コラム 2017.08.26. 11:45

オリックス伊藤光、開幕戦の大歓声を胸に貫くキャッチャー道

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松葉(右)とタッチを交わすオリックス・伊藤(左)=京セラドーム

どら増田のオリ熱魂!第14回・伊藤光


「ずっと開幕スタメンを任されていたので、今年はキャンプ、オープン戦とやっていくうちに、自分の中で感じる部分はありました。でも長いシーズンを考えると開幕スタメンだけが全てじゃないと切り替えることができた」

今季のオリックスは高卒4年目の若月健矢が正捕手の座を射止めたこともあり、伊藤光の捕手としての先発機会は31試合にとどまっている。

開幕当初は「バッティングを活かすため」(福良淳一監督)サードやファーストを守ることもあった伊藤だが、交流戦以降はキャッチャーでの起用に一本化されている。その後半戦は29試合中、13試合で先発マスクをかぶるなど、エース金子千尋の登板試合以外でも捕手として先発する機会が増えてきた。

「サードを守っていたときは、身体を張って守って、とにかく打つことしか考えてなかった。悔しさはありましたけど、試合に出たときに爆発させようって。開き直りですよね」と本人が振り返ったように、“内野手”伊藤の身体を張った全力プレーはチームのピンチを何度も救ったし、勝負強いバッティングも光った。


戻ってきた熱


一昨年から伊藤の取材を続けているが、今年の伊藤はとにかく明るい。伊藤自身も「試合に出たときは、絶対に勝つように頑張ろう!元気だして試合をしよう!と心がけている。ここ数年は結果を求め過ぎて余裕がなかったのかもしれません」と語る。

出場機会は減っているが、今年はファームへの降格が一度もない。試合中もベンチで喜怒哀楽を見せる本来の“アツい”伊藤光が戻ってきているように感じる。大人しいと思われがちなオリックスベンチだが、伊藤のガッツポーズはベンチだけではなく、スタンドの士気も高める。

そして“アツい”男は、チームメイトに対してもアツい思いを持っている。

「もしかしたらあれが最後(のチャンス)かもしれない。もっと助けてあげることができなかったのかなという気持ちはあります」

9日の西武戦(京セラD)に先発した山田修義は3回0/3を4失点で降板。6四死球が首脳陣に悪い印象を与えてしまい1試合でファームに降格してしまった。育成も経験している山田は特に結果が求められる状況だっただけに、伊藤には「もっと何かしてあげられたんじゃないか」という思いがある。それは、ここ数年の金子千尋に対しても抱いている思いだ。

伊藤は「千尋さんが打たれたらキャッチャーの自分の責任。その代わり自分は千尋さんを信じて投げさせるし、バッターのこともいろいろ勉強する。その繰り返しだと思います」と言い切るほど2人の絆は強い。金子は3年ぶりの二桁勝利まであと1勝に迫っており、何とか達成させたいと考えていることだろう。


「光は瞬間瞬間で真っ直ぐさを感じる男です。ライブを見ても感情を真っ直ぐ出してくれるし、飲んで話していても真っ直ぐ。とにかく一緒にいると熱くなれる男ですよ」

そう話すのは、伊藤の登場曲『22』『光り』を提供しているロックバンドBUZZ THE BEARSのドラマーとして活躍する桑原智さん。最初に提供した『光り』は伊藤が数ある候補の中から“タイトルを知らずに”偶然選んだ曲だった。以降、もともとオリックスファンだった桑原さんと伊藤はプライベートでも交流を深めている。伊藤はBUZZ THE BEARSのライブも訪れており、ライブに感動して涙を流すこともあったという。真っ直ぐでアツい性格はグラウンドを離れても変わらないようだ。


忘れられない歓声


ファンへのメッセージをお願いすると、伊藤は開幕戦に代打で起用された場面を振り返り、自身の言葉を噛みしめるように話した。

「開幕戦に代打で起用されたときの歓声は忘れられない。結果、ヒットになりましたし、どんな状況であっても応援してもらえるんだなって。すごく嬉しかったし感じるものがありました」

代打で伊藤の名前がアナウンスされたとき、京セラドーム大阪に地鳴りのような歓声が響き渡ったのを思い出す。伊藤はあの時の歓声を胸に刻み、励みにしてここまでやってきた。

「やっぱ僕は考え方がキャッチャーなんですよね」

取材中、ポツリと言ったこのひと言が伊藤光のすべて。いつまでも負けず嫌いな“光”でいて欲しい。


取材・文/どら増田

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