初の球宴出場
ロッテの佐々木千隼が5日、監督推薦でプロ入り5年目で初めてオールスター出場をつかんだ。
開幕一軍スタートを切った今季は、開幕直後はビハインドゲームでのロングリリーフを担当。「ビハインドだったら、できる限り傷口を広げないように、そのあと逆転できるように流れが持ってこれるようなピッチングができたらいいなと思って心がけていますが、そんなに簡単ではないので、結果的にそうなればいいなと思います」。開幕直後の取材でこのように話していた佐々木は、チームに流れを呼び込むテンポの良い投球で、逆転劇を何度も呼び込んだ。2019年以来となる白星を手にした4月18日のオリックス戦も、1-2の8回から登板し、わずか8球で三者凡退に抑えると、直後の9回に味方が逆転し勝利投手となった。
4月25日のソフトバンク戦では8-3の9回から登板した土居豪人が2本の本塁打を打たれなお、8-5の一死一、二塁の場面でマウンドに上がり、真砂勇介を一飛、今宮健太を141キロの外角ストレートで見逃し三振に仕留め、プロ入り初セーブを挙げた。
5月は7試合・6回1/3を投げ防御率0.00と、ビハインドゲームで結果を残し続けた佐々木は序列を上げていき、6月に入ってからは勝ちパターンを任されるようになった。
今季初めて勝ち試合の7回から登板した6月3日の中日戦で、スクイズを決められ失点を喫したが、6日のDeNA戦からは11試合連続で無失点投球中。6月13日の巨人戦では5-4の8回から登板し、1イニングを無失点に抑え、この登板以降は“勝ちパターン”の8回を任されている。
勝ちパターンで投げるハーマン(現在は一軍復帰)、唐川侑己が一軍登録抹消されたときに、勝ち試合のリリーフに苦労しなかったのも、佐々木の活躍があるからだ。今季の佐々木の安定感、存在感は本当に素晴らしい。
理想のストレートを求めて
今年は目覚しい活躍を見せている佐々木だが、プロに入ってからストレートのスピードが出なくなった自分を許せなくなり、嫌な気持ちになった時期があった。
2019年10月の取材では「スピードばかりを、追い求めているわけではないですけど、そこを追い求めたらおかしくなっちゃうかもしれないですし、でもやっぱりというのはあります」と吐露し、「1年目はスピードが出なくなって、自分が許せないというか、嫌な気持ちになった。許せないともっともっと考えて、どんどん悪循環になっていくのがあった。今年(2019年)は140そこそこしか出ないけど、スピードばかりを求めすぎないように、自分の中で許容範囲を広げられるようになりました。割り切らないと。どんどん変なサイクルに入っちゃうのかなと思った」と明かしている。
もちろん、ストレートのスピードは今も出したいという気持ちを持っている。
今年の4月の取材で「今でも(スピードを)出したい気持ちはあるんですけど、ずっとそこばかり追い求めて、フォームをぐちゃぐちゃになってというのがあったので、どうやったらいいのかなと考えていて、ギャップというか、フォームの力感の割に球が来ているなという風に思っておもえたらバッターも打ちにくいのかなと考えました」。力感のない投球フォームからスピードガン以上に速く感じるストレートを試行錯誤の末に手に入れ、開幕直後の取材時では、ストレートのホップ成分や回転数が増えたりと数値的にもアップしたと教えてくれた。
またプロ入り後は、毎年のように故障に泣き、復帰後の自分の中での理想を目指しリハビリに励んできた。目の前に立ちはだかったいくつもの壁を乗り越えて、掴んだ夢舞台。少し時間はかかったが、様々な経験が佐々木を逞しくした。一流の選手が集まるオールスターで、今の佐々木千隼の姿を多くのプロ野球ファンに見せたいところだ。オールスターゲームでの活躍を楽しみにしている。
文=岩下雄太