長いイニングを投げる!
「いい試合と悪い試合というのが、はっきりしている部分があるかなと思います」。
チームトップタイの3勝を挙げるロッテの岩下大輝は、開幕してからここまでの投球をこのように自己評価する。
“いい試合”と“悪い試合”がはっきりしていると話すが、今季3勝目を挙げた4月29日の西武戦では初回に26球を投じるも、2回以降は2回が15球、3回が13球、4回が15球、5回が14球、6回が14球と6回を97球にまとめた。
球数が多いイニングもあるが、少ない球数で抑えるイニングも増えてきている。
「去年の中盤あたりから先発として長いイニングをというのは頭にあります。長いイニングを投げるということは、球数がかからないようにというのはあると思うんですけど、そのなかで自分のできることはゾーンの中で勝負することだなと思ったので、それを意識してやっている感じです」。
「去年も今年もまだ長いイニングを投げられていないんですけど、去年は守備の時間が長く、三者凡退を多く作れませんでしたが、今年は去年に比べると、三者凡退で終わるイニングも去年より増えているんじゃないかなというのはあります。三人で切れるところは、しっかり切りたいというところですね」。
今季初登板となった3月31日の楽天戦では6回途中2失点で敗戦投手になったものの、3回まで1人も走者を許さないピッチングで、5回を投げ終えた時点で50球、1安打投球だった。今季初勝利を挙げた4月7日のオリックス戦は、7回に22球を投げこのイニング途中でマウンドを降りたが、6回までは75球、4回からは3イニング連続で三者凡退に打ち取った。球数少なく、リズムよく投げる登板が圧倒的に増えている。
ストレートに自信
少ない球数、テンポよく抑えている要因には、投げているボールの質や制球力も関係しているのではないか。
岩下の最大の魅力である力強いストレートについては「スピード自体も去年よりは平均的にあがったかなというのはあります。ファウルも取れていますし、きっちりとコースにいけばあまり前に飛ばされるような感じもなくなってきたので、それをいかに継続して1年間やれるかというとこだけかなと思います」と自信を深めている。
4月7日のオリックス戦、2-1の6回一死走者なしから太田椋に対し、3球連続ストレート勝負で見逃し三振。三振に仕留めた151キロの外角ストレートは素晴らしいボールだった。
本人は「前の打席にフォークを3球連続で投げて、3球目に浮いたフォークをホームランに打たれてしまったが、その前の打席もフォークで三振に取っていた。配球的には悪くないと思います。確実にフォークが頭にあったと思うので、そこで裏をかけて、タム(田村)さんのおかげかなと思います」と、その前の2打席の対戦を踏まえた上で、ストレートを選択した同日のオリックス戦でスタメンマスクを被った捕手の田村龍弘に感謝した。
フォークは「いい落ちはできている」も反省
ストレートと同じように武器にするフォークについても「去年と継続してある程度、いい落ちはできている」と自己分析しながらも、「自分が苦しい投球のイニングを見ている限り高めに浮いてしまったり、フォーク自体をあまりコントロールできていないところがあった」と反省する。
また、今年の投球を見ていると、追い込んでからのフォークはストライクゾーンからボールゾーンに空振りを奪いにいっているように見えるが、早いカウントで投げるフォークはストライクゾーンに投げ込むことが多い印象だ。
早いカウントで投げるフォークは、「ある程度、ゾーンにというのはあるんですけど、高さだけ頑張ろうという意識でやっているくらい。簡単にストライクを入れにいこうと思っていなくて、最悪振ってもらって内野ゴロだったり、簡単に打ち上げてもらったりするというのは、ちょっと考えたりはしているくらいです」と教えてくれた。
やはり、カウント球のフォークと勝負球のフォークでは意味合いが違ってくるのだろうかーー。
「そうですね。三振を狙いにいったり、ランナーをたまったりしているときのフォークは、結構危険な球になると思うので、そこの意識はキャッチャーを信頼してワンバウンドして投げていますね」。
カーブとスライダーに手応え
今年は打順が2回り目したときに、初球や2球目に時折投げるカーブを投げ、投球にいい味を出している。「僕の中でできていなかった投球の内容のひとつだと思っています」と話す。
「去年は大きいスライダーを投げていたんですけど、ストライクが取れないし、正直あまり使えない球だった。あのカーブと速いスライダーでカウントが取れているというのは、僕の中で今年一番成長した部分だと思います」。
スライダーがよくなったきっかけについては、「去年の後半からずっと練習している球ではあったので、それをある程度オープン戦、シーズン入る前に投げ続けて、シーズン中もここまで投げられるようになっている。投げ続けてできるようになった感じですかね」とのことだ。
現状に満足せず
去年はシーズン終盤に新型コロナウイルス感染で離脱した時期はあったものの、ほぼ先発ローテーションで投げ続けた。今季もここまで3勝を挙げ、昨年までの期待の若手投手から、ある程度先発として計算できる立場になりつつある。
岩下本人は「立場的に大きく変わったと思っていなくて、去年も一緒なんですけど、自分の成績を残し続けないと、(先発ローテに)いられない立場だと思っています。石川さん、美馬さんみたいなゲーム能力は低いですし、調子が悪ければすぐに交代されるようなピッチャー。まだまだアピールを続けていかないといけない」と、危機感を持ちながら、常に進化していく姿勢を忘れることはない。
ストレート、フォーク、スライダー、カーブ、投げている球や、長いイニングを投げるための取り組み方などを見たり聞いたりしていると、シーズンを終えたときにどのような成績を残すか楽しみなところ。それだけ、今年の投球を見ていて安心感、期待感が岩下にはある。
取材・文=岩下雄太