コラム 2022.11.14. 06:29

オリックス・宮城大弥に“能見ロス”なし 「解説者になったら良いこと言って」とお願いも

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秋季キャンプに合流した宮城大弥 [写真=北野正樹]

猛牛ストーリー【第43回:宮城大弥】


 リーグ連覇を達成し、昨年果たせなかった日本一も成し遂げたオリックス。監督・コーチ、選手、スタッフらの思いを「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。

 第43回は、3年目の今季も1年間ローテーションを守り、11勝8敗で連覇と日本一に貢献した宮城大弥投手(21)です。




 レギュラーシーズンにクライマックスシリーズ、日本シリーズから侍ジャパンまでフル回転しましたが、12日からは高知市内での秋季キャンプに参加しています。

 「休むのではなく、来年良い形でスタート出来るように考えてやっています」。慢心することなく、早くも来シーズンを見据えています。


「僕は“内容”を見ています」


 夏のような強い日差し、25度前後の暖かさに包まれた高知市東部運動公園内で行われているオリックスの秋季キャンプ。第3クール初日の12日、グラウンドには宮城と山﨑颯一郎の姿があった。

 10日の夜に侍ジャパンの豪州戦(札幌ドーム)を終え、移動日を挟んでの合流。「監督から『待ってるから』と。(舞洲での調整も含めて)準備はして来ましたので、どちらでもよかったです。ただ、久しぶりにチームの雰囲気に触れることが出来ますし、普段ファームでは軽くしか目を合わせることが出来ない選手と一緒にアップして、良い会話も出来たと思います」と宮城。

 さらに、「いろいろ勉強してきましたから、休むのではなく(秋季キャンプに参加することは)来年に向けての準備期間だと思います。来年良い形でスタート出来るように考えて取り組んでいます」。現状に満足することなく、常に高みを目指す宮城らしい言葉が返って来た。


 24試合に登板して11勝8敗、防御率3.16が3年目のレギュラーシーズンの成績。

 13勝(4敗)、防御率2.51で新人賞に輝いた2021年シーズンと比べて数字は落ちたものの、実質2年目のジンクスとは無縁で、シーズンを通してローテを守ったことは評価されるところだ。

 「波がすごく大きかったのが一番ですね」。3年目を振り返っての質問に即答した。

 「勝ち星の数より、僕は(投球)内容がすべてだと思っています。4失点しても、5点取ってもらえたら勝ちになるように、野手の方に助けてもらう部分があります。内容がよければ、勝ち星や防御率など目に見える部分で、必然的によくなります。だから僕は内容を見ています」

 結果に一喜一憂せず、内容を突き詰める。


 求める数字は、防御率であり、クオリティ・スタートだ。

 「防御率は2点台ですね。良い投手はやはり2点台ですから。一人だけ、変な人はいますけど(笑)」

 2年連続して防御率1点台(2021年=1.39/2022年=1.68)のチームの先輩・山本由伸を引き合いに出しながら、自身も防御率にこだわりをみせる。


「いただいたアドバイスが消える訳ではない」


 2年間、様々なアドバイスを送ってくれた能見篤史・兼任コーチが現役を引退し、退団した。

 8月中旬以降、1カ月以上も勝ち星に見放されていた昨年は「このままじゃ、勝てないよ」とだけ告げられ、今季は開幕直後に「今年は8勝止まりだね」と声を掛けられた。

 理由も、答えも示さないアドバイス。冷たく聞こえるが、自分で答えを見つけて負のスパイラルから抜け出すことで、初めてプロの世界で長く活躍することが出来るという意味が込められている。


 能見によると、前者は「まだ20歳前後で疲れるのは当たり前。本人はそうは思っていなかったようですが、誰もフル回転してくれなんて思ってはいません」と、背負い込むなという意味で。後者は「勝てる時は勝てますが、いろんな要素がありますからね。あくまで本人次第なんで」と、内容にこだわれという意味のようだ。

 タイミングをみての的確な助言。昨年は「1人で背負い過ぎなくてもいい」と気持ちを切り替えて新人王。今年も、能見の告げた8勝を3勝も上回ることが出来た。


 その能見が、来年からはそばにいなくなる。

 「ここ最近も会っていませんけど、能見さんが入る前と一緒だと思います。2年間でしたが、良い経験をさせてもらいました。その前に能見さんはいらっしゃらなかったし、いなくなったからといって、いただいたアドバイスが消える訳ではありません。連絡先もわかっていますし」と、能見ロスとは無縁のよう。

 能見は今後、解説などグラウンドの外から野球を見ることになりそうだ。

 「いつも厳しいことしか言われていませんでしたので、解説者になられたら、(僕のことは)いいように言って下さい、と書いておいて下さい(笑)」と宮城。

 最後は、野球界の父と慕う「能見さん」へのお願いで締めくくった。


取材・文=北野正樹(きたの・まさき)
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