3年ぶりのセーブも記録
最大の武器であるスライダーはその抜群のキレ味から“鎌”に例えられ、他球団のファンから“死神”と呼ばれ恐れられた男…。中日・岩瀬仁紀が輝きを取り戻した。
6月23日の巨人戦。1点リードの中日は9回、クローザーの田島慎二が二死ながら一・二塁というピンチを迎えた所で、42歳のベテラン左腕をマウンドに送った。
対するのは通算6本のサヨナラ本塁打を誇り、勝負強さに定評がある亀井義行。その亀井を相手に伝家の宝刀・スライダーで空振りを奪うと、最後はシュートで二ゴロに仕留め、1-0のしびれるゲームをものにした。
厳しい場面からの登板もなんのその。見事に任務を遂行し、チームを勝利へと導いた左腕。しかも、最後を締めたことで2014年7月31日の広島戦以来、実に1058日ぶりのセーブを記録するというオマケ付きの勝利となった。
この日を含め、6月の岩瀬は盤石の投球を披露し続けた。6月の月間成績は、14試合・11回2/3を投げて無失点。1勝0敗10ホールド・1セーブ、11奪三振で防御率0.00という完璧としか言いようがないものだ。まさに“死神”復活といったところだろう。
帰ってきた“強い中日”と岩瀬
これだけの成績を残せば、当然“月間MVP”というところも視野に入ってくる。実際、6月下旬にNPBから発表された候補選手リストにも、岩瀬の名前が挙がった。下記はその岩瀬を含めた、主な月間MVP候補の6月月間成績だ。
【主な6月度月間MVP候補/セ投手】
今永昇太 (De) 3試(23.0回) 2勝1敗 奪三17 防1.57
マイコラス(巨) 4試(28.2回) 2勝1敗 奪三34 防2.20
ブキャナン(ヤ) 5試(32.0回) 3勝0敗 奪三22 防2.25
バルデス (中) 4試(28.1回) 3勝1敗 奪三15 防2.54
岩瀬仁紀 (中) 14試(11.2回) 1勝0敗 奪三11 防0.00 ☆10ホールド・1セーブ
中崎翔太 (広) 13試(12.1回) 1勝0敗 奪三5 防0.73 ☆6ホールド
桑原謙太朗(神) 10試(9.0回) 0勝0敗 奪三10 防0.00 ☆6ホールド
岩瀬が月間MVPに輝くと、実に42歳7カ月での受賞。これはかつての同僚でもある山本昌が2008年8月に記録した「43歳0カ月」に次ぐ史上2番目の高齢受賞となる。“43歳になる年”での受賞という点では山本昌と並ぶ大記録だ。「もう一花咲かせてほしい」とは衰えが見え始めたベテラン選手に向けられる常套句だが、岩瀬はまさに今もう一花咲かせているのだ。
また、岩瀬の復活と比例するようにチームも復調。3・4月と5月はともにリーグ最低の月間勝率だった中日だが、6月は広島の.667に次ぐ.609の勝率を残した。
これには月間防御率で広島の3.49をしのぐ2.92を残した先発陣の奮起によるところも大きいが、岩瀬の復活をはじめとするリリーフ陣の奮闘なくしてこの成績はなかっただろう。
あの強い中日、そしてその象徴だった岩瀬が帰ってきた――。勝負の7月戦線、恐竜軍団の逆襲に期待が高まる。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)