて、楽しみな「ドラフト候補」を紹介していきたい。




 全国には26の大学野球連盟があり、その中で最も多い32の大学が加盟しているのが九州地区大学野球連盟だ。北は福岡から南は沖縄まで、広範囲に渡って加盟校を抱えている。2016年からは北部と南部に分けてリーグ戦を行い、今年6月に開催予定の全日本大学野球選手権では、南北それぞれのリーグ戦の優勝校が出場できるようになった。

 その中の福岡県・長崎県・大分県・佐賀県で構成される北部ブロックで圧倒的な強さを誇るチームが、北部と南部に分かれて以降、9季全てで優勝を飾っている日本文理大だ。2003年には全日本大学野球選手権優勝を果たしているほか、DeNAの宮崎敏郎をはじめ、多くのプロ野球選手も輩出している。

 

 しかし、今回取り上げるのは、そんな日本文理大と同じ北部ブロックに所属する西日本工大でにわかにスカウト陣の注目を集めるサウスポーだ。


▼ 隅田知一郎(西日本工大)
・投手
・177センチ/76キロ
・左投左打
・波佐見高

<主な球種と球速帯>
ストレート:141~150キロ
スライダー:122~128キロ
フォーク:130~134キロ
ツーシーム:133~135キロ
チェンジアップ:115~118キロ

<クイックモーションでの投球タイム>
1.09秒


最速150キロをマーク!


 長崎・波佐見高時代には3年夏の甲子園に出場。背番号は10ながら先発を任され、現在は慶応大で活躍している増居翔太(彦根東・当時2年)と投げ合い、惜しくも初戦敗退を喫している。

 当時はプロに注目される投手ではなかったが、この試合では最速143キロをマーク。当時の取材ノートを読み返すと、「フォームに悪い癖がなく、体が大きくなればまだまだ速くなりそう」と、隅田の将来性について書き込んでいた。


 西日本工大は全国的にみても強豪校ではなく、正直に申し上げて、隅田の存在を忘れていたが、彼の名を再び聞いたのは昨年秋のこと。リーグ戦で最速150キロをマークし、にわかにプロからも注目を集めているという。

 そんな隅田の成長を確かめるべく、4月17日に行われたリーグ戦に足を運んだ。


 この日の対戦相手は、昨年秋のリーグ戦で2位の久留米工大。5位に沈んでいた西日本工大にとって、格上といえる相手だ。

 そんな難敵に対し、隅田は立ち上がりにいきなり連続四球を与えてピンチを背負ってしまう。

 だが、続く打者の送りバントを落ち着いて処理してセカンドランナーをサードで封殺すれば、後続も打ちとって無失点で切り抜ける。

 そこから2回以降は制球が安定し、全く危なげないピッチングを披露。6回を投げて被安打わずかに1、無失点という好投で、チームの勝利に大きく貢献した。


高校時代から進化した点とは…?


 高校時代とまず大きく変わったのは体つきだ。

 夏の甲子園に出場した当時は172センチ・66キロだったが、現在は177センチ・76キロと明らかに逞しくなっている。

 以前からフォームに目立って悪い癖はなく、テイクバックでわずかに左肩が下がるものの、逆にそのことでボールの角度が生まれているように見えた。


 ストレートは自己最速には及ばなかったものの、最速147キロをマーク。立ち上がりから降板する6回までコンスタントに140キロ台中盤を記録しており、アベレージのスピードも申し分なかった。

 また、ストレート以上に成長を感じたのが変化球だ。軸になるスライダーは120キロ台前半から後半のスピードを意図的に投げ分けており、また変化も縦と横でバリエーションがある。

 さらに、130キロ台のツーシームとフォークは、ストレートと見分けがつかず、110キロ台のチェンジアップのブレーキも素晴らしかった。

 「150キロのサウスポー」といえば、剛腕でコントロールが悪いイメージも付きまとうが、立ち上がりを除き、制球は乱れることはなく、しっかり試合を作っていた。


 大学では大舞台での実績がなく、まだまだ知名度は高くない隅田。しかしながら、その実力は間違いなく全国レベルである。

 この春のリーグ戦は日本文理大と隅田のいる西日本工大、さらに別府大の3チームが6勝4敗で並び、プレーオフの戦いへ。3チームによる2勝先取方式の巴戦で行われ、隅田はダブルヘッダーで計7回を投げて5失点と苦しい投球になったが、3チームが1勝1敗と決着がつかず、再度プレーオフが行われることとなった。

 リベンジのチャンスでチームを優勝に導くような活躍を見せれば、また左腕への注目度は増してくることだろう。今後の活躍次第では、一躍ドラフトの上位候補に浮上してくることも十分に考えられる。


☆記事提供:プロアマ野球研究所
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