「自分の中で背負ったものがあった」
昨年自己最高の打率.292、24本塁打、99打点の成績を残したロッテの井上晴哉。昨年のシーズン終了後には「今までは何をしたら良くなるかと悪い反省で考えていたが、今年(2018年)はなんで打てたんだろうとか、そっちの反省をしたい。なんで打ててきたんだろうというのを探っていきたい」と話し、「自主トレの中では凄くうまくいっていました」と手応えを掴みキャンプに入った。
「キャンプで実戦が入ってくると、気持ちの面で乱れるところがあった」。昨季見せたような打撃を披露できず、オープン戦は打率.125、0本塁打、1打点に終わった。オープン戦で苦しんだ理由に、「単純に結果が欲しかっただけ。オープン戦でも結果を出し続けなければいけないと、自分の中で背負ったものがあった。そういったなかからちょっと焦りもでてきた感じです」と当時を振り返る。
シーズンが開幕してからもなかなか「H」のランプを灯すことができず、4月6日に一軍登録を抹消された。
復帰後は4番で打率.318
ファームでは「とにかく振り込みました」と無心でバットを振り込んだ。4月14日の日本ハムとの二軍戦で練習試合、オープン戦、公式戦を通じて今季初となる本塁打を放つと、4月21日の西武戦で1試合2ホーマー、さらに23日の巨人戦でも本塁打。
特に西武との二軍戦で放った本塁打は、体をクルリと回転させた井上らしい一発だった。井上本人も「体重がしっかり伝わっていることが、ああいう打球になると思う」と振り返る満足の一発。巨人との二軍戦で本塁打を放った23日から再び一軍の舞台に帰ってきた。
一軍に戻ってからは、本来の打撃を取り戻し、クルリと回った大きな打球が増えてきた。井上も「そういう風に僕も映像を見ながらやっていますけど、下が使え出したんじゃないかなと思います」と分析する。
復帰直後は下位打線を打っていたが、4月27日の楽天戦から4番に復帰。井上が一軍登録抹消中に、4番を打っていた角中勝也がお立ち台で「本当の4番がどこかに行ってしまったので、戻ってくるまではカバーしときます」と話したこともあった。
「ネットで見たりとかしましたけど、絶対に上がってやるという気持ちもありました」と井上。
本当の“4番”に戻った井上は5月4日の日本ハム戦から16日のオリックス戦にかけて10試合連続安打。18日の楽天戦では、石橋良太から一発を放つなど、一軍復帰後、4番では打率.318、5本塁打、11打点の成績を残す。
「去年もそうですけど、その日その日で体調とかスイングが違う。それにあった調整法だったり引き出しだったりは、試合でうまく使えれば去年と似た感覚で試合に出続けられると思います」
充実のオフを過ごしたなか、キャンプが始まってから“結果”を気にしすぎて歯車が狂った。その反省から現在は「運が良かったら打てる、運が悪かったら打てない」といい意味で、考えすぎないように心がけている。「メンタルだと思います」。技術面では試合に出ることで打席内での考えや引き出しは、年々増えている。精神面が充実していれば、井上晴哉は今後も勝負強い打撃を披露してくれるはずだ。
取材・文=岩下雄太