コラム 2021.12.16. 07:08

「高校1年生四天王」結成…?明治神宮大会で躍動した“スーパー1年生”

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花巻東高の佐々木麟太郎 (C) Kyodo News

1年生がこれほど活躍する大会は記憶にない


 全国の秋季地区大会を勝ち抜いた10校で「秋の日本一」をかけて行われた、明治神宮野球大会・高校の部。

 大阪桐蔭の初優勝で幕を閉じた今大会を振り返った時に、やはり大きなインパクトとして残ったのは「1年生の大活躍」である。




 大会前から大きな注目を集めていた1年生といえば、花巻東の佐々木麟太郎だろう。

 高校通算47発で挑んだ今大会、開幕ゲームとなった国学院久我山戦の第1打席でいきなりライトスタンドに叩き込む本塁打を放って観客の度肝を抜くと、準決勝の広陵戦は敗れはしたものの、一時同点となる3ランをかっ飛ばし、全国舞台で鮮烈な爪痕を残した。

 ほかにも、佐々木と同じ1年生で4番を任された真鍋慧(広陵)と佐倉侠史朗(九州国際大付)も揃って一発を放っており、投手では前田悠伍(大阪桐蔭)がエース級の活躍を見せてチームの優勝に大きく貢献している。彼ら4人の今大会の成績を改めてまとめると、以下のような数字となった。



・佐々木麟太郎(花巻東)
3試合 打率.600(10-6) 2本塁打 9打点 
12打席 1二塁打 0三塁打 2四死球 0盗塁
出塁率.667 長打率1.300 OPS 1.967

・真鍋慧(広陵)
3試合 打率.533(15-8) 1本塁打 5打点
15打席 1二塁打 0三塁打 0四死球 0盗塁
出塁率.533 長打率.800 OPS 1.333

・佐倉侠史朗(九州国際大付)
3試合 打率.333(9-3) 1本塁打 2打点
11打席 0二塁打 0三塁打 2四球 0盗塁
出塁率.455 長打率.667 OPS 1.122

・前田悠伍(大阪桐蔭)
3試合(15回) 被安打9 失点3(自責点3) 防御率1.80
17奪三振 5四死球 被安打率5.40 奪三振率10.20 四死球率3.00


「高校1年生四天王」が23年のドラフト戦線を牽引?


 これだけ注目された1年生たちが、揃って結果を残した大会というのは記憶にない。

 打者3人はいずれも一塁手ではあるが、近年高く評価されることが多いスラッガータイプである。佐々木の先輩である大谷翔平(エンゼルス)が海の向こうでホームランを連発した年に、同じ左打者の長距離砲が高校球界に3人も揃って登場したというのも、因縁めいたものを感じる。

 また、前田もプロから人気になりやすいサウスポーで、完成度はとても高校1年生とは思えない。仮に大学生を相手に投げたとしても抑えそうな雰囲気があった。現在140キロ程度のストレートがスピードアップできれば、さらに攻略が困難な投手となりそうだ。

 少し気が早い話だが、2023年の秋には彼らがドラフト戦線を牽引し、“大豊作”となる可能性が高い。


強豪校は“打高投低”


 出場したチームの傾向としては、“打高投低”という印象を受ける。なかでも象徴的だったのが、準決勝に残った大阪桐蔭・広陵・花巻東・九州国際大付の4チームだ。

 大阪桐蔭は3試合で40安打で4本塁打、28得点をマーク。夏の甲子園でレギュラーだったのは「3番・捕手」の松尾汐恩(2年)のみだが、個々の能力の高さはやはり頭一つ抜けている。

 優勝インタビューで、キャプテンの星子天真(2年)は、集中打が出たことが収穫だったと話したが、上位だけでなく下位からもチャンスを作れる打線の迫力は優勝にふさわしいものだった。


 また、広陵は真鍋と内海優太(2年)、花巻東は佐々木と田代旭(2年)、九州国際大付は佐倉と黒田義信(2年)といった、超高校級と呼べる打者を揃えている。1年生の4番だけにマークが集中することがないという点は、大きな強みだ。

 内海は身長185センチ・体重85キロの大型外野手。パワーに頼らない形の良さが持ち味。田代は強肩強打の捕手で、佐々木とスタイルの似た打撃でフルスイングの迫力は十分だ。黒田は高いレベルで3拍子揃ったセンター。抜群のスピードとパンチ力を兼ね備えている。

 今大会では、注目の1年生に負けじとこの2年生3人も揃って本塁打を放っており、ドラフト候補としてアピールに成功している。


春の選抜までに投手陣を整備できるか


 一方で、投手陣はどのチームも苦労している印象だ。

 大阪桐蔭は、前田以外の2年生が軒並み精彩を欠き、決勝戦では中盤に激しい追い上げを許している。

 広陵も、森山陽一郎(2年)や岡山勇斗(1年)、松林幸紀(2年)という高い将来性を感じる右腕を3人揃えているが、安定感はまだまだという印象だ。

 決勝に進めなかった花巻東と九州国際大付についても、準決勝の大量失点が敗退の原因となっている。「春は投手力」と言われるだけに、来春の選抜までに投手陣を整備できるかが、優勝争いの大きなポイントとなるだろう。


☆記事提供:プロアマ野球研究所



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