9日に初ブルペン
「毎日内容の濃い練習ができていて、とても充実しています。ピッチングとかもそうですけど、守備練習、牽制など細かい練習がとても大切になってくるので、そういうところも意識しています」。
ロッテのドラフト2位ルーキー・中森俊介(明石商高)は、プロの舞台で活躍するために黙々とトレーニングを積んでいる。
9日にはプロ入り後、初めてのブルペン入り。「体を大きく使って投げたいというのもありますし、ワインドアップをはじめたきっかけというのは、かっこいいというのがありました」。大きく振りかぶって放たれたボールは、中溝雄也ブルペン捕手のミットに吸い込まれていく。
振りかぶって10球投じた後、「右足の軸足一本で立ったときに、軸がしっかりして立てているのか確認するために、セットで投げました」と自分の判断で、11球目から3球連続でセットポジションで投げ込んだ。再び大きく振りかぶって7球、最後にセットポジションから1球を投げ、この日は捕手を立たせて合計21球を投げ込んだ。
「昨日は力んで自分の思うような球が全然いかなかったんですけど、そのなかでも回転のいい球もありましたし、回転の悪い部分もありました。課題点、反省点もあり、そこは伸びしろだと思うので、ポジティブに考えながら、これからもっと成長できるように頑張りたいと思います」と初のブルペンでの投球練習を振り返った。
客観的に自己分析
9日のブルペンでの投球練習中に自身の判断でワインドアップからセットポジションに変更したように、高校のときから自身で考えてトレーニングをしたり、投げることを意識してきた。
「試合に勝たないと意味がない。投げて終わりではなくて、自分のピッチングを振り返って、今後にどう活かしていくのか、反省していくかは高校の時から意識して取り組んできました。それはプロになっても続けていきたいと思います」。
9日に配信されたマリーンズの公式YouTubeチャンネルでは、大谷智久育成投手コーチと一緒に先輩投手のブルペンを見学している様子が映っていた。自ら大谷コーチにお願いして、先輩投手のブルペンを見学させてもらったという。
中森は「球威もそうですけど、コントロールがとてもいいなという印象でした。キャッチャーの構えたところにずっと集まっていて、ピッチャーのリリースからキャッチャーミットに収まるまでのラインができている。そういうところをしっかり見習わないといけないなと思いました」と、先輩投手のボールを実際に見て、様々なことを学んだ。
160キロは夢だが…
中森は昨年12月に行われた新入団会見で、叶えたい夢に「小さい時から160キロを投げたいと思って投手をやってきて、プロ野球選手になれました。プロの舞台で160キロを出したいと思います」と、掲げた。
学生時代は「強いまっすぐを投げるために、毎日階段ダッシュをやりましたし、腹筋、背筋、体幹を鍛えてきた。高校のときもそのおかげで、10キロ球速が伸びました。体幹をしっかり意識を持ってやっていきたいと思います」と話す。
160キロを夢に挙げた一方で中森は、「絶対に(160キロを)投げるというよりも、質、コントロールが大切だと思っています。球威もあげないといけないですが、プロと高校ではストライクゾーンも違ってくるので、まずはコントロールをしっかりと。そういうものに慣れながら対応していけたらなと思います」と語り、しっかりと足元を見つめ直した。
高校時代の投球を振り返ると、インコース、アウトコースにコントロール良くストレートを投げ込んでいた印象もあったが、「(制球力に)めちゃめちゃ自信があるかと言われたら自信はないです」と自己分析。今後は体づくりと共に“制球力”にも磨きをかけていく所存だ。
「調子の波が激しい方だと思っているので、調子の波を一定にしないとプロの世界でローテーションには入れないと思っています。常に高いレベルで調子の波を一定にできるように、調整方法、練習方法を考えながらやっていきたいと思います」。
思い描くビジョン
変化球はフォーク、チェンジアップ、カーブ、スライダーなどを投げる。自信のある球種については「日によって変わるんですけど、左バッターにはチェンジアップ、右バッターにはスライダー」だと話してくれた。
プロの世界では、「自信のある球を1つ、2つ身につけることで、相手のバッターも意識すると思います。球種をもっと増やすじゃないですけど、相手バッターが“次に何を投げてくるのか”というのを意識させるというのが、自分のピッチングだと思っています。まっすぐだけでは抑えられないと思っているので、配球を考えて投げていきたい」と、駆け引きの重要性を口にした。
また、昨夏に甲子園で行われた交流試合を見ると、ストレートが速いときと、ややスピードが落ちるときがあった。中森本人によれば、「抑えにいく球、カウントを取りにいく球を投げ分けていた」という。その一方で、「基本的に自分の球はまっすぐにいく球があまりなくて、真っスラ気味に曲がったり、不規則に動く」とのこと。「そこは自分の持ち味だと思っているので、力強いストレートと力強い真っスラを投げられるように取り組んでいきたい」と意気込んだ。
「9回を投げていくうえで、下半身の力が大切になってくると思います。しっかり下の力を体幹を通じて、指先のリリースまで力を伝えられるようにと思ってやっているので、下半身、体幹というのを意識してやっていきたいと思います」。プロの舞台で活躍するために、今はその下地を作っている最中だ。
今回、話を聞く中で印象的だったのは、高卒1年目の選手ながら自分自身をしっかりと分析し、常に何が必要なのかを考えられていること。今後、自ら考えて行動していく力が求められるプロの世界で、スタートを切ったばかりの若き右腕がどのように未来を切り拓いていくのか、その活躍が今から楽しみだ。
取材・文=岩下雄太