今季はまだ一軍昇格なし
「(一軍から)声もかかっていないので、その分何かが足りていないということだと思います。自分なりにしっかりと自覚して練習だったり、結果、内容を残していきたいと思います」。
気温30度を超える真夏のロッテ浦和球場で大粒の汗をぬぐいながらロッテの成田翔は、自身の率直な思いを口にした。
オフは昨年11月に行われた『2018日米野球』で「ストレートで力負けした部分がある」と痛感し、力負けしないストレートを手に入れるためストレートを磨いた。それとともに、プロ1年目から続けていた体づくりにより3年間で体重が約10キロアップし、体の大きさに見合った投球をするためヒールアップでの投球を一旦封印。プロ4年目のシーズンに向けて、自身の課題と向き合い万全な状態で春季キャンプに臨んだ。
春季キャンプがはじまってからは、練習試合、オープン戦など実戦で6試合連続無失点に抑えていたが、3月の中旬以降からファームで過ごす。開幕してからはファームで9試合連続で無失点に抑えるなど、ロングリリーフ、ワンポイントなど状況問わず様々な場面で起用されながらも、しっかりと結果を残した。
5月が終了した時点で25試合に登板し、1勝2敗、防御率1.57と抜群の安定感を誇った。しかし、6月は疲労からか失点する場面が目立った。「疲労もそうですけど、プロに入ってから30試合以上投げたのが初めて。山場だと思うので、ここを乗り越えたら春先のようなピッチングに戻ってくると思う。慌てることもなく、しっかりやれることをやって備えていきたいと思います」。
6月は苦しい投球となったが、「投げる期間が空いて気分的にも、体的にもリフレッシュできたと思う」と登板間隔が空いたこともあり、7月に入ってから再び復調。前半戦の最後には「6月はちょっと落ちていたので、今は戻ってきていると僕の中では思っている」と好感触を得た。
下半身の使い方を見直す
調子を取り戻すために成田は、「下半身の使い方をしっかりと見直してきました」と話す。
下半身の使い方を見直すにあたって、大隣憲司コーチからアドバイスをもらっているが、「最後は自分でやらなければならない。夜ビデオでチェックをしたり、体の使い方のトレーニング、張る場所をチェックしたりして、自分なりに考えてやってきました」とコーチに頼りきりになるのではなく、自分の頭でどうすれば良くなるかを考えている。
また、夏場に入ってからは、ロッテ浦和球場で行われる試合前の練習の最後に、大隣コーチとキャッチボールすることが増えた。成田は「右のインコースのクロスファイアをしっかり投げきれなければ、僕みたいなピッチャーは通用しないと思う。そこにしっかり投げられるように角度をつけられるようにやっている練習です」と理由を教えてくれた。
変化球も好感触
ここへきて成田の武器でもある大きく曲がるスライダー、右打者へのチェンジアップは、素晴らしいボールを投げ込んでいるように見える。
スライダーについて成田は「春先からやっていることは変わっていない。感覚は春先に戻ってきている感じがする」と分析し、「周りから見て、言われた方が僕的にはしっくりくる。そう言われて、感じはいいんだなといい感覚があります」と続けた。
チェンジアップも、ZOZOマリンで行われた楽天との二軍戦で、田中和基に投げていたボールは非常に良かった。
本人も「(田中さんとは)日米野球のときにお話ししたら、チェンジアップが良いと言ってくださったので、それで自信になりました。思い切って自信を持って投げられる球。内野ゴロが欲しいときにああいうボールをうまく使えればいいかなと思います」と手応えを掴む。
ファームで経験
今季はまだ一軍の昇格はないが、ファームではイースタン・リーグトップタイの42試合に登板し経験を積んでいる。
「登板数が前半で去年よりも超えてきたので、そのぶん、中継ぎの難しさだったりを6、7月で実感できた。いい経験でもありますし、こうやって状態が戻ってきたので、来年以降に状態が悪くなったときの戻し方につながってくると思う。全部プラスに捉えてやっていきたいと思います」と前を向く。
開幕からファームで過ごしていた中村稔弥、東妻勇輔、小島和哉らが一軍へ上がり、成田と同じように高卒でプロ入りした岩下大輝(現在は故障で離脱中)、種市篤暉は先発ローテーションで投げるなど、近い年齢の選手たちが一軍の舞台でプレーする。悔しいそぶりを見せないが、同年代の投手たちの活躍を見て一軍で投げたいという思いは相当強いはず。
「チャンスがくると思ってやるしかない。そのチャンスをモノにできるように、下でしっかり投げてアピールしていきたいと思います」。
成田はいつ一軍に呼ばれてもいいように、そして一軍の舞台で結果を残せるように、今できること、やるべきことを取り組んでいく。
取材・文=岩下雄太