ほれぼれするような豪快フルスイング
日本ハムの“おにぎり君”こと横尾俊建が急激にその存在感を増している。
9月21日、ソフトバンク戦の3回に相手先発・武田翔太の甘い真っすぐに反応。ほれぼれするようなフルスイングから放たれた打球は、広い札幌ドームの左翼席中段にまで達した。
上背はなくともどっしりした体全体を生かした大きなフォロースルーは、打席の左右はちがうが、同年齢で一足先にブレイクを果たした吉田正尚(オリックス)を彷彿とさせる。高々と打ち上げる打球の角度、長い滞空時間はまさにホームランバッターのそれだ。
日大三高時代の2011年夏の甲子園では、北條史也(阪神)や田村龍弘(ロッテ)らを擁する光星学院高(現八戸学院光星高)との決勝戦を11-0で制するなど圧倒的な打力を見せつけ、チームメートの高山俊(阪神)らとともに注目された。
当時から「あれだけ強く振れるのは大したもの」とプロのスカウトに評されていたスイングは、進学した慶大での4年間、そしてプロ生活を通して大きく迫力を増した。
一軍再昇格後に本塁打を量産中
ルーキーイヤーの昨季、そして今季序盤はなかなか一軍で結果を出せずにファーム暮らしが続いた和製大砲。
それでも、8月16日に出場登録されると、一軍再昇格後3打席目に待望のプロ初本塁打をマーク。すると、以降出場21試合で5本塁打と絶好調だ。
代打や守備固めでの出場もあり打席数が限られているため、わずか54打数での記録ということを考慮すれば、まさに量産体制に入っていると言ってもいい状態。最近では打順も5番や6番を任されるなど、ポイントゲッターの役割を任されはじめている。
もともと三塁手の横尾だが、プロ入り時に目標に掲げたチームの先輩・中田翔の不調などもあり、三塁のほかに一塁、さらに二塁、左翼、指名打者としても出場している。
日本ハムは活発にトレードを行ったり有望な若手が続々と芽を出したりと、“新陳代謝”が激しいチームとして知られる。不動のレギュラーと言えるメンバーはそう多くなく、選手起用は流動的だ。
また、今オフは中田のFA権行使の可能性に加えて、大谷翔平のメジャー流出の可能性がある。チームの低迷もあり、新陳代謝の激しさは例年以上のものになるかもしれない。
そんな中、かつて甲子園を沸かせたスラッガーがシーズン最終盤に見せる覚醒の予兆。来季、日本ハムの顔ぶれはますます混沌としたものになりそうだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)