

昨夏の甲子園王者で今春のセンバツ高校野球大会出場も決めた仙台育英(宮城)。チームを率いる須江航監督の著書『仙台育英 日本一からの招待 幸福度の高いチームづくり』(カンゼン)が昨年12月の発売以来話題を呼んでいます。そんな著書から、第4章「チーム作りは文化作り ー組織論」の一部を紹介します。
まずは、やらなくてはいけないことをやる
「やりたいことをやりたかったら、やらなくてはいけないことをしっかりとやりなさい」
野球を思い切りやりたい選手が多いからこそ、あえて、このような話をしています。
好きな野球に、一生懸命になるのは当たり前のことです。でも、好きなこと、やりたいことだけをやっていて、望んだ成果を収められるほど人生も野球も甘くはありません。
時間を守れず、整理整頓もできず、挨拶もできない人間は、周りからの信用を失うだけです。野球がどれだけうまくても、人としてやるべきことをやっていなければ、どこかで痛い目に遭ってしまうでしょう。
近年、教育の世界で、「グリット」という考え方が重要視されています。日本語に訳せば、「やり切る力」。過去の教え子の取り組みを振り返ると、何においても「やり切る力」を持っている人間は、苦手なことにも好きなことにも、高いレベルでやり切ろうとする意思を感じます。「根気」と置き換えてもいいかもしれません。
こうしたことも、先輩が手本を示していれば、自然と後輩に受け継がれていくものです。
逆に、先輩がだらしない姿を見せていれば、「このぐらいでいいのか」と後輩に悪い影響を与えることになります。
ただし、高校野球は卒業と入学で、人が必ず入れ替わっていくので、定期的に、〝注意喚起?をしていかなければ、取り組みの質は間違いなく低下し、目減りしていきます。先輩がどれだけ優秀だったとしても、です。整理整頓ができていないことがあれば、その意味を改めて丁寧に伝えていかなければなりません。
「やらなくてはいけないことをやる」という意味では、学業にも同じようなことが言えます。学校生活の第一義は学業にあります。授業態度の悪い者、学業向上に努力しない者、欠席・遅刻の多い者、学校の教育活動に積極的に参加しない者は、技術が高くとも、部員の代表として背番号を着ける資格はありません。
これは決して、〝罰〟ではなく、もっと本質的な意味合いがあります。背番号をもらうということは、もらえなかった仲間がいるわけです。選ばれた者が、組織の中でどんなふるまいを見せるか。それが理解できなければ、絶対に良き文化は築かれていきません。
チーム全体で見ると、野球は好きで前向きに取り組んでいる一方で、勉強は苦手で、「できることなら避けたい……」と思っている部員のほうが多いと思います。もう、義務教育は修了しているので、「好きな野球に没頭したい」という気持ちもわからなくはないですが、勉強に取り組む意味は必ずあります。
「人生において、苦手なことに取り組むこと、向き合うことは、自分の道を切り拓いていくことになる。なぜなら、人生の多くの場面で、短所が長所を消してしまうから。ネガティブな部分が邪魔をして、長所までも消し去ってしまう。だからこそ、苦手なことや短所に対して、丁寧に向き合える人間であってほしい」
彼らによく話していることです。好きなことだけで生きていけるのなら、それに越したことはありませんが、それほどの才能を持っている人は、一握りではないでしょうか。
野球にたとえるのなら、どんなにバッティングが良くても、守備が苦手な選手はスタメンでの出場機会が減っていきます。自らの長所を知り、長所を伸ばしていくことはもちろん大事ですが、だからといって、短所から逃げてはいけないのです。勉強に対する取り組み方を見ると、選手ひとりひとりの性格や特性が見えてきます。

