話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は9月11日のソフトバンク戦で決勝の走者一掃二塁打を打った、西武・森友哉選手にまつわるエピソードを取り上げる。
「大事な一戦で、大きなチャンスで回してもらったので気合が入りました」(森)
11日、メットライフドームで行われたパ・リーグ頂上対決、西武-ソフトバンク戦。前回の直接対決3連戦(8月30日~9月1日)は、西武連勝のあと、3戦目にソフトバンクが意地を見せ、何とか1ゲーム差で首位をキープしました。
しかし西武は、ソフトバンクにそれ以上引き離されることなく、2位でぴったり追走。0.5ゲーム差で最終2連戦を迎えたのです。
11日の第1戦は、西武が負ければソフトバンクに今季(2019年)初のマジック「12」が点灯。逆に西武が勝てば今季初の首位に立つという、まさに「天王山」の一戦でした。
西武は9勝1敗のニール、ソフトバンクは11勝3敗のサブマリン・高橋礼が先発。どちらも「負けないピッチャー」を立てて臨んだこの試合。西武はこの試合まで、高橋礼に今季1勝4敗。天敵をどう攻略するかがカギでした。
3回、西武は一死満塁のチャンスを作りますが、源田が一塁ゴロ。続いて打席に立ったのは、パ・リーグ首位打者の森でした。この打席を迎えるまで、高橋との今季対戦成績は11打数1安打。大の苦手にしていましたが、今季は満塁で打席に立つと、打率は何と5割以上!「満塁男」は絶好のチャンスに開き直りました。
「打てないと思って、積極的に行こうと思いました。打てなくても(前に凡退した)源さん(=源田)のせい、と割り切って打ちました(笑)」
森は高橋の初球(シンカー)をとらえると、打球は右翼線で弾み、満塁一掃のタイムリー二塁打に。西武は3点を先制し、結果的にこの1打が試合を決めました。
投げてはニールが7回1失点の好投を見せ、8回は中継ぎエース・平井、9回は守護神・増田が締めて西武が快勝。ニールは9連勝を飾り、来日1年目でいきなり2ケタの10勝目。増田も通算100セーブをマーク。投手陣を巧みにリードしたのも森でした。森の攻守にわたる活躍で、西武は130試合目でついにソフトバンクを逆転、今季初の首位に立ったのです。
11日は試合前に、8月の月間MVPの発表も行われ、パ・リーグの打者部門は森が受賞。8月に40安打・10本塁打・30打点(いずれもリーグトップ)の圧倒的な成績で文句なしの選出でしたが、意外にもこれが、プロ6年目で初の受賞でした。
「プロ野球人生で、1度は獲りたいと思っていた」
と会見で嬉しそうに語った森。現在、オリックス・吉田正尚と3割3分台(11日現在)でハイレベルな首位打者争いを演じています。
毎試合、抜かれていないかビクビクしながらライバルの成績をチェックしているそうで、「プレッシャーしかないです(笑)」と言いながら、その重圧をエネルギーに変えているところはひと皮むけた感があります。
そもそも、守備の負担が大きい捕手が首位打者を獲るのは非常に稀で、過去「捕手の首位打者」は1965年・野村克也(南海)、1991年・古田敦也(ヤクルト)、2012年・阿部慎之助(巨人)の3人だけ。いかに困難かが分かります。
打力を活かすため、DHや外野で起用されることが多かった森を、本来のポジション・捕手で起用するようになったのは辻監督でした。昨年(2018年)、森は136試合に出場しましたが、うち81試合でマスクをかぶりました。
炭谷銀仁朗が巨人にFA移籍した今季(2019年)は、森がほぼ先発マスクをかぶっていますが、守備負担が増え打撃成績が下がるどころか、逆にアップしているのですから驚きます。「責任を持たせることが、選手を大きく成長させる」という辻監督の狙いが見事に当たりました。
月間MVPの会見で「ここまでいい形で来た。リーグ連覇を目指します!」と高らかに宣言した森。その夜、自らのバットとリードで首位奪取を実現し、12日のソフトバンク戦に勝てば、西武に優勝マジック「11」、引き分けでも「12」が点灯します。
「一時的に首位になっただけ。残り13試合。全試合、勝ちに行くつもりで戦いたい」
月間MVPどころか、このまま逆転優勝すれば、間違いなくシーズンMVPの最有力候補となるでしょう。しかし森の最終目標は、リーグ連覇のさらに先にあります。それは、2008年以来遠ざかっている「日本一」。
昨年(2018年)はリーグ優勝しながら、CSで2位・ソフトバンクに苦杯を喫し、10年ぶりの日本シリーズ出場を断たれました。辻監督がファンへの挨拶の際に嗚咽した、あの悔しさを西武ナインは誰も忘れていません。
