1年前の5月5日に二軍戦デビュー
ロッテの古谷拓郎は、今から1年前の5月5日の巨人二軍戦で公式戦デビューを果たした。
習志野高校から18年ドラフト6位で入団した地元出身の古谷は、4月17日のオールフロンティアとの練習試合で実戦デビューを果たすと、4月29日の日本製鉄鹿島との練習試合での登板を経て、5月5日の巨人との二軍戦で公式戦の初マウンドに上がった。
古谷は1-1の5回からマウンドに上がり、若林晃弘に一発を浴びたが、ストレートは当時の自己最速となる147キロをマークするなど、1回を1失点という公式戦デビューだった。
登板直後の5月10の取材で、巨人二軍戦での投球について「プロのバッターは甘くはいったりしても、自分のストレートがいっていても捉えられてしまう。ホームランを打たれたり、飛ばされてしまうのが今の現実」と自己分析するだけでなく、「そこをしっかりコントロールだったり、球の力強さだったり、ファウルを取れるようなボールを投げられるように練習していきたいと思います」と自身が修正すべき点を口にした。
小野晋吾二軍投手コーチは当時、「球自体はよかった。プロのバッターの怖さを感じられたと思うので、どこにどういうふうな球をなげればいいのかというのを覚えていけばいいという段階です」と話し、「ピッチャーにとって探究心は大事。とにかくうまくなりたいという貪欲さがある。そこを伸ばしていけるように、こちらもいいアドバイスは準備してやっている感じですね」と評価していた。
客観視できる古谷
小野二軍投手コーチが話したように、古谷は高卒1年目当時から自身を客観的に見て、何が足りないのか、何をすべきなのかということを考えて練習、試合に臨むことができた選手。試合中も走者がいないときに自身の判断で時折クイックを入れて、打者のタイミングをズラしたりしていた。
積極的に、先輩投手に聞いて“良いもの”を学び取り入れていく姿勢もある。昨年はファームで調整していた10個以上年齢が年上の石川歩にウエイトトレーニングについて聞いたり、今年1月の先乗り自主トレ、2月の春季キャンプでは同じドラフト6位でプロ入りし、昨季はチームトップタイの8勝をあげた種市篤暉に練習から積極的に声をかけ、どんな練習をしているのかを学んだ。
2月の春季キャンプでは、マリーンズキャンプの取材に訪れていた00年代を代表するエースだった他球団のOBに、投手コーチを通じて挨拶し、「ブルペンの球数、試合前の球数、登板間隔が空いたとき、登板から登板までの球数…。課題の克服をしなければいけないですけど、結果も残していかないといけないので、結果を残すとなると、自分が投げやすいボールを投げることになる。そればっかり投げていても、苦手を克服できない。それをどういう感じでやるのか。苦手なところもやらなきゃいけないという話を聞いたりという感じですね」ということを質問し、教えてもらったという。
先輩投手たちから聞いたものを試してみて、「全部が全部あうわけではないので、得た情報のなかで合いそうなものは取り入れていけるようにしていけたら」と自分にあうか、あわないかを取捨選択することができる。
結果のみが求められるプロの世界。そこに年齢やドラフトの順位は関係ない。高卒2年目ながらといったら失礼にあたるが、意識が高く、自身で考えることができ、“プロ”としての自覚が備わっているように見える。まだ、一軍での登板がないが、将来が非常に楽しみな投手のひとりだ。
3月20日に開幕が予定されていたプロ野球は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により開幕が無期延期となった。いつプロ野球が開幕するか分からない状況で、選手たちも調整は難しいだろうが、ピンチはチャンス。自分で考えて練習のできる古谷は、きっとこの時間を有効に使っていることだろう。
文=岩下雄太