ニュース 2021.05.14. 17:24

19歳のオリックス・宮城が見せる、老獪な「投げ分け」術

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【プロ野球日ハム対オリックス】6回、力投するオリックス・宮城大弥投手=2021年5月11日 東京ドーム 写真提供:産経新聞社
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、5月11日の勝利で開幕4連勝、パ・リーグの防御率1位に躍り出たオリックスのサウスポー、宮城大弥投手のエピソードを取り上げる。

オリックス・バファローズの19歳サウスポー、宮城大弥投手が絶好調です。5月11日の日本ハム戦では、初回にプロ初被弾となるソロホームランを浴びたものの、その後はピシャリ。8回1失点の好投で、開幕から無傷の4連勝を記録しました。

宮城投手はこの試合で規定投球回に達し、防御率1・45はリーグトップ。勝ち星もこの時点でハーラートップタイと、まさにパ・リーグを代表する投手の仲間入りを果たしています。
『開幕前には想像のつかないところにいるが、チームにもっと貢献できるように頑張りたい』

~『時事通信』2021年5月11日配信記事 より

試合後のインタビューでは、19歳の若手らしい謙虚さをにじませた宮城投手ですが、実際の投球内容はまるでベテラン投手のような老獪さ。緩急自在のピッチングで、3回から7回までは走者を1人も出さない安定感が光りました。そんな投球内容以外の点でも、球団内ではベテラン扱いされることがあると言います。
『普段から物おじせず、堂々とした振る舞いから、球団内では「プロ10何年目の選手みたい」と評され、チームメートからは「宮城さん」と呼ばれたりもする』

~『サンケイスポーツ』2021年3月28日配信記事 より

宮城投手の魅力は、この「若手らしさ」と「老獪さ」を併せ持つように、状況や場面に応じてのさまざまな「使い分け」ができるところにあります。

その1つが、「プレートの使い分け」です。ルーキーだった昨年(2020年)、高卒1年目では唯一となる白星を挙げた宮城投手。2軍でもウエスタン・リーグ最多タイの6勝(2敗)、防御率2・72と結果を残しましたが、その過程で学んだことは、プロの「意識の高さ」でした。何も考えずに投げていた高校時代のままではプロで通用しないと痛感し、投球プレートを踏む位置にも意識を置くようになったのです。
『一塁側を踏んでいたんですが、左打者の内角に投げにくさがあった。内側も必要となった時に、酒井(育成)コーチ(現メンタルコーチ)に教わりました。基本は一塁側なんですけど、左打者には三塁側を踏むようにしました。まさか投げる前の動作からプレーが始まっているとは考えたことがなかったので、勉強になりました』

~『日刊スポーツ』2021年1月2日配信記事 より

そしてもう1つは「緩急の使い分け」です。通常、投手における「緩急」はストレートと緩い変化球の使い分けを指すのが一般的です。もちろん、宮城投手もこの使い分けで相手打者を翻弄しています。

象徴的だったのは開幕2戦目の西武戦、山川穂高選手を迎えた場面です。この対決で宮城投手は、この日の最速148キロのストレートを投げたかと思えば、スローカーブは約100キロを計測。球速差48キロという落差で球界を代表するバッターを翻弄し、最後は114キロのカーブで空振り三振を奪ったのです。このとき、山川選手がひざをついて空振りした様子は、スポーツニュースや新聞でも大きく報じられるほど衝撃的なシーンでした。

ただ、宮城投手の「緩急」には、もう一段階の奥深さがあります。「ストレートと変化球」の緩急だけでなく、「カーブとカーブの緩急の使い分け」も駆使して相手打者を翻弄しているのです。

上述の山川選手から三振を奪ったカーブは114キロですが、同じ試合で最も遅かったカーブは96キロ。カーブの球種1つとっても20キロ近い球速差……これぞ人呼んで、必殺「ダブルカーブ」です。

もっとも、ボールは遅ければ遅いほど、見極められれば痛打される危険性も孕みます。そこに投げ込める「勇気」の重要性は高校時代の恩師から教わったものでした。
『2年目の進化の要因が、90キロ台と100キロ台に投げ分ける2種類のカーブだ。母校・興南学園の我喜屋監督は、「プロでは新球種も必要だし、持ち味の直球を生かすためにも思い切り腕を振っておいて、打者が待てないスローボールを投げられる勇気も必要」と話したことがある』

~『スポニチアネックス』2021年4月10日配信記事 より

驚かされるのは、これほど高度な投球術を持つ宮城投手が新人王の資格を有している、ということです。宮城投手自身、開幕前には、堂々と新人王を目指したいと宣言していました。
『先発として1軍に定着したい。けがなく定着できたら自然と(新人王を)狙える位置にいける。できれば開幕から上にずっと居たいと思っています』

~『日刊スポーツ』2021年1月2日配信記事 より

今年(2021年)入団の新人選手の活躍も目覚ましい今シーズンのプロ野球ですが、パ・リーグの新人王争いでは、2年目の宮城投手が現状は一歩リード、と言えるかも知れません。

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