森自身も、日本シリーズは未体験。名実ともに「日本一の捕手」になれるかどうか? 真価が問われるのは、これからです。
「大事な一戦で、大きなチャンスで回してもらったので気合が入りました」(森)
11日、メットライフドームで行われたパ・リーグ頂上対決、西武-ソフトバンク戦。前回の直接対決3連戦(8月30日~9月1日)は、西武連勝のあと、3戦目にソフトバンクが意地を見せ、何とか1ゲーム差で首位をキープしました。
しかし西武は、ソフトバンクにそれ以上引き離されることなく、2位でぴったり追走。0.5ゲーム差で最終2連戦を迎えたのです。
11日の第1戦は、西武が負ければソフトバンクに今季(2019年)初のマジック「12」が点灯。逆に西武が勝てば今季初の首位に立つという、まさに「天王山」の一戦でした。
西武は9勝1敗のニール、ソフトバンクは11勝3敗のサブマリン・高橋礼が先発。どちらも「負けないピッチャー」を立てて臨んだこの試合。西武はこの試合まで、高橋礼に今季1勝4敗。天敵をどう攻略するかがカギでした。
3回、西武は一死満塁のチャンスを作りますが、源田が一塁ゴロ。続いて打席に立ったのは、パ・リーグ首位打者の森でした。この打席を迎えるまで、高橋との今季対戦成績は11打数1安打。大の苦手にしていましたが、今季は満塁で打席に立つと、打率は何と5割以上!「満塁男」は絶好のチャンスに開き直りました。
「打てないと思って、積極的に行こうと思いました。打てなくても(前に凡退した)源さん(=源田)のせい、と割り切って打ちました(笑)」
森は高橋の初球(シンカー)をとらえると、打球は右翼線で弾み、満塁一掃のタイムリー二塁打に。西武は3点を先制し、結果的にこの1打が試合を決めました。
投げてはニールが7回1失点の好投を見せ、8回は中継ぎエース・平井、9回は守護神・増田が締めて西武が快勝。ニールは9連勝を飾り、来日1年目でいきなり2ケタの10勝目。増田も通算100セーブをマーク。投手陣を巧みにリードしたのも森でした。森の攻守にわたる活躍で、西武は130試合目でついにソフトバンクを逆転、今季初の首位に立ったのです。
11日は試合前に、8月の月間MVPの発表も行われ、パ・リーグの打者部門は森が受賞。8月に40安打・10本塁打・30打点(いずれもリーグトップ)の圧倒的な成績で文句なしの選出でしたが、意外にもこれが、プロ6年目で初の受賞でした。
「プロ野球人生で、1度は獲りたいと思っていた」
と会見で嬉しそうに語った森。現在、オリックス・吉田正尚と3割3分台(11日現在)でハイレベルな首位打者争いを演じています。
毎試合、抜かれていないかビクビクしながらライバルの成績をチェックしているそうで、「プレッシャーしかないです(笑)」と言いながら、その重圧をエネルギーに変えているところはひと皮むけた感があります。
そもそも、守備の負担が大きい捕手が首位打者を獲るのは非常に稀で、過去「捕手の首位打者」は1965年・野村克也(南海)、1991年・古田敦也(ヤクルト)、2012年・阿部慎之助(巨人)の3人だけ。いかに困難かが分かります。
打力を活かすため、DHや外野で起用されることが多かった森を、本来のポジション・捕手で起用するようになったのは辻監督でした。昨年(2018年)、森は136試合に出場しましたが、うち81試合でマスクをかぶりました。
炭谷銀仁朗が巨人にFA移籍した今季(2019年)は、森がほぼ先発マスクをかぶっていますが、守備負担が増え打撃成績が下がるどころか、逆にアップしているのですから驚きます。「責任を持たせることが、選手を大きく成長させる」という辻監督の狙いが見事に当たりました。
月間MVPの会見で「ここまでいい形で来た。リーグ連覇を目指します!」と高らかに宣言した森。その夜、自らのバットとリードで首位奪取を実現し、12日のソフトバンク戦に勝てば、西武に優勝マジック「11」、引き分けでも「12」が点灯します。
「一時的に首位になっただけ。残り13試合。全試合、勝ちに行くつもりで戦いたい」
月間MVPどころか、このまま逆転優勝すれば、間違いなくシーズンMVPの最有力候補となるでしょう。しかし森の最終目標は、リーグ連覇のさらに先にあります。それは、2008年以来遠ざかっている「日本一」。
昨年(2018年)はリーグ優勝しながら、CSで2位・ソフトバンクに苦杯を喫し、10年ぶりの日本シリーズ出場を断たれました。辻監督がファンへの挨拶の際に嗚咽した、あの悔しさを西武ナインは誰も忘れていません。
森自身も、日本シリーズは未体験。名実ともに「日本一の捕手」になれるかどうか? 真価が問われるのは、これからです。