選手の成長に喜び「選手としての気持ち薄れてた」
今季限りで現役引退するオリックスの能見篤史投手が16日、京セラD大阪で会見を開いた。
能見は2004年ドラフト自由獲得枠で阪神に入団。2018年6月18日のDeNA戦ではプロ通算100勝を記録するなど、長らくエースとしてチームを牽引した。16年間在籍した阪神を20年限りで退団し、昨年からオリックスに移籍。この2年は「投手コーチ兼任」という肩書で後進育成にも携わった。
ユニフォーム姿で会見場に現れた能見は「今シーズンをもちまして能見篤史は引退をすることにいたしました」と挨拶をすると、「本当に悔いなくというか、18年という長い現役生活でしたけれども、本当にやり切ったなという感じです」と胸の内を明かした。
引退を決めた時期について聞かれると「正直に言いますと、去年もう1年契約をしていただくときに、その意志は一応伝えてました」と振り返り、「兼任(コーチ)という立場でしたので、自分が投げるよりも選手を見させていただいたので、その選手が試合の中で成長していく姿が非常にうれしかったので、その時点で選手として自分の気持ちがだいぶ薄れてたのが理由」と、精神状態が徐々に指導者側へとシフトしていたことを引退理由のひとつにあげた。
さらに能見は「気持ちの面は大きい。逆にここまでさせていただけたので感謝しかない。監督からはGMから話が行ってたので『ホンマに辞めるのか?』と8月の終わりに確認されましたけどね」と笑顔。選手からも引き留められたという。
兼任コーチとして過ごしたオリックスでの2年間
2シーズン過ごしたオリックスというチームについては「選手ファーストというのをいちばん感じた。選手の能力をどうやって伸ばして…というのが念頭に、そこからのスタートなので、チーム編成としていろいろあると思いますけど、その中でも選手をどう試合の中で活かしていけるかとか、そういうところが第一に来てからの…監督、コーチに相談しながら、いいところを伸ばしていこうというのがいちばんだと思います」と語った。
兼任コーチとして「苦労はなかった」というが、選手へのアドバイスは「いちばんは兼任コーチなので、監督、コーチの思いって僕しか分からないんですよ。そこの意味を汲んで、選手には遠回し(に伝える)というか、そういうふうにはするようにしてました。選手に近いのも僕なので、そこは上手くひとつの方向に行けるように心掛けてた」という。
能見が見て来た選手の中で「もったいないなと思った選手はいます」と話すと、「これはいい意味を込めてなんですけど、山﨑福也投手はまだまだ出来るんで。見ていてもったいなくて、彼の能力というところはまだまだ発揮出来てないので。上手く試合でいい成績を残してあげられなかったのは、ちょっと心残りなんですけど」と、昨季キャリアハイの8勝を挙げたサウスポーの名前を上げ、会見場の外から引退会見を見ていた後輩左腕へエールを送った。
チームは今季も最終盤まで優勝争いを繰り広げているが、「優勝出来る位置にいますし、去年のリベンジも経験出来る位置にもいますので、今のチームとしてそれを経験してない選手もいるので、そこは何とかそういう経験してもらいたい。去年の悔しさを持っている選手もたくさんいるので、そこはサポートしていきたい。日本一はまだ経験していないので」と、レギュラーシーズン残り10試合、そしてポストシーズンもチームを全力で支えていく思いだ。
なお、引退セレモニーは、本拠地最終戦となる9月30日のロッテ戦の試合後に開催予定。京セラD大阪で18年のプロキャリアに終止符を打つ。
取材・文=どら増田