コラム 2021.05.27. 09:35

伝説の推定180m弾や“連敗地獄”…交流戦の「好珍エピソード」を振り返る!

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外野スタンド遥か頭上の天井に直撃する特大弾を放った西武・カブレラ (C) Kyodo News

ドームの天井を直撃!


 ついに幕を開けた『日本生命セ・パ交流戦』。しばらくパ・リーグの優勢が続いているが、今年こそセ・リーグの巻き返しはあるのか…。2年ぶりの開催に注目が集まる。

 ベースボールキングでは、交流戦の開幕に合わせて過去の“交流戦珍事件”を振り返る特集を展開中。今回は、交流戦の中で生まれた記録をめぐる「好珍エピソード」を紹介したい。




 まずは、西武のアレックス・カブレラがドームの天井を直撃するプロ野球史上最長飛距離の本塁打、「推定180メートル弾」を放ったのが、2005年6月3日の横浜戦(インボイスSEIBUドーム)だ。

 0-0の2回、先頭のカブレラは三浦大輔から左中間上空に大飛球を打ち上げた。観客も行方を見失うほどの凄まじい打球は、外野フェンス真上にある高さ60メートルの屋根の鉄骨部分にドスンとぶつかったあと、グラウンドに落下してきた。

 カブレラはインプレーと勘違いして二塁ベース上で止まったが、打球が外野のフェア地域の天井に当たったことから、球場ルールによりこれが本塁打と認定。



 「あんな当たりは生まれて初めて見た。度肝を抜かれた。あそこまで飛ばすなんて、もう野球じゃないよ」と伊東勤監督も呆れるばかりの豪快弾。

 カブレラも「天井がなかったら、球団事務所まで行っていたよ。自分の中では、190メートルは飛んでいると思う」と、ギネスブックに登録されているミッキー・マントル(ヤンキース)の推定196メートルの世界最長記録を意識していた。

 ちなみに、注目の推定飛距離については、カブレラが2001年に記録した2発の推定170メートル弾と比較検討された結果、「計測できませんが、あのホームランよりは飛んでいるでしょう」という公式記録員の証言から、推定180メートル弾となった。


最年長プロ第1号が満塁ホームラン


 続いては、遅咲きの本塁打記録である。プロ野球史上最年長(当時)のプロ1号を放ったのが、横浜・北川隼行だ。

 2009年6月8日のロッテ戦。0-3とリードされた5回一死満塁のチャンスで打席に立った7年目の北川は、大嶺祐太の内角寄りの球を右中間席に運び、史上最年長30歳のプロ1号。

 しかも、これがNPB通算2000本目の満塁弾であると同時に、7連敗中のチームを救うV弾というおめでた尽くしだった。


 前年はプロ入り後初めて一軍出場がなく、「ぶっちゃけ最後ぐらい、今の流れを変えられるように」と夫人と相談の末、「利之」から改名した崖っぷちの男は、初回無死一塁で送りバントに失敗…。

 それでも、「ここで打たなかったらもうあれ(二軍落ち)だな」と覚悟を決めての打席が、最高の結果をもたらした。


 それから8年後の2017年6月3日、今度は阪神の13年目捕手・岡崎太一が日本ハム戦で33歳のプロ1号となる逆転2ラン。最年長記録を更新する一打で、金本知憲監督を「一世一代やね」と驚かせた。


通算200盗塁達成がまさかの“取り消し”


 通算200盗塁達成と思いきや、一転快挙が取り消されてしまったのが、日本ハムの西川遥輝だ。

 2018年5月30日の巨人戦(東京ドーム)、史上75人目の通算200盗塁まであと「1」に迫っていた西川は、6-9の9回一死から左越え二塁打で出塁。次打者・大田泰示のとき、カミネロの2球目にスタートを切り、見事三塁を陥れた。

 直後、場内の大型ビジョンに「西川選手通算200盗塁」と祝福のメッセージが映し出され、スタンドからは惜しみない拍手が贈られる。


 ところが、ここで公式記録員から「待った」がかかる。

 「巨人の野手が走者に無関心、無警戒の中での進塁になるので、野手選択です」という理由で、せっかく成功させた200個目の盗塁が無効になってしまったのだ。

 まさかのどんでん返しに、「定義がよくわからないんですけど…」と困惑した西川だったが、「200盗塁を目指してやっているわけじゃないので」と気持ちを切り替え、6月1日の中日戦(札幌ドーム)の2回に二盗成功。今度は正真正銘の通算200盗塁を達成した。


交流戦で“連敗地獄”に…


 最後にチームの記録を紹介する。泥沼の連敗に加え、連続イニング無得点記録まで更新してしまったのが、2011年の広島だ。

 同年の広島は交流戦開幕直後こそ3勝2敗1分と白星先行も、5月25日の西武戦で0-5と零敗すると、そこから黒星街道まっしぐら。チームの得点も、翌26日の西武戦で4回に2点を挙げたのを最後に、次戦から3試合連続0-1で敗れるなど、ゼロ行進が続く。

 6月1日の楽天戦も0-3で敗れ、球団ワーストの44イニング連続無得点を記録。同3日のオリックス戦でも、2回無死満塁のチャンスを逃し、6回にヤクルトのセ・リーグワースト記録を更新する50イニング連続無得点となった。

 0-6の7回、東出輝裕のタイムリーなどで51イニングぶりの得点2を挙げ、何とかNPB記録(1953年の大映の『59』)を免れたものの、勝利には結びつかず、同6日のソフトバンク戦まで10連敗を喫した。


“弱いセ”の汚名を返上できるか


 2017年の巨人も、5月25日の阪神戦から4連敗とチームの状態が悪いときに交流戦を迎えたことから、楽天、オリックス、西武にいずれも3タテを食い、球団ワーストの13連敗を記録。

 また、同年はヤクルトも交流戦開幕から10連敗を喫し、2010年にヤクルトが記録した開幕9連敗を更新している。


 ちなみに、交流戦での連敗記録は2005年の日本ハムの「11」だが、パは2009年の67勝70敗(7分)を除き、すべて勝ち越している。

 2019年までの15年間の通算成績は、パの1102勝966敗(60分)。2015年の交流戦後には、首位・ヤクルトをはじめ、セ6球団すべてが借金を背負うという珍事も起きている。

 近年は日本シリーズも8連敗中とパに押されっぱなしのセだが、今年の交流戦では“弱いセ”の汚名を返上できるか。こちらも注目される。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
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