話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、高卒ルーキーながらオープン戦で活躍。開幕スタメンを目指す200センチの長身選手、巨人・秋広優人選手にまつわるエピソードを取り上げる。
「メガゴジラ」こと、巨人ドラフト5位の高卒ルーキー・秋広優人(二松学舎大附属高卒)の勢いが止まりません。もともと身長200センチの選手として入団時から注目されていた秋広。春季キャンプで俊足巧打をアピールして1軍メンバーに名を連ね、オープン戦が始まってもその座を維持。ただでさえ選手層の厚い巨人で、高卒ルーキーの野手がこの時期まで1軍に残っているのは異例のことです。
秋広は期待に応え、オープン戦でもしっかり結果を出しています。日本ハムとの2連戦では、6日に14年ぶりの高卒ルーキー・オープン戦安打を放ち(2007年の坂本勇人以来)、7日は2安打を記録。この2安打はいずれも、140キロ台の真っ直ぐをとらえたものでした。
9日のソフトバンク戦では、2回1死満塁の場面で先発・杉山一樹と対戦。200センチvs193センチの長身対決で注目を浴びました。秋広は杉山が投じた縦に大きく曲がるスライダーに食らいつきフルスイング! 打球はショート前へのボテボテの当たりでしたが、俊足を飛ばして一塁はセーフ。「初打点」がつくタイムリー内野安打となったのです。
これで秋広は3試合連続安打。10日のソフトバンク戦はノーヒットでしたが、日々何らかの成長を見せており、もはや2軍に落とせない選手になりつつあります。本来のポジションはサードですが、ファーストで開幕スタメンも……という声も上がっているほど。もし高卒ルーキーが開幕戦に先発出場となると、巨人では1959年の王貞治以来62年ぶりの快挙となります。
秋広の武器は、そのひたむきさです。練習風景などを見ていても、せっかくつかんだ1軍の座から弾き出されないように、という必死さを感じますし、だからでしょう。首脳陣や先輩たちも親身になってアドバイスを送っています。原辰徳監督もその1人です。
9日・10日のソフトバンク2連戦も、9日は指名打者で先発し、最後に一塁守備についてフル出場。10日はファーストで出場し、9回の守備で交代しましたが、代打は出されませんでした。すでに原監督のなかでは外せない存在で、「上で経験を積ませるべき選手」の枠に入っているのでしょう。故障でもしない限り開幕1軍は堅いとみました。
ところで、日本のプロ野球で200センチを超す選手は過去何人かいましたが、ほぼすべて外国人選手でした。唯一、日本人選手で200センチに達したのが、1955年~1959年に巨人で投手としてプレーした馬場正平……後のプロレスラー・ジャイアント馬場です。
巨人は昨年(2020年)の育成ドラフトでもう1人、身長200センチの左腕投手・阿部剣友(札幌大谷高卒)を指名しており、2人は馬場以来の「国産2メートルプレーヤー」となりました。日本人野手で2メートルに達したのは、秋広が初めてです。
不思議に思うのは、身長200センチを超す日本人のアマ選手は昔もいたはずなのに、なぜプロ野球の世界に入って来たのは馬場だけで、野手は皆無だったのか?……その理由はおそらく「ポジションが外国人とかぶる」からでしょう。長身選手が守るのはファーストかサード、もしくは外野ですが、往々にしてそのポジションは、外国人パワーヒッターの定位置だったりします。さらに昔は「長身選手は大成しない」という偏見もありました。
ただ最近は、日本人でも190センチを超す大型選手(大谷翔平・藤浪晋太郎など)が出て来ており、188センチの柳田悠岐がソフトバンクの主砲となるなど、長身選手への偏見はもはや過去のものになっています。
巨人はこのところトレードを積極的に行い、今年(2021年)も田口麗斗を放出して、ヤクルトから廣岡大志を獲得するなど、さまざまなタイプの選手を集めています。秋広獲得もその一環ですが、これだけの逸材がドラフト5位まで残っていたのは「2メートルはデカ過ぎる」「育てにくい」という意識が他球団のスカウト陣にあったのかも知れません。敢然と獲りに行った巨人スカウト陣の勝利であり、“偏見”への挑戦でもあります。
長身にちなんだグッズも出せば売れるでしょうし、OB・馬場さんとのコラボは可能性がありそうです。東京ドーム初見参となった3日のヤクルト戦では、初打席の際にもファンを沸かせました。登場曲で、アニメ「進撃の巨人」の主題歌「紅蓮の弓矢」が流れたからです。2打席目は一転、斉藤和義「歌うたいのバラッド」でしたが、これはもしかして本人の趣味でしょうか?(だとしたら渋い……)
2019年・2020年と、日本シリーズで2年連続、ソフトバンクに完膚なきまでに叩きのめされた巨人。原監督が秋広を使い続けているのは、その「巨大な伸びしろ」にも期待しているからです。原監督はキャンプ中、秋広のプレーを見てこんな発言も。
まだ18歳ですから、原監督の言うように体のほうも「成長中」なのかも知れません。高校時代には投手としてマウンドにも立っていた秋広。プロでは野手一本に専念しますが、野球選手としてのスケールも大谷に負けないよう、大きく成長して欲しいものです。
「メガゴジラ」こと、巨人ドラフト5位の高卒ルーキー・秋広優人(二松学舎大附属高卒)の勢いが止まりません。もともと身長200センチの選手として入団時から注目されていた秋広。春季キャンプで俊足巧打をアピールして1軍メンバーに名を連ね、オープン戦が始まってもその座を維持。ただでさえ選手層の厚い巨人で、高卒ルーキーの野手がこの時期まで1軍に残っているのは異例のことです。
