2年連続で無失策の小島
ロッテから昨季、ゴールデン・グラブ賞を受賞した選手がいなかった。ただ、ロッテにも今季ゴールデン・グラブ賞獲得に期待の持てる選手がいる。
投手では小島和哉がそうだ。3年連続で投手部門のゴールデン・グラブ賞を受賞していた山本由伸が大リーグに挑戦し、昨季は同賞獲得に期待が高まったが、受賞したモイネロ(ソフトバンク)の76票にわずか1票及ばず、初受賞とはならなかった。
昨季も9月29日の西武戦、1-0の6回無死一塁で滝澤夏央のピッチャー前のバントに対し、二塁へ微妙なタイミングも思い切って早急し一塁走者の古賀を二塁でフォースアウトにした。小島は守備で意識していることについて2023年の取材で、「捕ってから投げることを意識しています。どんなに急いでいても目を切ったらエラーしちゃうので。最低1個はアウトを取ろうと思ってやっています」と話した。
また、好守備が多い理由について「基本的にはそういう球に反応できるということは、投げ終わりの体勢がいいから、捕れると思うので、バランスが良いから捕れているんじゃないかなと思います」と自己分析した。
小島は2年連続で無失策で、21年から4年連続で規定投球回に到達しているが、22年以外は無失策。昨季もそうだが、特に23年は好守備が多く、ゴールデン・グラブ賞を獲得してもおかしくないほどの守備力を見せるも受賞とはならなかった。今季こそ受賞して欲しいところだ。
好守備の裏に準備あり。小川龍成
内野手では小川龍成だろう。セカンドとショートをメインに昨季は好守備を連発。昨年5月24日のソフトバンク戦では、「ポジショニング、打球傾向であの辺が多いというのもありますし、ピッチャーとの兼ね合い、その時に守っていての感覚も大事にしているので、あれはポジショニングがよかったので捕れたと思います」と、3-1の8回一死走者なしで柳田悠岐が放ったライト前の打球を深めに守っていたセカンド・小川が捕球してアウトにした。
好守備の裏には準備がある。「試合前にコーチの方と色々話し合って、ポジショニング、打球傾向のデータをしっかり見て守っているので、そこは今すごくハマっているかなと思います」。試合前の守備練習から実戦を想定し、試合中もデータを頭に入れて守っている。入念な準備が好守備をうんでいる。
セカンド、ショート、高いレベルでこなせるのは凄い。12球団を見渡しても、そんな選手はいないだろう。「練習の中でどっちもずっとやっていたので、セカンドやり始めた時はセカンドが難しいなと思っていたり、セカンドでずっと出ていた時は今度はショートをやって難しさを感じたり。そこはすごい感じたので、セカンドで出ている時もショートで出ている時も、ある程度練習でどちらの量もこなすというのをちょっと意識してやっていますね」。
昨季はセカンドで98試合の出場ということも関係していたのか、得票数がわずかに6票しかなかった。ショートはゴールデン・グラブ賞の基準となる出場試合数に届かなかった。出場試合数が増えれば、初受賞への期待も高まる。
外野3つのポジションで高いクオリティの愛斗
外野手の愛斗にも期待したい。レフト、センター、ライト、外野の3つのポジションどれもクオリティの高いプレーを見せる。
昨年4月17日の西武戦、2-0の9回二死二塁で山村崇嘉が放ったライトフェンス際の大きな飛球をフェンスにぶつかりながらも何事もなかったようにキャッチ。簡単そうにキャッチしているが、計算して捕球しているように見えた。
「オドオドしながら捕るのとか、ギリギリ合わせて捕るというのは、ピッチャーもキャッチャーも不安だと思うんですよ。難しい打球、人が難しく捕る打球をいかに簡単に捕るように見せるか。そうすることで、愛斗のところに飛んだら大丈夫と、安心すると思うんですよ。そこの信頼関係だと思うので、難しかった打球を難しく捕るのは誰でもできる。難しい打球を簡単に捕れることは誰もできないと思うので、その準備は前もってやっています」。
試合前練習のノックや打球捕などで、その日のZOZOマリンスタジアムの風などを計算して練習しているのだろうかーー。
「しますし、バッティング練習の打球と試合の打球は違うんですよ。なので、その人が今どういう状況にあるのか、進塁状況がどうなのか、状態はどうなのか、このピッチャーの球速帯でここに打って来れるのかとか、これだけは一番やっちゃいけないとか、色々あるじゃないですか。それをいく前に全部整理しているんですよ」。
「僕とかだったら、ベンチで見ていることが多いんですけど、ぼーっと見ているようで、こうやって打っているんだとか、こういうふうに打ちたいんだ、この選手の状況はこうなんだとか、全てを加味した上でここに守ると決めて守っています」
「譲れないところというか、だから僕は誰にも守備は負けないって自分の中で思います。僕の中では、人生賭けて思って守れるというのはそこにあると思います」
派手なプレーだけがファインプレーじゃない。1つのアウトを取るために考えて、考えて、ポジショニングしたことをわからないように見せ、簡単にアウトにする。記者投票ということもあり、愛斗の目に見えない好守備、守備の良さが伝わらない可能性もありそうなので、今季、好守備を披露するたびに筆者が取材し良さを何度も伝えていくつもりだ。
愛斗と小川は打ってレギュラーに近いところまでいけるかが、ゴールデン・グラブ賞受賞へカギを握る。まずはバットで結果を残し、出場機会を増やすことも条件のひとつになっていきそうだ。
その他にも内野手では新人時代から守備練習で鍛え、守備ではリーグトップクラスのサードに成長した安田尚憲、広い守備範囲が魅力のショート・友杉篤輝、外野手でも22年に外野手最多得票でゴールデン・グラブ賞に輝いた髙部瑛斗などもいる。今季、マリーンズからゴールデン・グラブ賞が出るか注目だ。
取材・文=岩下雄太