三輪「一生忘れない」引退セレモニー
降りしきる雨の中で“らしさ”を炸裂させた。
今季限りで現役を引退するヤクルトの三輪正義の引退セレモニーが、22日の巨人戦(神宮)の試合後に行われた。
三輪は「ヤクルトファンの皆様、これからもヤクルトスワローズの応援をよろしくお願いします。そして、近い将来、ここにいる後輩たちが必ず優勝をしてくれると思っています」と真剣にメッセージを伝えたかと思えば、続けて「ねっ、塩見くん!!」と、後輩の塩見泰隆をいじることも忘れなかった。
話し終えると「それでは行ってきます!!」と、ベースを周りながら、シートの上でヘッドスライディングをしてびしょ濡れに。最後は本塁に生還して、大爆笑のチームメイトたちに迎えられた。
小川監督「数少ない職人」
明るいキャラクターが先行するが、三輪の存在はチームの“ムードメーカー”としてだけではない。
小川淳司監督は三輪に対して「数少ない職人。自分というものをすごく心得ていて、そこに向けて一生懸命に努力して、試合の中でも自分らしさをすごく発揮する。そこに準備する姿勢は、全選手が見習うべきところじゃないかと思う」と語った。
さらに指揮官は「バントであったり代走であったり、チームのために機能してくれた選手。チームにとって必要な選手だったと思う」と、感謝の思いを口にしている。
大雨というシチュエーションが、去り行く男をさらに輝かせた。「一生忘れない思い出ができたかなと思う。ファンも含め僕も、チームメイトも」と、三輪は話した。
独立リーグ出身者としては初めて国内FA権も取得した背番号60。ファンとチームメイトに愛された男は、プロ12年間の現役生活に別れを告げた。
松本直がプロ初アーチ
また、この日は三輪が託した若い選手たちが躍動した。
3回に22歳の広岡大志が、センターへ10号3ラン。プロ4年目で自身初となる2ケタ本塁打を達成すると、三輪がセレモニーでいじった塩見は三塁打を含むマルチ安打の活躍を見せた。
さらに、7回には「8番・捕手」でスタメン出場したプロ2年目の25歳・松本直樹が、巨人の3番手・鍵谷から右翼スタンドへプロ初アーチとなる2ラン。松本直はこの日の試合前まで、巨人戦の打率が.625と好相性。そのことについて尋ねると
「たまたまです。最近全然打てていないので、しっかりと今日は打ちたいと思います」と話してくれたが、その言葉どおりの結果を残した。
この一発で10-3と巨人を突き放し、その後は雨が強くなって中断。そのままコールドで勝利した。先発した石川雅規は5回4安打3失点で8勝目を挙げ、これでプロ通算171勝目を掴んだ。
すでにリーグ最下位が確定しているヤクルトだが、来季へ向けて若手のさらなる成長が必要不可欠となる。残り3試合となったが、若いツバメたちの奮闘に期待だ。
取材・文=別府勉(べっぷつとむ)