オフシーズンの取り組みが奏功
『健全なる精神は健全なる身体に宿る』
古代ローマの詩人、ユウェナリスの言葉だ。春季キャンプ真っ只中の倉本寿彦は、その言葉を体現していた。
不本意な2018年シーズンを送った倉本は「もう一度オフの過ごし方を見直す」ことをテーマに、トレーニングに励んだ。休みはチームがオフになってからの一週間のみ。走り込みを増やし、年末年始も休むことなく精力的に身体を動かし続けた。
すると、「体調がすごくいい」と変化を実感。今キャンプを「セーブすることなくハードに練習できている」と語る倉本の表情は明るい。「良い準備を継続できた」ことで万全のフィジカルでキャンプインできた。まさに“健全なる身体”が“健全なる精神”を宿し、好循環を生んでいる。
スケールアップのために
昨年は大和の加入によりセカンドに回ることが多く、ショートでのスタメンはわずか7試合にとどまった。オフにはショートへの再挑戦が伝えられ、一貫して守っていたポジションへのこだわりを感じたが、本人は「あくまでもレベルアップして前に進むため」の挑戦であることを強調。セカンドを経験したことにも「発見があったし、今後につながる」とポジティブに捉えている。その言葉からは、野球人としてあらゆる面で成長しようという目的意識の高さが感じ取れた。
オフに入っても、守備面における「足の運び」を見直し、打撃面では「レフト方向の意識よりは、コースに逆らわない」ことを意識し、フォームを固めた。攻守の課題を持って取り組めたことで、練習試合でもショートでは軽快な動きを見せ、バッティングも鋭い当たりを飛ばし、結果も出ている。これも体調が万全な証拠。「身体を操れている」ことが一番の要因だと自己分析している。
プロ入り2年目の2016年シーズンにショートのレギュラーを手中にし、2017年にはフルイニング出場を果たした倉本だが、昨シーズンは85試合の出場に留まり、年俸も900万円のダウンと、悔しい1年を過ごした。それ故に「もう5年目。下の世代の選手もいっぱい入ってきている。甘い考えではいられない。もう後がないという覚悟を持っている。変わらなければいけない」と強い言葉が立て続けに出てきた。
ライバルを意識するよりも「今を大切に、自分の出来ることをしっかりとこなす」ことに集中している。内なる自分を見つめ、現在の好調を維持するために、しっかりとトレーニングして準備することに重きを置いている印象だ。
現在の目標は「開幕スタメン・ショート」だ。その先には「レギュラーで3割」という目標も見据えている。応援してくれるファンのためにも「今年はやってやる。応援してくれている分をプレーで返す」と力強く宣言した倉本が、あらゆる相手に「勝つために」戦い抜く。
取材・文=萩原孝弘(はぎわら・たかひろ)