「ポスト青木宣親」には見通しが立つ
2021年は20年ぶりの日本一に輝いたヤクルト。ベテラン、中堅、若手が噛み合い、見事な戦いぶりだった。
野手陣は山田哲人が2021年から7年契約を結び、村上宗隆はまだ22歳と少なくとも数年は安泰の状況。確固たるレギュラー不在のショートと「ポスト青木宣親」が課題だが、後者には明るい光が見えている。
名門・明治大からドラフト2位で入団したルーキー・丸山和郁。いずれ塩見泰隆と1、2番を組める潜在能力を持った快足外野手だ。
低い軌道で伸びていくスローイングは、入団した時点でチームトップクラス。前橋育英高では左腕投手としても最速144キロをマークしたように、地肩の強さと正確性を併せ持っている。さらに高校3年夏の甲子園で大会タイ記録となる1大会8盗塁、東京六大学でも通算15盗塁をマークした快足もある。
課題の打撃は、キャンプ中も実戦でなかなか結果を残せず、オープン戦でも低打率にあえいだ。それでも、体のキレは抜群だけにプロの水に慣れれば楽しみだ。
高校時代から大舞台を経験し、物怖じしない性格もプロ向きだろう。大学では人間性を重視する明治大野球部の主将を務め上げている。
心配があるとすれば、右肩に脱臼癖がある点。高校時代に走塁中に野手からのタッチを右肩に受け、脱臼してしまった。タイプ的にヘッドスライディングは避けられないだけに、脱臼癖とはうまく付き合っていきたいところ。
キャンプ中には練習試合の走塁中に相手野手と交錯し、脳震盪を起こすヒヤリとしたシーンもあった。幸い右肩にはダメージはなかったようだが、故障にはくれぐれも注意したいところ。まずは守備・走塁で出場機会を増やしつつ、徐々に打撃面も順応できればヤクルトの新たなスピードスターになれるはずだ。
ドラ1・山下は来年、再来年での本格化を期待
ヤクルトの新人は1位・山下輝(法政大)、3位・柴田大地(日本通運)と大学生・社会人の投手を上位指名しており、即戦力補強をしたと思われがちだ。だが、2人とも即戦力というよりはスケール型でまだ素材段階にある。とくに山下はドラフト会議後に左尺骨の疲労骨折が判明しており、無理は禁物だ。
2人ともトミー・ジョン手術の経験者であり、アマチュア時代の実戦経験も乏しい。だが、素材のよさは本物。山下は188センチ、100キロの堂々たる体躯で、マウンドに立つとさらに風格を感じる。柴田は最速156キロの剛速球が売りで、アマチュア実績はほぼ皆無ながらその類まれなポテンシャルは見る者を魅了する。ともに来年、再来年での本格化を期待したいところだ。
東京ヤクルトスワローズ
2021年ドラフト指名選手のオープン戦成績
*1軍成績(3/21終了時点)1.山下輝・投手(法政大)
出場なし
2.丸山和郁・外野手(明治大)
15試合 4安打 打率.105 0本 0打点 0盗塁
3.柴田大地・投手(日本通運)
出場なし
4.小森航大郎・内野手(宇部工業高)
出場なし
5.竹山日向・投手(享栄高)
出場なし
◇育成
1.岩田幸宏・外野手(信濃グランセローズ)
4試合 1安打 打率.200 0本 0打点 0盗塁