コラム 2022.05.03. 06:44

緊急昇格でプロ初安打をマーク オリックスの高卒ルーキー・池田陵真が見せた“一発回答”

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プロ初安打を放ったオリックス・池田陵真 (C) Kyodo News

猛牛ストーリー 【第15回:池田陵真】


 連覇と、昨年果たせなかった日本一を目指す今季のオリックス。監督、コーチ、選手、スタッフらの思いを「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。

 第15回は、1日に「特例2022」の代替指名選手として一軍昇格を果たし、スタメン出場した西武戦でプロ初安打を放ったドラフト5位の新人・池田陵真選手(大阪桐蔭高)です。ウエスタン2位タイの3本塁打を放っている期待のルーキーは、将来の主軸候補として順調に歩みを進めています。




「思っている以上に力みや焦りが出た」


 1-1で迎えた8回。先頭打者としてこの日3度目の打席に立った池田は、バットを短く持ち替えた。

 マウンドには平良海馬。昨季開幕から39試合連続無失点のプロ野球記録を達成した剛腕リリーバーの初球は外角高め、151キロのボール。2球目、156キロのファーストストライクを右前にはじき返した。



 「力負けしないよう、短く持って振っていこう」

 池田の気迫と準備が勝った一打だった。


 前日に一軍昇格を告げられた。コロナ禍の「特例2022」による代替選手。しかし、池田は「これもひとつのチャンス」ととらえ、データや映像で先発左腕ディートリック・エンスや中継ぎ、抑え投手の特徴を確認するなど準備をしたという。

 「スタメンもあるぞ」。合宿所で昇格を知った先輩らから声を掛けられ、「いきなり言われてもびっくりしないように、心の準備だけはできていた」と言うが、それでも「こっち(京セラドーム大阪)に来たら、思っている以上に力みや焦りが出た」というあたり、まだまだ初々しさが残る18歳だ。

 「9番・右翼」での先発出場を知ったのはメンバー発表時。必要以上に緊張しないようにとの首脳陣の配慮のようだったが、練習時に「ライトの準備をしておくように」と田口壮外野守備・走塁コーチから声を掛けられ、クッションボールの処理を教わったあたりから「先発出場があるな」と感じたそうだ。


恩師「練習、練習の選手でした」


 はやる気持ちを払拭できたのは、キャンプから心掛けていた“ファーストストライクを狙う意識”だった。

 第1打席はエンスに空振り三振を喫したが、「緊張を和らげる意味でもストライクを振っていけたのがよかった」という。前日、一軍昇格を報告した大阪桐蔭高の恩師・西谷浩一監督からの「池田らしく、思い切っていきなさい」とのアドバイスも生きた。


 172センチ・85キロと小兵だが、背筋力は240キロを誇る。入団会見では「筋肉を見てほしい」とアピールするほど、胸板も厚い。

 高校通算25本塁打とパンチ力があり、宮崎春季キャンプでの打撃練習ではいきなりオーバーフェンスを見せつけただけでなく、外野ネットの中段まで運んで周囲を驚かせたほどだ。

 初の紅白戦でも「5番・右翼」で先発出場すると、2打席目に右中間へ適時三塁打。2月24日の西武との練習試合でも、途中出場で2本の右前打を放ってアピールした。

 「1年間、打席数を与えていろんなことを経験させたい」(小林宏二軍監督)という球団方針で二軍スタートになったが、ウエスタン・リーグではリチャード(ソフトバンク)の5本に次ぐ3本塁打をマーク。打率.239もリーグ9位で、10打点もリーグ7位と奮闘。4月28日からは4番を任されていた。


 練習熱心で努力家。「入って来た時からプロ志望だった。体が小さいので、より鍛えなくてはと考えたのでしょう。練習、練習の選手でした」と西谷監督は振り返る。池田を休ませる目的で休日を設けても、池田は練習にやって来て、休ませることができなかったこともあったそうだ。

 右と左でタイプは違うとはいえ、小兵という部分で共通するのが先輩・森友哉(西武/170センチ・85キロ)。西谷監督は「池田は負けず嫌い。上のレベルを目指していたので、『森はもっと打っていたぞ』などと話はしました」と語り、意識をさせていたという。

 昨年11月16日、大阪市内のホテルで行われた仮契約交渉。記者会見に臨んだ池田のユニフォームはブカブカだった。

 「高校では体にぴったりだったので、少し大きめに作ってもらいました」とのことだったが、今では大きめのユニホームを着ている印象はない。体重は85キロから変動がないというから、筋肉がついたということだろう。


活躍する高卒新人にも闘志「負けたくはありません」


 ここまで二軍で過ごした26試合を、池田は「状態は悪くありませんが、思ったようには打てていません。全部が全部とらえられるわけではありませんが、打ち損じてファウルになることも多い」と振り返り、今後の課題として「1球で仕留める力をつけたい」と話していた。

 その点でいえば、この日の平良からの安打は「1球で仕留める」ことを実践できたということだろう。

 西武戦での3連勝を逃し、「打線はつながっているが、当てにいっての併殺など寂しい内容」と決定打不足を嘆いた中嶋聡監督も、池田については「本当に良いバッティングで、たいしたもの」と手放しで褒めた。
 
 小林二軍監督も「素直で、打撃で良いものを持っている。なかなか高卒1年目でファーストストライクから手が出るものではない。バットスイングも速い」と高く評価する。


 金属バットから木製バットへの移行も、スムーズに進んだようだ。

 キャンプ当初はよくしなるバットを使っていたが、今は「プロの球は速いので、しっかりと振れるように875グラム程度に軽くしています」という。「対策されるほどの選手ではありませんが、自分なりに投手を研究し、対応できるように打席の中で工夫したい」とも。


 ロッテの新人・松川虎生(市和歌山高)の活躍も刺激になる。「開幕から一軍ですごいなと思うが、負けたくはありません。お互いに頑張っていきたい」と目を輝かせた。

 今季の目標は「結果も大事ですが、一番はケガをせず1年を過ごすこと」。昨年のドラフトではチームでただ一人の高校生だったが、強豪・大阪桐蔭で主将を務めただけあって、しっかりと足元を見つめている。


取材・文=北野正樹(きたの・まさき)



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