「プロ野球1年生のきみへ」最終回:宮川哲
西武の担当スカウトから、今年のルーキーたちへ宛てた“手紙”を公開している「プロ野球1年生のきみへ」──。
各スカウトにとって、選手たちとは“我が子”のような存在。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、直接対話が出来ない状況が続くなか、各担当スカウトたちが選手に対して“いま伝えたい想い”を綴ろうと筆を執った。
最終回となる今回は、竹下潤育成アマチュア担当から、ドラフト1位で指名された宮川哲(東海大山形高-上武大-東芝)へ。プロ1年目の出だしをコロナ禍で過ごすルーキーに、いま伝えたい想いとは…?
竹下潤スカウトから宮川哲へ
哲へ
元気ですか?
そして自粛していますか?(笑)
大会で先発している姿を見て、
哲がどんな練習をするタイプか、
どんな性格なのか知りたくなって
グラウンドに行ったのを覚えています。
哲は先発で完投できる能力があるし、
ボールに力があって、変化球の精度が高く、
短いイニングでも爆発的な力を発揮できる。
そう思うから、哲にはライオンズの先発陣の中に割って入って、
その一角を担うピッチャーになってほしい──。
昨年のドラフト会議の時、
哲の指名がジャイアンツと重複した時に、
「なんとか引き当ててくれ」と
俺たちスカウトが待機する控室の中で
じっとテレビを見つめていたのが懐かしいよね。
だからこそ、辻監督が引き当てた瞬間は本当にうれしかったなあ。
一見話しかけづらそうなところがあるけれど、
芯は通っているし、動じない。
人懐っこくて天然で、
そんな好かれるタイプの哲をあんまり心配してはいないけど、
この機会だ。伝えたいことがある。
いまだからできること、それをしっかり考えてほしい。
練習はもちろんだが、寮の中でも哲は年上の方だ。
高卒やそれに近いルーキーたちは、
今、不安を抱えていることも多いだろう。
高校から社会人まで厳しい環境を過ごしてきた哲は、
彼らと同じルーキーではない。
長い寮生活で時間の使いかたもわかっているはず。
ちょっとだけ“大人”の哲が、
そんな彼らの不安を取り除いてやってくれよな。
少し出遅れたけど、開幕に間に合うことができてホッとしているよ。
地元の両親の為にも育ててくれた母校や監督さんのためにも、
ライオンズの希望の光である哲には、
世の中をパッと明るくするような、
そんな豪快なピッチャーになってほしいんだ。
埼玉西武ライオンズ育成アマチュア担当・竹下潤(13年目/担当地区:関東)
☆主な担当選手:2018年齊藤大将投手
宮川哲・コメント
昨日のメニューは、
アップ・キャッチボール・内野の方の守備練習のバックアップ
ピッチング・ピッチャーゴロ捕球・ウエイト・ネットスローでした。
ピッチングはブルペンに入って51球。
ケガで出遅れていたので、
自主練習期間は僕にとってはチャンスとなる期間でした。
開幕一軍を目指して頑張りたいと思います。
竹下さんからの手紙を読んで、
期待に応えられるよう頑張らないといけないな、
と改めて気が引き締まりました。
僕はけっこうな人見知りですが、
竹下さんはとても気さくで話しやすく、
初対面のときからたくさん話ができたことを覚えています。
ドラフト会議が終わってからもずっと気にかけてくださって、
新人合同自主トレから南郷春季キャンプの時も、
フォームを見てもらったりキャッチボールの相手をしてくれました。
僕は球の感触を確かめたくてよく遠投をしますが、
「投げるならいつでも言ってこいよ!」と
いつも気にかけてくださって感謝しています。
自主練習期間中もシート打撃で登板した映像を見てくれたりしましたが、
竹下さんとは野球以外の生活面でも色々な話をします。
今年のキャンプ中、自分の中で焦りがあった時がありました。
そんなときに「自分を持ってやれよ」と言ってもらったときは
気持ちがスッと落ち着いたのを覚えています。
いつも甘えてばかりですが、
しっかりと恩返しができるよう
1日1日を大切にしていきたいと思います。