ファームで経験を積む
「去年経験できなかったこと、できていなかったことを経験させてもらっている。充実しているかなと思います」。
ロッテの松川虎生はファームで自分自身と向き合い、打撃に守備にレベルアップしようと日々汗を流している。
プロ1年目の昨季は、高卒新人捕手としてはNPB史上3人目となる開幕スタメンマスクを被ると、佐々木朗希が完全試合達成した4月10日のオリックス戦では先発マスクを被り、自身もプロ野球新記録となる捕手ゲーム20守備機会、プロ野球タイ記録となる捕手ゲーム19刺殺を記録した。さらにはオールスターゲームでもファン投票で選出され、第2戦でオールスター初安打をマーク。佐々木朗、石川歩、美馬学が先発する時にはスタメン出場し、チームトップの70試合で先発マスクを被るなど、シーズン通して1度もファームに降格することなく、1年間一軍で戦い抜いた。
今季も開幕一軍を掴み、美馬、佐々木朗が先発登板の時に先発出場していたが、佐々木朗には4月6日の日本ハム戦で6回無失点の好リードも、美馬は2試合・8回1/3を投げ7失点、4月12日に一軍登録抹消となり、打撃面で課題を抱えていた松川も4月13日にプロ入り後初めて一軍登録抹消となった。
「打撃の部分ではボールに入っていきながら自分のポイントで捉えられるようにというところと、守備の面ではピッチャーの配球でどれだけストレートを通していつ変化球を投げるのかというところのタイミングを測りながらやっているのかなと思います」。しっかりと目的意識を持ってファームでの時間を過ごす。
「去年全然できなかったこと、自分と向き合いながら練習ができています。すごくいい練習かなと思いますし、しっかり次に繋げていける力というか、そういう部分は大事かなと思います」。
具体的に去年全然できなかったことについて詳しく訊くと、「試合に出るところもそうですけど、その後のバッティング、ウエイトトレーニングとかが全然できていなかったので、今はできているのかなと思います」と、 昨年は佐藤都志也との併用で試合に出場しない日もあったが、ファームでは捕手として出場しない日には指名打者で出場したりと、ほぼ休みなく出場し、試合後もウエイトトレーニングなどでパワーアップを図る。
打撃面での成長
打撃面では4月25日の西武二軍戦で、3-3の6回無死走者なしの第3打席、1ストライクの2球目からノーステップ打法に切り替え、宮川哲が2ストライクから投じた3球目133キロのフォークをレフト前に弾き返すなど、すり足で打つ時期もあれば、5月に入ってからは左足を大きく上げるフォームで打ったりしている。
「幅を広げるためにすり足でやったりしていましたし、状態が悪い時にというところでどれだけ悪くても1本打たなきゃいけない。そういうところを意識してやっています」。
2安打した6月24日の楽天二軍戦では、0-1の2回無死一塁の第1打席、塩見貴洋が2ボールから投げた129キロスライダーをレフト前に安打を放つと、4-2の3回二死走者なしの第2打席では、塩見が3ボール2ストライクからの125キロスライダーをセンター前に安打、レフト、センター方向に安打を放った。7月に入ってからも4日の巨人二軍戦から8日のDeNA戦にかけて5試合連続安打を放ち、6安打中4安打がセンターから左への打球だ。昨年までは右方向への打球が多かったが、ここ最近は引っ張った当たりも増えている。
「自分のポイントで打てているから引っ張れていると思うので、しっかりタイミングでやっていければなと思います」。
12日のヤクルト二軍戦は無安打だったが、7月は4日の巨人二軍戦で公式戦初本塁打を放つなど、ここまで月間打率.267(30-8)、3打点の成績を残す。
「結果を出さないと上に上がれないと思うので、まずは大事な二軍のところで結果を出せるように、1試合1試合大事にやっていきたいと思います」。
ファームも競争の場であることは変わりないが、数年後、一軍の正捕手になった時に、2年目のこの時期がとても大切な時間だったと振り返られるよう、またプロ野球選手“松川虎生”を確立する時間であってほしいと強く願う。今日も打撃に守備に技術を磨いていく。
取材・文=岩下雄太