秋広は期待に応え、オープン戦でもしっかり結果を出しています。日本ハムとの2連戦では、6日に14年ぶりの高卒ルーキー・オープン戦安打を放ち(2007年の坂本勇人以来)、7日は2安打を記録。この2安打はいずれも、140キロ台の真っ直ぐをとらえたものでした。
9日のソフトバンク戦では、2回1死満塁の場面で先発・杉山一樹と対戦。200センチvs193センチの長身対決で注目を浴びました。秋広は杉山が投じた縦に大きく曲がるスライダーに食らいつきフルスイング! 打球はショート前へのボテボテの当たりでしたが、俊足を飛ばして一塁はセーフ。「初打点」がつくタイムリー内野安打となったのです。
これで秋広は3試合連続安打。10日のソフトバンク戦はノーヒットでしたが、日々何らかの成長を見せており、もはや2軍に落とせない選手になりつつあります。本来のポジションはサードですが、ファーストで開幕スタメンも……という声も上がっているほど。もし高卒ルーキーが開幕戦に先発出場となると、巨人では1959年の王貞治以来62年ぶりの快挙となります。
秋広の武器は、そのひたむきさです。練習風景などを見ていても、せっかくつかんだ1軍の座から弾き出されないように、という必死さを感じますし、だからでしょう。首脳陣や先輩たちも親身になってアドバイスを送っています。原辰徳監督もその1人です。
7日の日本ハム戦の前に原監督からバットの出し方を教わった。この日の試合前にもアドバイスを受けると、打席に入る前にも同じ動作を繰り返して確認した。「高卒1年目で試合に出させてもらって、コーチの方や選手の方、監督もたくさんアドバイスをくれる。それがいい結果になっているのかなと思います」と感謝が原動力にもなっている。
~『日刊スポーツ』2021年3月9日配信記事 より
9日・10日のソフトバンク2連戦も、9日は指名打者で先発し、最後に一塁守備についてフル出場。10日はファーストで出場し、9回の守備で交代しましたが、代打は出されませんでした。すでに原監督のなかでは外せない存在で、「上で経験を積ませるべき選手」の枠に入っているのでしょう。故障でもしない限り開幕1軍は堅いとみました。
ところで、日本のプロ野球で200センチを超す選手は過去何人かいましたが、ほぼすべて外国人選手でした。唯一、日本人選手で200センチに達したのが、1955年~1959年に巨人で投手としてプレーした馬場正平……後のプロレスラー・ジャイアント馬場です。
巨人は昨年(2020年)の育成ドラフトでもう1人、身長200センチの左腕投手・阿部剣友(札幌大谷高卒)を指名しており、2人は馬場以来の「国産2メートルプレーヤー」となりました。日本人野手で2メートルに達したのは、秋広が初めてです。
不思議に思うのは、身長200センチを超す日本人のアマ選手は昔もいたはずなのに、なぜプロ野球の世界に入って来たのは馬場だけで、野手は皆無だったのか?……その理由はおそらく「ポジションが外国人とかぶる」からでしょう。長身選手が守るのはファーストかサード、もしくは外野ですが、往々にしてそのポジションは、外国人パワーヒッターの定位置だったりします。さらに昔は「長身選手は大成しない」という偏見もありました。
ただ最近は、日本人でも190センチを超す大型選手(大谷翔平・藤浪晋太郎など)が出て来ており、188センチの柳田悠岐がソフトバンクの主砲となるなど、長身選手への偏見はもはや過去のものになっています。
巨人はこのところトレードを積極的に行い、今年(2021年)も田口麗斗を放出して、ヤクルトから廣岡大志を獲得するなど、さまざまなタイプの選手を集めています。秋広獲得もその一環ですが、これだけの逸材がドラフト5位まで残っていたのは「2メートルはデカ過ぎる」「育てにくい」という意識が他球団のスカウト陣にあったのかも知れません。敢然と獲りに行った巨人スカウト陣の勝利であり、“偏見”への挑戦でもあります。
長身にちなんだグッズも出せば売れるでしょうし、OB・馬場さんとのコラボは可能性がありそうです。東京ドーム初見参となった3日のヤクルト戦では、初打席の際にもファンを沸かせました。登場曲で、アニメ「進撃の巨人」の主題歌「紅蓮の弓矢」が流れたからです。2打席目は一転、斉藤和義「歌うたいのバラッド」でしたが、これはもしかして本人の趣味でしょうか?(だとしたら渋い……)
2019年・2020年と、日本シリーズで2年連続、ソフトバンクに完膚なきまでに叩きのめされた巨人。原監督が秋広を使い続けているのは、その「巨大な伸びしろ」にも期待しているからです。原監督はキャンプ中、秋広のプレーを見てこんな発言も。
原監督も「内容もいい。順応もできている」と評価。エンゼルスの大谷のような雰囲気との声が挙がると「(身長193センチの)大谷君より大きいぜ。しかもまだ伸びるっていうんだよ。エックス線で見ると、まだ伸びる余地があるらしい」と無限の可能性に目を細めた。
~『中日スポーツ』2021年2月12日配信記事 より
まだ18歳ですから、原監督の言うように体のほうも「成長中」なのかも知れません。高校時代には投手としてマウンドにも立っていた秋広。プロでは野手一本に専念しますが、野球選手としてのスケールも大谷に負けないよう、大きく成長して欲しいものです。