【書籍情報】
2022年夏 東北勢初の甲子園優勝!
「青春は密」「人生は敗者復活戦」「教育者はクリエイター」「優しさは想像力」
チーム作りから育成論、指導論、教育論、過去の失敗談まで、監督自らが包み隠さず明かす!
『人と組織を育てる須江流マネジメント術』
<有言実行!夢の叶え方>
基準と目標を明確化 努力の方向性を示す
選手の声に耳を傾け、主体性を伸ばす
データ活用で選手の長所・短所を〝見える化"
日本一激しいチーム内競争の先に日本一がある
高校野球が教えてくれる、本当に大切なことを学ぶ
<目次>
序章 『日本一からの招待』を果たすために
第1章 人生は敗者復活戦―思考論
第2章 選手の声に耳を傾け、個性を伸ばす―育成論
第3章 日本一激しいチーム内競争―評価論
第4章 チーム作りは文化作り―組織論
第5章 教育者はクリエイターである―指導論
第6章 野球の競技性を理解する―技術論・戦略論
終章 幸福度の高い運営で目指す“2回目の初優勝”
まずは、やらなくてはいけないことをやる
何においても「やり切る力」が大事
「やりたいことをやりたかったら、やらなくてはいけないことをしっかりとやりなさい」
野球を思い切りやりたい選手が多いからこそ、あえて、このような話をしています。
好きな野球に、一生懸命になるのは当たり前のことです。でも、好きなこと、やりたいことだけをやっていて、望んだ成果を収められるほど人生も野球も甘くはありません。
時間を守れず、整理整頓もできず、挨拶もできない人間は、周りからの信用を失うだけです。野球がどれだけうまくても、人としてやるべきことをやっていなければ、どこかで痛い目に遭ってしまうでしょう。
近年、教育の世界で、「グリット」という考え方が重要視されています。日本語に訳せば、「やり切る力」。過去の教え子の取り組みを振り返ると、何においても「やり切る力」を持っている人間は、苦手なことにも好きなことにも、高いレベルでやり切ろうとする意思を感じます。「根気」と置き換えてもいいかもしれません。
こうしたことも、先輩が手本を示していれば、自然と後輩に受け継がれていくものです。
逆に、先輩がだらしない姿を見せていれば、「このぐらいでいいのか」と後輩に悪い影響を与えることになります。
ただし、高校野球は卒業と入学で、人が必ず入れ替わっていくので、定期的に、〝注意喚起?をしていかなければ、取り組みの質は間違いなく低下し、目減りしていきます。先輩がどれだけ優秀だったとしても、です。整理整頓ができていないことがあれば、その意味を改めて丁寧に伝えていかなければなりません。
「やらなくてはいけないことをやる」という意味では、学業にも同じようなことが言えます。学校生活の第一義は学業にあります。授業態度の悪い者、学業向上に努力しない者、欠席・遅刻の多い者、学校の教育活動に積極的に参加しない者は、技術が高くとも、部員の代表として背番号を着ける資格はありません。
これは決して、〝罰〟ではなく、もっと本質的な意味合いがあります。背番号をもらうということは、もらえなかった仲間がいるわけです。選ばれた者が、組織の中でどんなふるまいを見せるか。それが理解できなければ、絶対に良き文化は築かれていきません。
チーム全体で見ると、野球は好きで前向きに取り組んでいる一方で、勉強は苦手で、「できることなら避けたい……」と思っている部員のほうが多いと思います。もう、義務教育は修了しているので、「好きな野球に没頭したい」という気持ちもわからなくはないですが、勉強に取り組む意味は必ずあります。
「人生において、苦手なことに取り組むこと、向き合うことは、自分の道を切り拓いていくことになる。なぜなら、人生の多くの場面で、短所が長所を消してしまうから。ネガティブな部分が邪魔をして、長所までも消し去ってしまう。だからこそ、苦手なことや短所に対して、丁寧に向き合える人間であってほしい」
彼らによく話していることです。好きなことだけで生きていけるのなら、それに越したことはありませんが、それほどの才能を持っている人は、一握りではないでしょうか。
野球にたとえるのなら、どんなにバッティングが良くても、守備が苦手な選手はスタメンでの出場機会が減っていきます。自らの長所を知り、長所を伸ばしていくことはもちろん大事ですが、だからといって、短所から逃げてはいけないのです。勉強に対する取り組み方を見ると、選手ひとりひとりの性格や特性が見えてきます。

【書籍情報】
2022年夏 東北勢初の甲子園優勝!
「青春は密」「人生は敗者復活戦」「教育者はクリエイター」「優しさは想像力」
チーム作りから育成論、指導論、教育論、過去の失敗談まで、監督自らが包み隠さず明かす!
『人と組織を育てる須江流マネジメント術』
<有言実行!夢の叶え方>
基準と目標を明確化 努力の方向性を示す
選手の声に耳を傾け、主体性を伸ばす
データ活用で選手の長所・短所を〝見える化"
日本一激しいチーム内競争の先に日本一がある
高校野球が教えてくれる、本当に大切なことを学ぶ
<目次>
序章 『日本一からの招待』を果たすために
第1章 人生は敗者復活戦―思考論
第2章 選手の声に耳を傾け、個性を伸ばす―育成論
第3章 日本一激しいチーム内競争―評価論
第4章 チーム作りは文化作り―組織論
第5章 教育者はクリエイターである―指導論
第6章 野球の競技性を理解する―技術論・戦略論
終章 幸福度の高い運営で目指す“2回目の初優勝”