楽天を引っ張る松井稼頭央
今、プロ野球界は世代交代の真っ只中である。
高橋由伸、金本知憲、ラミレスと3人の新監督が誕生したセ・リーグは監督全員40代。さらに15年シーズン限りで21世紀の球界を支え続けた山本昌、中嶋聡、斎藤隆、谷繁元信、和田一浩、西口文也、谷佳知、小笠原道大、高橋尚成、井端弘和といったベテラン選手たちが続々と現役引退。
そんな中、存在感を示しているのが楽天を牽引する脅威の40歳・松井稼頭央である。契約更改の席で球団に自ら直訴し外野手登録となった昨季は126試合に出場。なかなかレギュラーを固定できなかった楽天の外野手で100試合以上守備に就いたのは松井のみ。打っては7月28日のソフトバンク戦でNPB通算2000安打を達成。最終的に10本塁打・14盗塁と40歳にして二桁本塁打・二桁盗塁を記録してみせた。
15年終了時で日米通算2649安打(歴代5位)、461盗塁(歴代7位)。安打数と盗塁数で両方ベスト10入りしているのは天才イチロー、世界の福本豊、そして松井稼頭央の3人だけだ。さらに日米通算526二塁打もイチローに次いで歴代2位である。西武時代は遊撃手としてゴールデングラブ賞4度、ベストナイン7度受賞。02年には打率.332、36本塁打、33盗塁と両打ち選手としては史上初のトリプルスリーを達成。04年からはMLBで7年間に渡りプレーし日本人内野手最多の通算630試合に出場した。球史に残るNPB史上屈指の5ツールプレイヤーと言っても過言ではないだろう。
端正なマスクに加え圧倒的な身体能力とスター性に魅了され、子どもの頃の憧れの存在としてその名前を挙げる現在20代の現役選手たちも数多い。埼玉出身で89年生まれの中村晃(ソフトバンク)は子供の頃から大の松井ファンで自身の背番号を60から7に変更。侍ジャパンのショートを守る88年生まれの坂本勇人(巨人)や昨年1番打者としてブレイクした90年生まれの立岡宗一郎(巨人)も、少年時代の憧れは松井稼頭央と公言している。
今季プロ23年目を迎える松井だが、特筆すべきはその強靭な肉体だ。昨季は年間501打席に立ったが、セ・パ両リーグで規定打席到達者は計54名。500打席以上は計45名。その中で40代の選手は松井ただひとりである。まさに衰え知らずの規格外のタフさを持つ背番号7。
日本のスポーツ界でレジェンドプレイヤーと言えば、来月49歳になるJリーグの三浦知良(横浜FC)が有名だがプロ野球界にはこの選手がいる。
松井稼頭央、40歳。
その昔、松井秀喜と比較されリトルマツイと呼ばれた男は、いまや立派な球界の「キング・カズ」になった。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)